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過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

ムーンライダーズ『Moonriders In Search of Lost Time Vol.1』(10月21日発売)

moonriders In Search of Lost Time Vol.1

moonriders In Search of Lost Time Vol.1



 またまた宣伝ですいませぬ。ワタシがライナーノーツを担当した、ムーンライダーズMoonriders In Search of Lost Time Vol.1』(ムーンライダーズ・レコード)が今月21日に発売される。「3年ぶりの新作『Tokyo7』が出たばかりなのに、これは一体?」「邦楽アーティストなのに、なぜライナーノーツが?」 種明かしをすると、本作は97年にムーンライダーズ結成20周年を記念してリリースされたBOX『Damn! moonriders』から、レア・トラックスCDのみを抜粋して単独商品化した、改訂復刻盤である。オリジナルは今はなきインディーズ、メディアリングから発売。蔵出し映像、関係者コメントなどが入ったデータベースを収録したCD-ROMと、10周年のときにキャニオンから出た『ワースト・オブ・ムーンライダーズ』の続編的ライヴ・アーカイヴCD、本作のオリジナルとなるレア・トラックスCDをセットにした3枚組として出ていたもの。97年と言えば『ビザール・ミュージック・フォー・ユー』を出した後で、まだファンハウス・トラストに所属していた時代だが、おそらくCD-ROMなどのマルチメディア商品を含んでいたため(ユーザーの問い合わせ対応など、レコード会社ではフォローに限界があるのだ)、変則的に当時インディーズからリリースされている。録音日を詳細に記録したCD-ROMのデータベースは、『ビートルズ・レコーディング・セッションズ』を思わせる貴重な資料だったが、ビートルズと違ってムーンライダーズは現役バンド。現在も歴史は更新中ゆえに、その役目はインターネットの公式ページ、ファンサイトに託されたというところだろう。他アーティスト曲への参加リストについても、後年のVAシリーズ「ムーンライダーズのいい仕事」などでさらなる調査が進んでおり(当時のデータベースに掲載されていなかった「ロボラボ・ピンポンパン」まですでにCD化!)、Macintosh、Winsowsとも、旧OS規格で作られていたこともあって、今回CD-ROMの復刻は見合わされた。またライヴCDのほうも、ムーンライダーズ・レコード発足後のアーカイヴ・シリーズのスタートで一応の役目は終了。メーカー事業撤退後、入手困難状態が続いていた『Damn! moonriders』のうち、復刻価値のあるものだけでも再発できればというスタッフ、ファンの双方の希望を汲んで、こうして自身のレーベルから改訂版のリリースが叶ったのは喜ばしい限りである。
 ライダーズにとって本作は、デモ・テープ、未発表曲、アザー・テイクを収めた初めてのレア・トラックス集。ちなみに改訂箇所はというと、レイ・ブラッドベリ原作による、ゴドレイ&クレーム『ギズモ・ファンタジア』風のラジオドラマ「霧笛」と、ザ・バンドプロコル・ハルムのカヴァー3曲を、今回は割愛。オリジナルが発売された97年以降に制作された、「Pissin' till I die」、「ゆうがたフレンド(公園にて)」の2曲が新たに加わっている。「Pissin' till I die」は配信のみで発表された、シングル「Kissin' you till I die」の原曲で、これが初CD化。「ゆうがたフレンド」は、作曲者の白井良明ヴォーカルのデモ・ヴァージョンで、これも初お披露目となる。
 小生がムーンライダーズのライナーノーツを担当するのは『MOONRIDERS CM WORKS 1977-2006』以来2度目。今回も調べ物好きのワタシなりに、それぞれの音源がどういった時代背景で産み落とされたのかについて、「ライダーズとデモ・テープ史」というテーマの論考を寄せさせていただいた。当初、3000字目安でオファーいただき、多少長くなっても可とのお許しをもらっていたのだが、調子に乗り過ぎて1万4000字の原稿を書いてしまい、さすがに怒られた(笑)。膨大な資料を集めて作ったプロットは、また別の機会に発表させていただくとして、今回はなんとか6000字程度にエッセンシャルにまとめたものができたので、ぜひお読みいただければ幸いである。
 ちなみに、オリジナルCDに入っていた『Damn! moonriders』時点での最新音源は、このためにレコーディングされた新素材で、『ビザール・ミュージック・フォー・ユー』選外曲から選ばれた「僕の努力」、「I am a Robot Santa Claus」の2曲。実はこのとき、系列会社ハンマー・レーベルの森達彦氏がライダーズ曲のエンジニアを初めて担当。たった2日の強硬スケジュールのため、当時は珍しかった一発録りに近いレコーディングだったそうだが(かしぶち氏がドラムを叩くのも本当に久しぶりだったらしい)、このラフなセッションが意外な収穫を生み、キューン・レコードからの次作『月面賛歌』では、メイン・エンジニアを森氏が務めることとなったわけだから、ターニング・ポイント的な重要なセッションといえるものである。
 改訂版復刻にあたり、『Moonriders In Search of Lost Time Vol.1』と改題されており、ライヴ・アーカイヴに続くシリーズ化を連想させるタイトルに思わずムフフなのだが、はちみつぱいのライヴBOXなどのリリースを控えていることもあり、今後の展開が楽しみ。また、小生がちょっろっと関わっているライダーズ関連アイテムが、来月ももう1タイトル出る予定なので、こちらも情報解禁になったら、追ってご報告できれば幸いである。


(追記)


 『青空百景』からプログラマーとしてライダーズに参加。『アニマル・インデックス』の主要サウンドメイクを手掛けた森達彦氏の、エンジニア転身前のプログラマー時代にスポットを当てる、新宿ロフトプラスワンの出演イベントの告知をもう一度。ライダーズ音源かかるかもよ!

YMO vs. ムーンライダーズサウンドを支えた影の立役者、
シンセ・サウンドで時代を彩った2大傑物プログラマーが、
当時の(秘)蔵出し音源をかけながら、ロック〜テクノ歌謡
おニャン子クラブまで、音楽制作舞台裏のエピソードを初公開。


松武秀樹ロジック・システム)×森達彦(ハンマーレーベル)
YMO vs. ムーンライダーズサウンドを支えた影の立役者。ロック、歌謡曲の貴重音源を初公開!
「80年代サウンドを作った男たち。シンセ・プログラマーの逆襲!」


司会:田中雄二電子音楽 in JAPAN、テクノ歌謡監修)
SPECIALライブ:辻睦詞(ex詩人の血)ほか予定
サンプラーCDを来場者全員にプレゼント》


■開催日:2009年11月11日(水曜日)→12月8日(火曜日)
■開場:18:30 開演:19:30(〜22:30終了予定)
■会場:新宿ロフトプラスワン 新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2(TEL 03-3205-6864)
■チケット:前売:1500円 当日:1800円(飲食別)
(予約はロフトプラスワンHP=http://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/にて受付中)


※当日はブリッジ、ヴィヴィド・サウンドのCD出張販売あり。
※撮影、録音不可につき、ご了承ください。