POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

暴論!「なぜ男達はかくもBOXセットをこよなく愛するのか?」

 この問題提起は、私が以前在籍していた週刊誌の連載陣であったライターのI嬢から投げかけられたものである。「なぜとは?」「女性はBOXセットが大好物ではないのか?」……。で、周辺聞き込み調査をしたところ、まわりの女性陣からも同様の回答が得られてしまった。どうやら、音楽好きの彼氏がいる女性にとってみれば、男のCD BOX好き趣味というのは鬱陶しいものらしい。飲み屋で延々「椎名林檎がいかに凄いか」を聞かされるときと、同じほど鬱陶しいというご意見もあった。けっこう値が貼るから、BOXセットの発売月にはデートを倹約させられることもあるらしい。「アタシを取るの? BOXを取るの?」ってぐらいに、概ねBOXセット集め趣味は疎ましいもののようだ。椎名林檎について熱弁されるぐらい鬱陶しい……つまり、BOXセットは男達につい哲学を語らせてしまうほどの魔力があるってことなのだ。
 渋谷系に関するエントリーでも書いたが、近年、圧倒的な知識を有する女性音楽ファンというのが増えたのは事実だと思うのだが、根本的に男女の性差で音楽の聴き方が違うのではないかと、思い当たることがよくある。「男は話をきかない。女は地図が読めない」とかいう本もベストセラーになったりしていたし。元々、脳の情報処理のフローが違うという説もある。
 例えば、“男聴き”のわかりいやすい例で言えば、裏ジャケの参加プレイヤーのクレジットを見て買うというパターンがある。私らフュージョン世代は、この典型だろう。無論これは、単なるブランド買いのスタープレイヤー信仰といった表面的な話じゃない。昔は、ヒット曲ならまだしも、マイナー系アーティストの新譜情報を得るには、雑誌を読むしか手段がなかった。しかも、店で試聴させてもらうのも、けっこう勇気がいった。だから、なけなしのお小遣いをはたいてその月の発売タイトルから1枚を買う時も、聞かずに買うわけだから、相当ギャンブル性が高かった。ハズレを買った月の後半は、それだけでブルーだった。で、それなりに知恵を巡らせて「失敗しない買い物術」を探求した結果、多くのリスナーが、“参加メン買い”というリスクヘッジ方法を編み出したのだ。『ミュージック・ライフ』にも、毎月、ギタリスト、ベーシスト、ドラマーなどのジャンル別の人気ランキングってのが載ってたのを覚えている御同輩もおられるだろう(なんで、ベーシスト・ランキングには毎回、山内テツが上位に入っていたのか謎だったが……)。今の若いリスナーにしてみれば、パート別で人気ランキングを取るという行為自体、理解を超えているかも知れぬ。でも、カリスマプレイヤーってのも確かにいたのだ。ウチの田舎に以前、本多俊之とバーニング・ウェイヴが来た時も、大半の客は、フューチャーリングで客演していた森園勝敏(元四人囃子)目的だったし。先日書いた、高橋幸宏氏の『サラヴァ!』に対するマスコミの無理解というのも、こうしたプレイヤー信仰の延長線上にあるもので、つまり「ドラマーなのに、なんでドラムテク披露じゃなくて歌ものなの?」という純粋な戸惑いから発せられたものだったと思う。いまどきは、コーネリアスみたいな一人バンドもずいぶん増えたし、ドラマーが歌もののソロを出したりすることは珍しくなくなったが、これは今日のレコーディング・システムが普及したおかげの話。YMO登場以前は、自分の頭の中にある理想のサウンドを実現するためには、名人と呼ばれるプレイヤーの手を借りねばならず、それが作品の品質にまで影響するような時代が、ずっと続いてきたのである。
 渋谷系ムーヴメントに、パンク登場と等しいほどの衝撃があったことは以前も書いた。それまで、音楽の聴き方はあくまで、「ミュージシャン→紹介者としてのジャーナリスト→リスナー」という一方通行でしかなかったし、音楽の進化の矢印は未来にのみ向いていた。ところがDJという存在が現れて、歴史やエリアをシャッフルして、驚くような組み合わせで、音楽の新たな楽しみ方を提示する秘術を編み出した。渋谷系アーティストというのは、こうした「楽器を弾かないクリエイター」の影響から、音楽の創作観を捉え直して、新たなクリエイト手法を生み出した作家群である。DJが選曲する曲というのも、これまでの名盤ガイドに載ってるような殿堂入り作品ばかりではなく、「3枚1000円」の安売りワゴンのLPの1曲からピックアップされたものもあった。また、組み合わせの妙が意外であればあるほど面白かった。パンク登場はフュージョンAORへの憎悪であり、マッドチェスターのマッチョ志向はそれ以前の文化系アノラックに対する肉体回帰であったりと、これまでのロックの進化史は、ほとんどが“親殺しの歴史”だったと言っていい。DJの存在は、親どころか皆殺しのようなもので、だからこそ親に反抗するだけのパンクより、過激な存在に映ったのかもしれない。あの時代に登場したDJは、レゲエのDJみたいに選曲すべてに「リスペクト」があったわけじゃないと思う。だからこそ、あんなに選曲が面白くなったんだろうと思うところがある。
 以前、音楽雑誌の『Techii』編集部にいた時のこと。毎月、女性ファンからの坂本龍一氏や高橋幸宏氏へのファンレターやペンパル募集、イラストなどがたくさん届いたが、例えば「私は幸宏さんの大ファンです!(略)今度、アルバムも聴いてみたいと思っています」という主旨の投稿が、意外なほど多かったことを記憶している。「アルバム聞いてないのに、大ファンて……」と、当時の私はそれを一蹴していたと思う。だが、対象への愛というのは、その馴れ初めが一番ドキドキすることを今の私は知っている。興味を持ったアーティストのすべてを知ってからじゃなきゃ、語っちゃいけないという原理主義は、やはり男特有のものかも知れない。「私、これ好きかも?」という聴き始めの思いも、やがて対象を知っていくごとに、「やっぱ、そんなに好きじゃないかも?」という思いに至ってしまう。そんなに掘っても掘っても魅惑が尽きない天才なんてそうそういないから。対象を知りすぎた時には、初期に感じた衝動のインパクトなんて忘れてしまってる。そんな、勉強に邁進して快楽をないがしろにしてきた過去があるから、今の私は、若葉マークのリスナーの声にできるだけ耳を傾けるようにしている。今の私はもっと直感を信じる。だから、逆に若葉マークのリスナーが、若いのにストーンズデリダラカンバウハウスだと、自分の発言をブランドで彩る時のウソも、直感で見破る。例えば近田春夫氏の『考えるヒット』のアプローチも、『気分は歌謡曲』時代の分析手法をくぐり抜けた後の、「脱分析」の地平で語っているからこそ価値があるんだと思う(あくまで考え方はってことで)。
 高校時代から友達にマイテープを作ってあげたりしていた自分のような人間にとって、選曲が職業として市民権を得るというのは痛快ではある(だから編集者になったんだと思うが)。しかし、エリアや時代の攪乱は、必ず歴史軽視を生む。パンクや渋谷系の生起をとことん考えていくには、やはりDJ的センスだけでは本質には迫れない、歴史観や親殺しの痛みのようなものに、気付かねばならないところがある。無論、90年代初頭は、過去の名作のヒエラルキーにつばを吐き、万物をカタログ化することがなによりパンクで痛快だったが、でも2006年にそれと同じことをやってちゃダメでしょ、やっぱり。それ、15年前の批評スタイルなんだからさ。自己愛の産物なのだろうけど、あまりに美化された「ネオアコカタログ」ばかりがあっても、居心地が悪く感じてしまうのは、そうした思いがあるからだ。
 で、男達がBOXセットにひた走る動機は、やはりそんな歴史軽視の時代にあって、体系立てて対象を理解したいという思いの現れなんだろう。20年ぐらい前までは、レコード店と言えばあくまでアイドル好きの10代の客が主役だった。ところが、90年代初頭にヴァージンメガストアが登場して、週末にネクタイ族がCDを10枚ぐらい積み上げてレジで精算する光景をよく見るようになった。こうした現象は、後に「大人買い」と呼ばれるようになったが、あれは昔買えなかった、レンタルで我慢していた青年期の自分への敵討ちのようなものなんだろう。そして、そんな中年購買者向けに価格設定されたのが、BOXセットだったのだ。イエスキング・クリムゾンビーチ・ボーイズといったパンフ付き豪華化粧箱入りのBOXセットの名作が、次々と登場した時は息を呑んだ。どれもこれも、安っぽいベスト盤とは桁違いの、グラミー賞狙いぐらい気張った考古学的価値をもったものばかり。値段が数万円というのは、それまで通販の全集にしか存在しない「商品としてありえない値段」とずっと言われてきたものだ。先ほどのDJとは別の新職業として、ライノレコードなどの仕事に触発された、分析、解析主体の選曲家や音楽歴史家という存在がやがて登場してくることになった。実際、私の友人たちのチーム「土龍団」のような、復刻ものの信頼のブランドもある。「ロックの考古学」と呼べるものであるから、未発表曲がどれだけフィーチャーされるかにも醍醐味があった。それを2〜3枚組程度のベスト盤に入れられると、ちょっとあざとい感じがある。だが、分厚い研究書にその発掘の詳細が書かれたBOX仕様によって、オーディエンス録音やチープなデモテープでも、原石の輝きを持たせることができた。
 そんな送り手側の変化だけでなく、リスナー側の歴史観の変遷というのもある。年を取っていくと、自分が青春を送った時代そのものを愛するようになるんだな。好きだったバンドだけじゃなくて、ライバルのバンドも含めて。それまでノーマークだったライバルバンドを知るきっかけとして、ベスト盤1枚じゃ申し訳ないから、本格的BOXセットをどーんと買って古くからのファンの気持ちで接してみる。すると、たいてい「いいじゃない」という発見があったりするのだ。
 だが、日本盤のBOXセットについては、少々ややこしい状況がある。海外のBOXは売り切りだから、大量に作って安く売るということができる。だが、日本では「再販価格維持商品」であるために、豪華化粧箱入りなどの商品は、返品時の破損が酷くなるため、回収後のリセールが難しく、できるだけ予約注文分のみで少なめに作るケースが多い。だから、BOXもけっこう値が張るものが多い。よほど量産できるものなら別だが、普通の人気のアーティストのBOXセットの場合、リスクヘッジのために予約注文のみで完売してしまうことがよくある。後から「いけね、今日発売日だった」と思ってレコード店に行っても、もうディスプレイは片づいており、あわててamazonにアクセスしてもすでに完売で、隣のマーケットプレイスにはデカデカと倍以上の値段での中古出品者が列をなしていたりする。あれもまた、その値段で買えればいいやって買っちゃう人が多いから廃れないんだと。かく言う私も実はその一人だったりして……(笑)。以前、ピンク・レディーのBOXセットが出た時に、発売日に店に行ったら「予約注文分で完売しちゃったので、展示分は1枚もないんです」と言われたという体験をして以降、ちょっと気になるものがあるとamazonで予約を入れて買うようになった。そのおかげで、聞かずに封そのままで置いてあるBOXがどれだけあることか(笑)。
 ともあれ、限定品だからいいところもある(ピチカート・ファイヴ小西康陽氏は、iTMSの「廃盤という概念がなくなる」という歓迎すべきコンセプトに対し、「人は廃盤がないとレコードを買わない」という超越論を残している)。中古レコード店でも、BOXセットのコーナーは宝探しの山って感じだし、次に行っても必ず買われちゃってるっていうほど、一期一会のものである。最近では落ち着いたが、一時は景気に任せて相当クレイジーな迷作級のBOXセットもたくさん出ていた。そこで今回、入手可能ものや、名作と言われるものを除いて、ウチにあるオモロなBOXセットをざっと紹介してみることにした。そこにしか入っていない曲の情報などは、それなりに役に立つものだろう。
 私はと言うと、CDのBOXへの偏愛は今は少々落ち着いた感じなのだが、現在進行形で増え続けているのは、DVD BOXのほうである。テープレコーダーに台詞を録音して何度も聞いた、昔大好きだった名作ドラマが、全話まとめて買えちゃったり所有できたりする感動。ちょっとした地方局(例えばサンテレビとかびわこテレビとか)を手に入れるぐらいの喜びだ。仕事で辛い思いをした時に、BOXを観て少年期に却ってリフレッシュできるのが、なによりの薬になったりする。「2〜3万円で買える家宝」と思えば、決して高い買い物じゃない。
 だから、男のこのビミョ〜なオトメ心、わかってちゃぶ台。



XTCトランジスター・ブラスト〜ザ・ベスト・オブ・ザ・BBCセッションズ』(ポニーキャニオン・インターナショナル)(98)

4枚組のうち、1、2はスタジオ・ライヴ集で、以前BBCレーベルから1枚もので出ていたのとは選曲違い。3、4がラジオ中継された、ロンドン・パリス・シアター(78、79年)と、ハマー・スミス・オデオン(80年)をそれぞれ収録。XTCは『イングリッシュ・セツルメント』直後のアメリカツアーで、アンディのステージフライト(ステージ恐怖症)からツアーを辞めてしまうが、本作には『スカイラーキング』『オレンジズ&レモンズ』時代のスタジオ・ライヴも入っている。スタジオ内という安全圏にいるからか、アンディの弾けっぷりは往時と変わらない。

XTC『Coat Of Many Cupboards』(Virgin)(02)

こちらはヴァージン音源を中心に、レアトラックスを中心に集めたBOX。CBS用として録音された「サイエンス・フリクション」のデモなどは衝撃的な音源。『ザ・ビッグ・エキスプレス』以降、リン・ドラムを導入してのアンディ・パートリッジのデモ作成は異常に完成度が高く、(録音は別として)ほとんどヴァージョンは完成版と甲乙付け難し。クレジットに載っていない隠れトラック曲もある。しかし、ポニーキャニオン移籍後に出た『ファジー・ヴォーブル』シリーズも含め、これだけデモやライヴが発掘されているのに、昔ビクターから出たピックアップ・シリーズに入っていた「セット・マイセルフ・オン・ファイアー」のライヴはなぜCD化されないのか?(有頂天「フーチュラ」はこれの影響大)。そういえば、XTCの初期のデモはブートレッグで10枚ぐらい音質のいいのがでているが、あれは喧嘩して分かれた初期のマネジャーが流したものらしい。

ビーチ・ボーイズ『カリフォルニアより愛を込めて』(東芝EMI

80年代末にLP BOXで出た7枚組のCD化。1〜6が「ココモ」までの全アルバム、シングルからの編集で、後の『ビーチ・ボーイズ・ボックス』のような未発表曲への配慮はゼロ(そういう時代の産物である)。7のみ、ブライアン・ウィルソン・プロダクションという珍しいプロデュース作品集で、入手困難なシングルも多かったから役に立った。特筆すべきは、『ペット・サウンズ』からの全曲が、国内オリジナル・リリース時のデュオフォニック・ステレオで収録されていること。ブライアンは幼児期の体罰で片耳が聞こえず、ステレオ時代になってもビーチ・ボーイズ作品はモノーラルで制作されていたため、オーディオを売りたいメーカーが、それを位相処理して疑似ステレオ化したものがLPとして売られていたのだ。この疑似ステレオが初体験だった世代にとっては、後のトゥルー・ステレオ版『ペット・サウンズ』は別物という印象がある。この疑似ステレオ・ミックスは、本作以降のベストやBOXには収録されていない。

『ZTT BOX』(ZTT)(02)

イギリスでプレス向けに限定発売されたもの。8枚組の新リマスターによるデジパック仕様。内容はボートラなしのアート・オブ・ノイズプロパガンダフランキー・ゴーズ・トゥ・ハリウッドのオリジナル復刻に、当時一般リリースされたフランキーのベスト、12inch集の編集盤2枚を加えたもの。プロパガンダ『Wishful Thinking』のリマスター盤のみ、単独発売されていないので本セットでしか聴けない。

ジェームズ・チャンス『Iresistible Impluse』(Tiger Style Records)(02)

現行BOXとは内容違いの、最初のCD化。チャンス〜ホワイト時代の全アルバムと、未発表ライヴで構成。

『Archives GRM』(INA-GRM)(04)

フランスの名門実験音楽スタジオ「INA」の30周年記念BOX。その前身に当たる、40年代末にフランス国営放送内にあったRTF実験音楽スタジオからのミュージック・コンクレート〜電子音楽の歴史を、5枚組のCDにまとめたもの。ジャズ畑のアンドレ・オデールがRTFで録音した「ジャズはジャズ」で幕をあける非アカデミズムへの受容性がフランス実験音楽の魅力で、ロバート・ワイアットまで収録している。ブーレーズの珍しいミュージック・コンクレート時代の習作「エチュード」、クセナキス「コンクレP・H」、ヴァレーズ「砂漠」ほか、メシアンシェフェール、リュク・フェラーリ、ベルナルド・パルベジアニなど、仏系作家を網羅。パッケージは地味だが、内容は楽しい。

オノ・ヨーコ『ONO BOX』(RYKO)

ザッパの復刻でおなじみライコの傑作BOX。『トゥー・ヴァージンズ』から『ダブル・ファンタジー』『ミルク・アンド・ハニー』などのジョン・レノンとの連名作品から、オノ・ヨーコの曲のみを抜粋してBOXを作るアイデアなど、誰が想像し得ようか。小泉今日子もカヴァーした「女性上位万歳」などのシングル曲のほか、『スター・ピース』までほぼ全曲を6枚組に収録。1はロンドン時代だが、クラプトンやリンゴ、クラウス・ヴァーマンが参加したジャムはまるでノー・ウェーヴ。おなじみの喘ぎ声や「レボリューションNo.9」みたいなミュージック・コンクレートも入っている。私は『レノン・ボックス』よりこっちのほうをよく聴く。

『Brain In A Box The Science Fiction Collection』(Rhino)(00)

玩具みたいな装丁から「キッズライノ?」と思われるだろうがさにあらず。CD5枚組で、SF映画音楽やSFにインスパイアされた名曲(ノベルティ含む)をテーマごとに集めたもの。1は映画音楽編で、『2001年宇宙の旅』『タイム・マシーン』(曲はラス・ガルシアなのだ)、『猿の惑星』や、初CD化のギル・メル『アンドロメダ…』などの電子音楽ゆかりの曲を網羅。2は『ミステリー・ゾーン』『アウター・リミッツ』『世にも不思議な物語』からイギリスの『ドクターWHO』『サンダーバード』まで集めたテレビ主題曲集。3は、ジミー・ハスケル『Brast Off!』(初CD化)やトルネードス「テルスター」、ロザー&ザ・ハンド・ピープル、ゼイ・マイト・ビー・ジャイアンツなどのSFマインドを持つロック・ポップス編。4はラウンジ編で、ディック・ハイマン、サンラー、レイモンド・スコット、ペリー&キングスレイ、フランク・コー、サミュアル・ホフマンなど、初CD化音源を大結集。5はノベルティ編で、ブキャナン&グッドマンやルイス・プリマからB-52'sなどの語り物を集めている。

ブライアン・イーノ『Vocal』『Instrumental』(Virgin)

イーノのボーカル曲、インストゥルメンタル曲をそれぞれ分けて、各3枚組でBOX化したもの。過渡期の『アナザー・グリーン・ワールド』などは、2つの傾向を真っ二つに分けて収録するという徹底したコンセプト主義で編集されている。シングル曲やプレス向けヴァージョンなどの珍しいヴァージョンも。加えて、デヴィッド・バーンとの『ブッシュ・オブ・ゴースツ』、ローデリウスメビウスクラスターといった連名作品からも抜粋されているのが嬉しい。

ネイキッド・シティ『Naked City』(TZADIK)

これは近作だが、ツァディックからのリリース点数が多すぎて逆に出てたのを知らない人もいたので念のため。ノンサッチ〜アヴァント〜トイズ・ファクトリーとレーベルを超えて集めた全曲集。「NYフラット・トップス・ボックス」のような重複曲は、流れがあるからそのままいじらず。5枚組のうち、『グランギニュール』のみボーナス音源として、マイク・パットンの歌唱ヴァージョンが初公開された。そういえば告知されているライヴのVol.2はいつ出るんだろう。それと、『ステップ・アクロス・ザ・ボーダー』もDVD化されたから、次はWOWOWで流れたNYライヴを商品化して欲しい。あれは凄い。

『3×20(Colours)』(新星堂

これはみんなが持っていた、クレプスキュールの日本発売元だった新星堂から出たギターポップネオアコ系コンピレーションBOX。高価だった珍しいシングル曲も入ってCD3枚で5000円は破格だった。制作は英国のキャロライン・インターナショナル。バースデイ・パーティのミュート時代のシングル、ペイル・ファウンテンズ「ジャスト・ア・ガール」、ムード・シックス「アイ・ソー・ザ・ライト」(トッド・ラングレンのカヴァー)、ザ・ヒット・パレード「フォー・エヴァー」などのレアトラックのほか、シャック、ルイ・フィリップモーマス、EBTG、スミスなどを網羅。ロバート・ワイアット「メモリーズ・オブ・ユー」で終幕する構成に泣ける。

『The Early Gurus Of Electronic Music 1948〜1980 SPECIAL EDITION』(ellipsis arts……)

電子音楽 in the (lost)world』でも紹介している同コンピレーションBOXのDVD付きの再発盤。DVDもCD同様、アカデミズム〜ポピュラーを横断したセレクションで、クララ・ロックモア、ケージ、ライヒモートン・スボトニック、ホルガー・シューカイ、ベベ・バロン、レオン・テルミンクセナキス、ミルトン・バビット、ジョン・チョウニング、マックス・マシューズ、マザー・マラード、映画『モーグ』抜粋と、貴重な演奏、イメージ映像、インタビューが収録されている。現在はDVDのみ単独商品化。

テレックス『Belgium ...One Point』(Team for Action)(93)

78〜86年までのオリジナル・アルバムとそのシングル・ヴァージョン、B面曲を集めたBOX。国ごとに別編集で出た『Sex』『Birds And Bees』は重複曲を外して1枚に、『Neurovision』はミックスも違う英語版、仏語版ともに収録(仏語版にはリオのナレーション入り)。ちなみに、表題は悪名高きユーロヴィジョンコンテストに彼らが出演して最低点を取ったときの「ベルギー選手、1点」というウグイス嬢の台詞から取られたもので、わざわざその声を1曲として本編に収録している。『Windeful World』からのシングルば別ミックスが多いのだが、『Loony Tunes』との1枚化のためにこれらは割愛されている。ちなみに、リリース時期からお察しの方もおられるかも知れないが、私がプロデュースした『イズ・リリース・ユーモア?』からも収録したいとオファーがあったのだが、こちらのリリースが先になることがわかっていたため、レコード会社判断で収録されなかった。

ジェリーフィッシュジェリーフィッシュ・ファンクラブ』(Not Lame)(02)

ジェリーフィッシュのヴァージンから出た正規リリース音源以外の、アルバム全曲分のデモ、ライヴを収めた画期的4枚組BOX。1は『ベリーバトゥン』デモ、2は同ライヴ、3は『こぼれたミルクでなかないで』デモ、4が同ライヴで構成。『こぼれた』のデモは、日本独自企画でリリースされたマキシなどでも紹介されていたもの。マイ・ブラッディ・バレンタインのパロディー曲で、キーが違う「All Is Forgiven」は、何度聞いてもデモのほうに軍配が上がる。ウィスパーカード風の発売時のラジオ向けナレーションまで入っていて、彼らがいかにアイドルとしても人気があったかを再認識。4にはピンク・レディー「SOS」カヴァーが2ヴァージョン入っているが、解説文にも書かれているこの後者の演奏が披露された日本のバラエティ番組というのは、ダウンタウン『ごっつうえぇ感じ』のこと。

バート・バカラック『The Look Of Love The Burt Bacharach Collection』(Rhino)(98)

なぜか日本盤が出なかった、レーベルを超えて集めたオリジナル歌手音源による3枚組のバカラック・ソングブック。パトリック・ミリガン選曲。

バート・バカラック『Something Big』(A&M

ソロ名義で出たA&M音源をコンプリートに集めたもの。今年すべてが単独でCD化されたが、『イン・コンサート』や後期のアルバムはこれが初CD化だった。実は隠れファンも多いキャップ時代の唯一のアルバム(ジミー・ペイジジョン・ポール・ジョーンズが参加していて、ちょっとガレージ風演奏)もまるまる収録。

ゾンビーズ『Zombie Heaven』(Big Beat)

日本では人気があるため、様々な編集版がこれまでも出ていたが、これが真打ち。『ビギン・ヒア』とシングルを集めた1、『オデッセイ&オラクルズ』と後期の未発表アルバム音源の2、デモ&リハーサルの3、BBCライヴから抜粋した4で構成。BBCライヴは、以前アナログで出たものがCD化されたが、なぜか盤起こしだったので、オリジナル・マスターからのディスク化には喜んだ。

シド・バレット『Crazy Diamond』(EMI)(93)

合掌。表題は脱退後のピンク・フロイドが歌ったヒット曲で、ダイアモンドとはシドのこと。オリジナル・アルバム2枚に、発掘音源集『オペル』を併せた3枚組。オフィシャル盤なのに、聞いていてブートレグのような後ろめたさに襲われる魔のBOX。

ピーター・セラーズ『A Celebration Of Sellers』(EMI)(93)

映画『ピーター・セラーズの愛し方』や『ピンク・パンサー』シリーズのDVD復刻で近年再評価されるセラーズの、レコード・アーティスト時代の音源をまとめた4枚組。ビートルズ以前のジョージ・マーティン制作のギミック・レコードの世界が堪能できる。ヒットしたソフィア・ローレンとの『Peter And Sohia』、シングルで出たビートルズのカヴァーといったアルバム未収録曲はもちろんのこと、ホリーズとのデュオ「アフター・ザ・フォックス」(『紳士泥棒ゴールデン作戦』)など、他社音源も網羅。

トーキング・ヘッズ『Once In A Lifetime』(EMI)

最近、ジェリー・ハリスンが5.1chサラウンドミックスを手掛けた全フル・アルバムBOXが出たばかりだが、そのわずか1年前にこっそり出ていた3枚組のBOX。シングル、アウトテイクなども、現在は全曲が最新BOXに含まれるためインパクト薄なのだが、ボーナスディスクとして、過去にLDで出ていたPV集『ストーリーテリングジャイアント』がDVDで付いていたのがお得だった。

ニュー・オーダー『Retro』(London)(02)

ワーナーから日本盤も出ていた、4枚組のベストの英国初回盤。予約者のみ、もう1枚ディスクが付いており、「テンプテーション98」や「パーフェクト・キッス」のジョナサン・デミ監督のPVヴァージョンなどが収録されている。

『Hanna-Barbera's Pic-A Nic Basket Of Cartoon Classics』(Rhino

単独リリースされていた、『原始家族』でおなじみハンナ=バーベラのキッズライノからのサントラ関連盤をワンセットにBOX化。『Hanna-Barbera Classics Volume 2』のみ本BOX用に制作されたもので、単独商品化されていない。SE集は、コント御用達の1枚だが、別編集の4万円ぐらいの高価なプロユース版もある。

サンダーバード秘密基地セット』(バンダイビジュアル

オリジナル吹き替えではなく、このために再録された3話分のステレオ・ラジオドラマと、それに使われた新録のBGM集に、今井科学のプラモデルのCM映像を収録したCDVを加えたBOX。BGMは、バリー・グレイのオリジナル・サントラが発掘される前の商品化だったので、スコア版とはいえ貴重だった。湯浅徹氏のスコア採録による新録の主題歌は、テレビ東京オンエア分で使用されたもので、オリジナル・カラオケも収録。のちにBGM集のみが、単独リリースされた。

冨田勲ジャングル大帝』(バンダイ・ミュージック)(99)

バンダイがレコード・ビジネスに参入した時期に、「エモーション・コレクターズThe Original Masterシリーズ第一弾」として出された4枚組の劇伴集。虫プロの倉庫から全52話分、100本の6ミリテープが発見され、それを編集した初商品化。だが、作曲家に無許可での販売であったためクレームが付き、初回分のみで店頭回収されたらしい。業界紙などにも告知された第二弾『リボンの騎士』BOXも中止された。ただしこの本作、モノーラルのオリジナルテープを、わざわざ位相処理した疑似ステレオで収録しており、これが品質的に粗悪なもので、ずっと聴いていると酔いが回ってくる。同社はほか、手塚プロ倉庫から発見されたテープ素材から『24時間テレビ手塚アニメ』のオムニバスも出しているのだが、こちらもトミー・スナイダー『ザ・マリン・エクスプレス』などの曲を日本コロムビアからマスターテープを取り寄せず、保存用の孫コピーを商品化したために、悪評噴飯ものであった。

『TVタイムマシーン』(東芝EMI)(00)

泉麻人みうらじゅん解説による通販限定商品。山下毅雄『クイズ・タイムショック』『時間ですよ』や『ゲバゲバ90分』『ムー』『カリキュラマシーン』『徹子の部屋』(なんと作曲はいずみたく)、『デンセンマンの電線音頭』『笑点』など、懐かしTV系BOXと言えばアニメ特撮ものが多かった中で、一般作を中心に編んだものはありがたかった。未レコード化作品は、モノーラルのオリジナル音源を収録。だが、単独リリースものも増えたため、ここでしか聴けないものはない。『ちょっとマイウエイ』『熱中時代刑事編』『西遊記』など、なぜか日本テレビ系作品が多め。ハンナ・バーベラ・アニメの日本語版主題歌が入ってたりするのは、選曲者のN氏が過去に手掛けた同オムニバスからの再録である。ほか、「やつらの足音のバラード」(『はじめ人間ギャートルズ』)『走れ!ケー100』(にしきのあきら)、『水もれ甲介』(石立鉄男)など、復刻される機会が少ないCBSソニー音源が多めなのがありがたい。

『J-Rock 80's』(東芝EMI)(97)

通販限定商品で、選曲・監修は『音楽と人』編集長時代の市川哲史氏。ブックレットには、大槻ケンヂ氏、『宝島』編集長だった関川誠氏との鼎談を収録。YMOから幕を開ける80年代のロック史をまとめた8枚組だが、メジャー音源からの編集でありながら、リアル・フィッシュ、デル・ジベット、ピンナップス、ノーコメンツ、グンジョーガクレヨン、INU突然段ボールなどのマイナーバンドを大結集。アルファ〜YENレーベルをまとめた1でも、「War Heads」「スポーツ・マン」「前兆」とYMO3人のソロを並べる配慮ぶり。ルースターズなら「CMC」、P-modelは「Perspective」という、らしい選曲が頼もしい。未CD化音源として、一風堂見岳章ソロ・シングル「君は完璧さ」、モモヨ「モスラの歌」、Shi-Shonen「今天好」などを収録。今は入手困難な坂本龍一「フォトムジーク」が選ばれているのもありがたいだろう。

矢野顕子『やのミュージック』(やのミュージック)(88)

今月、3枚組(+DVDのPV集)のベストが出る矢野顕子だが、彼女の曲は事務所のやのミュージックが全原盤を所有。本作は日本フォノグラム時代の5タイトルの紙ジャケBOXで、当時のディレクターだった三浦光紀氏が徳間ジャパンから復刻する前に、矢野顕子ファンクラブのみでCD販売された。アートディレクションは、通販商品だった『ブローチ』と同じく立花ハジメ。シングルのみだったアグネス・チャンのカヴァー「妖精の詩」、「Hello There」などを収録したボーナス・ディスクには、ミディ時代の「在広東少年」「あしたこそあなた」も収録されている。

『50thアニヴァーサリー・ゴジラサウンドトラック・パーフェクト・コレクション BOX3』(東宝ミュージック)(05)

通販オンリーの『ゴジラ』コンプリートBOXの第3弾。以前、ユーメックスから出ていた1作=1枚と同じ構成だが、ボーナス曲やシングル曲も加えた最終ヴァージョンになっている。この時期になると、ゴジラが善玉になってドラマも子供向けになるが、音楽は伊福部昭のオリジナルから離れてアップ・トゥ・デイトな傾向が表れており、『ゴジラ対メカゴジラ』のビッグ・バンド×沖縄音階という佐藤勝のアイデアは、未だに私を魅了する。また、私の敬愛する傍流音楽家真鍋理一郎ゴジラ対ヘドラ』『ゴジラ対メガロ』などのサイケデリックサウンド時代も本ボックスに集中。BOXは各巻に、東宝レコード時代の『ゴジラ』1〜3の完全復刻盤がそれぞれに1枚づつボーナスディスクが付いているが、こちらはレコード化に際し微妙なエコー処理が施されており、オリジナルLP世代の私らにはこのCD化はありがたかった(キングからCD化された東宝レコード復刻は『1』のみ)。

渡辺香津美『Better Days Years』(コロムビアミュージックエンタテインメント

ベターデイズ時代の8枚のリマスター盤に、初CD化の『ヴィレッジ・イン・バブルス』が加わった9枚組BOXで8400円の流血価格。とにかく香津美氏の作曲能力を高く評価している私には、何年かに一度お世話になっている原点のようなもの。アルファ時代のもなにげに全部CD化されていて、一応持っていたりする。

サディスティック・ミカ・バンドサディスティック・ミカ・バンドCD BOX』(東芝EMI

初CD化BOX。4枚のオリジナルに、ファーストに初回限定で付属していた「レコーディング・データ」と、解散後のベスト『ベスト・メニュー!』に入っていた「ハイ・ベイビー」「お花見ブギ」「マダマダ・サンバ」の共立講堂ライヴを集めたシングルCDが付属。

ゴダイゴ『15th Anniversary Godiego Box』(日本コロムビア

未だにCD復刻にレコード会社が消極的なゴダイゴの音源をまとめて聴ける名作BOX。監修は私の『宝島』時代の先輩だった元『ロック・ステディ』編集長だった市川清師氏と、中村俊夫氏の2人。ブックレットのタケ、ミッキー対談や、シングル、参加盤を含むオールカラーのジャケット・ギャラリーが貴重。全10枚組のうち、1〜4が全作品のヒストリー。5が日本語ヴァージョン集(やっぱ、これを一番よく聴く)。『CMソング・グラフィティ』のVol.1、2から抜粋したCM編、『マジック・カプセル』〜『インターミッション』から集めたライヴ編、『いろはのい』『ハウス』『男たちの旅路』『遙かなる走路』などのミッキー吉野グループも含む映像音楽編、メンバーソロ編、「テイキング・オフ」(『銀河鉄道999』)やトミー・スナイダー歌唱「水滸伝のテーマ」「ザ・マリン・エクスプレス」などのB面曲を集めたレアトラック編で構成。ちなみに、リリース当時「あれ? あの曲が抜けてる」と思っていたタケカワユキヒデキャプテン・フューチャー」と『カレイド・スコープ』は、現在無事CD化されている。

大瀧詠一『ナイアガラCD BOOK I』『ナイアガラBLACK BOOK』(CBSソニー

前者は8枚組、後者は4枚組のナイアガラレーベルの完全復刻企画。同デザインのLP BOXの復刻かと思いきや、編集やミックスが所々変えてある。後者の内容を説明しておくと、シリア・ポール『夢であえたら』、大瀧詠一『Debut』、『レッツ・オンド・アゲインSpecial』、多羅尾伴内楽団の編集盤。ご存じの方も多いと思うが、前者収録のシュガー・ベイブは、『ア・ロング・ヴァケーション』の名匠・吉田保のリミックス版(単独リリースもされた)で、これは山下達郎氏の判断で現在は封印されているため復刻の可能性は薄い。ほか、有名なウォークマン・コンサートからの「指切り」(初期ナンバーを『ア・ロング・ヴァケーション』のゴージャスな編曲で再演)は貴重なり。大瀧詠一さくらももこと共同出資したレコード会社「ダブル・オー」から本BOXが復刻される話もあったが流れてしまった。しかし、復刻されてもまた編集を変えるだろうから、生涯手放せないだろう。

『J-ロックの細道 日本ロックの軌跡〜70年代名盤セレクション』(ポニーキャニオン)(02)

湯浅学監修の10枚組、通販限定商品。はっぴいえんど四人囃子頭脳警察〜ジャックスから、スペクトラムあたりまで網羅した、これこそ欲しかったロック専科CD BOX。チャーなら「スモーキー」、かまやつひろしなら「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」、鈴木茂「100ワットの恋人」はハックルバック・ヴァージョンと、選曲も独自。ごまのはえ、布谷文夫、もんたよしのり、ファーラウトなどの唯一のシングル、四人囃子「レディ・ヴァイオレッタ」もシングル・ヴァージョンなど、テイク選びも抜かりなし。

『怪獣王 日本SF・幻想映画音楽集』(キング)(93)

ゴジラガメラ大巨獣ガッパ大魔神など、映画会社を超えて集めた、日本のSF映画サウンドトラックをCD9枚組でまとめたもの。『ゴジラVSキングギドラ』の伊福部昭のレコーディング風景を収めたミニ・レーザーディスクがオマケで付いた。SF映画といってもかなり広義で集めており、『クレージーだよ奇想天外』『コント55号宇宙大冒険』などの珍音源から、『江戸川乱歩 恐怖奇形人間』『ノストラダムスの大予言』などの封印作品も。時代劇ホラーだけで1枚というヴォリュームに圧倒される。深町純火の鳥』、ゴダイゴ『ハウス』など、未だにCD化されておらず、本BOXでしか聴けない音源も多い。

東宝チャンピオンまつり』(バップ)(01)

善玉ゴジラ時代の『オール怪獣大進撃』に始まり、『惑星大戦争』で終わる、夏休み、春休みに公開された子供向け東宝SF映画のみを集めたコンセプチュアルなBOX。ブックレットには、オリジナル音源のジャケ写を取りこぼしなく収録するなど、尋常じゃない出来。冨田勲ノストラダムスの大予言』は、本編がお蔵入りなのに、こちらはステレオの東宝レコード版、モノーラルのバップ版両方を完全収録。『ブルークリスマス』は、佐藤勝全集CDに抜粋収録されていたが、キャニオンから出ていた正規サントラにかなりのヴォリュームを追加。ここでも『血を吸う』シリーズ、『狼の紋章』など、真鍋理一郎が大々的にフィーチャーされていて、ファンの私も狂喜乱舞。大野松雄電子音楽を担当した『惑星大戦争』も、ビクター版が廃盤になってしまったので、収録に喜ぶ人も多かったはず。

四人囃子『フロム・ザ・ヴォルツ』(ピー・エス・シー)

岡井大二氏が初期にプロデュースしていたL-Rの縁などがあり、プロデュースはポリスター牧村憲一氏。メンバー秘蔵音源や、ファンからインターネットで集めた貴重なオーディエンス録音から集めた、全曲初商品化音源の5枚組。MZA有明の再結成ライヴも、商品化された『フルハウス・マチネ』とは別日から選ばれている。写真はディスク・ユニオン限定仕様の+1枚付きで、フランク・ザッパピンク・フロイド「シンバライン」の別テイクなどのカヴァー曲を収録。

はっぴいえんど『HAPPY END』(ZOOM)

URC、ベルウッドからのオリジナル3枚と『ライヴ はっぴいえんど』を含む4枚組で構成される初のBOXセット。なぜかインディーのZOOMからリリースされた。ところがこれ、『風街ろまん』『HAPPY END』はなんとマルチからリミックスされており、当時のファンからは賛否両論が出たという曰く付きのもの。エイベックスからの復刻でもスルーされているので、復刻の可能性も薄いと思われる。

『特撮・ヒーロー主題歌大全集』(コロムビアファミリークラブ)

キング、ビクター、テイチク、東芝などのライバル社から朝日ソノラマまで、各社のオリジナル音源を集めることを主眼に編集された10枚組の初のBOX(シリーズにアニメ編もある)。ゴダイゴ『小さなスーパーマンガンバロン』は入手困難なLPから3曲を収録。大場久美子の『コメットさん』など、ポピュラー系歌手の主題歌を収録しているのも特徴。『電子戦隊デンジマン』で終わる構成が、テクノポップ世代のハートをつかむ。

『Legends The Fusion Box』(日本音楽教育センター)

なんと、日本のフュージョンのみで構成された10枚組。選曲はディスクガイドなども出しているJフュージョン研究の第一人者、熊谷美広氏。渡辺貞夫松岡直也増尾好秋といった重鎮から、渡辺香津美松原正樹鈴木茂清水靖晃高中正義深町純大村憲司本多俊之鳥山雄司など、既発音源とはいえズラッと並ぶと壮観である。珍しい音源としては、村上秀一大村憲司プロデュースで出したテクノ曲「Latin Stuff」、成田忍が在籍していた99.99、沢井原児&ベーコンエッグ、羅麗若、ペッカー「KYLYN」あたりか。歴史の後半あたりになると、坂本龍一千のナイフ』、Wha-ha-ha、カラード・ミュージック、土方隆行、マライアに、YMOまできちっと抑えている。ブックレットのカシオペア対談も貴重。

P-model『太陽系亜種音』(ケイオスユニオン)

ファンクラブのみで発売された、ワーナー・パイオニア、ジャパン、アルファ、ポリドール、マグネット、コロムビア全時代の音源を集めた16枚組のBOX。『パースペクティヴII』『不許可曲集』などのカセット音源、「ソリッド・エアー・ダンス・ヴァージョン」に始まるフォノシート・シリーズ、「ヘヴナイザーのための例題」なる実験インスト、カセットマガジン『ヒルダ#3』からの「フィッシュソング」「七節男」の別ヴァージョンと、貴重な音源がてんこ盛り。『スキューバ』はカセット版、CD版、リサイクル版すべてがこれで揃う。凍結前の最終メンバーによるライヴも貴重。初回限定としてもう一枚CDがボーナスで付いており、田井中ソロなどが収録されている。そういえば、ヒカシューもCD BOXを出すという噂があったのだが、あれはどうなったのだろう?


太田裕美太田裕美の軌跡〜first Quaeter〜』(ソニー・レコード)(99)

椎名林檎と言えば、私の中では太田裕美にそっくりなイメージがある。でもその話をしても、誰もピンとこないというのは何故だろう。本作はデビュー25周年記念に出た6枚組BOX。ブックレットも、筒美京平のインタビューが載っていたのが、当時はかなり貴重だった。ご主人の福岡知彦氏がディレクターを務めた、板倉文参加の『I Do.You Do』『TAMATEBAKO』からの曲は、CD初収録。現在はアルバムすべてCD化済みだが、同じく板倉文+Bananaによる最終マキシ・シングル「雨の音が聞こえる」の3曲は本作でしか聴けない。ムーンライダーズの「サントリーワインレゼルブ」、くじら「ランドリー」の別バージョン、作曲者の板倉文氏の反対があってリリースされなかった、マライアの演奏によるフュージョン風の「葉桜のハイウエイ」「ステイションTOステイション」などが初公開された。