POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

5月15日(土)ust放送「ハンマーTV」第2回プログラマー鼎談「YMOファーストアルバム大解剖」おしらせ。


 前回(4月26日)の開局プログラムが無事終了した、ustream放送「ハンマーTV」の第2回が早々と決定した。「シンセサイザープログラマー」という職種にスポットを当てた前回は、その代表的存在だったハンマーレーベルの森達彦氏、ライバル的存在だった元ヨロシタミュージック、TOPの藤井丈司氏の対談形式でお送りしたが、今回はそこに御大、松武秀樹氏が初参戦。森氏vs.藤井氏の対戦は、ムーンライダーズYMOという80年代の大物バンドの代理戦争といった趣きだったが、松武氏はこの両バンドに関わった希有なプログラマー。松武氏が最後に参加した『カメラ=万年筆』の後を受けて、『青空百景』から森氏がムーンライダーズと関わることになったのと同様に、YMOも『テクノデリック』まで松武氏が手掛け、次作『浮気なぼくら』から藤井氏がプログラミングを受け持つこととなる。現在、松武氏が会長を務めるJSPA(日本シンセサイザープログラマー協会)も発足当時、森氏、藤井氏が主要メンバーとして関わってきた歴史があるのだ。森氏、藤井氏ともエンジニア、プロデューサーに活動域をシフトした現在、この3方が一堂に揃う機会はほとんどないと言っていいだろう。
 3氏はともに、シンセサイザープログラマーという職業が確立していく黎明期に、編曲家、ディレクターらとともに、スタジオ作業におけるサウンドづくりのイニシアティヴを担ってきた。DAWが発達した現在は、レコーディング環境もすべて1台のPCにオールインワン化され、シンセサイザーの操作も扱いやすいものとなり、打ち込みや音作りといった作業も作曲者当人が行うスタイルが主流化していった。しかしこれは、制作コスト低下などの経済事情から起こった流れ。かつて、高給舶来楽器をスタジオに持ち込み、ミュージシャンや編曲家のアイデアを受けて、見事なリアライズを手掛けていた、プログラマーが独立したスペシャリストだった80年代のサウンドは、今聴いても時代を超えた感動を呼ぶ。ビートルズの歴史だって、ジョージ・マーティンジェフ・エメリックがいなければ、あれだけ充実したものになったかどうかわからない。プログラマーが職業として確立する前夜から、その啓蒙活動を続けてきた3人のバイタリティには、今こそ学ぶべきものが多いはず。
 前回の「ハンマーTV」第1回の噂を聞きつけて、賛同いただいた松武氏のゲスト出演が急遽決定。その第1回としてお送りするのは、YMOのファーストアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』の3者による分析鼎談。松武氏がこのデビューアルバムのレコーディング参加したことから、その後のシンセサイザープログラマー隆盛の歴史が始まったのだ。当事者の一人だった松武氏の証言を核に、後期YMOのプログラミングを手掛けた藤井氏がそこに切り込む。歌謡曲仕事でYMOメンバーとは断片的に関わっていた森氏も、ライバル的存在だったムーンライダーズ・サイドから、同時代のYMOの変遷を捉えてきた一人。この3方が、「YMOの方法論」が確立される初期段階に残された、ファーストアルバムの魅力をプログラマー的視点から徹底検証する。「テレビ、雑誌では観れない」がustreamの最大の魅力とするなら、YMOのファーストアルバム1枚だけをネタに、3時間かけて徹底検証するという企画は「ハンマーTV」ならでは。また、YMOを巡って、松武氏、藤井氏2者が公の場でトークするのは、これがほとんど初めてとなる。
 全体は3パートで構成(予定)。第1部は、「YMOの時代」を支えたプログラマー3人による、YMOアンケートの発表。すでにいただいている回答を肴に、鼎談形式で3者のYMO観を焙り出していく。第2部は「ファーストアルバム楽曲解説」。全曲をひとつつづ聴きながら、当時の思い出話、現在だから語れる分析などを、忌憚なく語っていただく。第3部は前回も好評だった、Twitterによる視聴者の質問タイム。YMOファーストアルバムに話題を限定して、3者に聞いてみたい質問があれば、番組後半の告知のタイミングで、ハッシュタグ「#hammertv」を付けてtweetをお寄せいただきたい。過去の音楽ライターが些細な話題とスルーしてきた、ファーストに関する細かなナゾが3者によって判明するかもしれない。
 そして今回、初めての試みとして、視聴者がYMOのCDを各自持参して参加する「オリエンテーリング方式」を採用する。ustream日本語開始から1カ月経ち、コンプライアンス的な番組運営を考えなければならない岐路にいるため、前回のゲリラ放送のような音楽使用を止め、放送内容はトークのみで構成。その代わりに、画面から「ここで『東風』をプレイ♪」といったキューを出し、視聴者がドライブに入れたCDを再生して、各自PC上でマッシュアップしてテレビ番組のように楽しんでもらえたらというアイデアである。もちろんCDを持ってない人も、脳内再生したりYouTubeから引っ張ってくれば、同じように楽しめるかも。これで3時間やり通せるかは前代未聞だが、ustream放送はそれ自体が実験のようなもの。一つの挑戦として、今回初の試みを、参加者も楽しんでいただければ幸いである。
 なお、内容はヒミツだが、放送の最後に特別なプログラムを用意しているので、最後までお付き合いいただけるとうれしい。「ハンマーTV」をフォローよろしく。


第2部「ファーストアルバム楽曲解説」のイメージ図。メンバー各人はヘッドフォンで音楽を聴いているが、法令遵守のため放送内容はトークのみをお届け。ヘッドフォンに流れている内容は、画面下のスーパーから「×××を再生中」というキュー指示を出す。


PCでご覧になられる方は、下の図のようにドライブにYMOのCDを入れ、画面から出されるキューに併せて曲をPC上でマッシュアップ(ミックス)していただければ、トークとBGMが同時に楽しめるというしくみ。もちろん、根性あるリスナーは脳内再生でお付き合いいただいても無問題。


(執筆後期)


 無事なんとか放送を終えることができました。瞬間最大ページビューが1000を超えたと聞いて驚きますた。放送直後、皆様からの許可が下りましたので、早速アーカイヴ化しました(残念ながら、ラストの松武さんライヴは含まれていません)。URLはこちら>http://www.ustream.tv/channel/hammertv/ 当日、リアルタイムで観れなかった人はぜひ。当日の盛り上がりは、Twitterハッシュタグ「#hammertv」で検索してみるとわかるよ。



 ustreamは時間帯によるのか配信状態にけっこうムラがあって、いつも視聴者の皆様からのtweetのご指摘で状況を聞きながら進めている。アーカイヴで見直すと、今回もエラーが多くて申し訳ない。音声のヴォリューム、テロップ位置など、ありがたいアドヴァイスをせっかくいただきながらも、進行・影ナレ・カメラ・スイッチング・写真出しなど、一人ですべてやってるためになかなか機敏に対応できなくてごめんなさい。さすがにTwitter監視を同時にやるのは物理的に無理で、今回はサブ司会者の藤井丈司さん経由でその都度お教えいただいた。感謝。

今夜21時から放送。森達彦vs.藤井丈司トークバトル「80年代プログラマー対決」のお知らせ。


オーディナリー・ミュージック

オーディナリー・ミュージック

 4月から続けていたゲリラ放送は、このための準備であった。小生がジャケットデザインを担当したVA『file under:ORDINARY MUSIC』の発売元、ハンマーレーベルがustream放送局を開設。その記念すべき第1回放送として、主宰者の森達彦氏がプログラマー時代、80年代サウンドをともに面白くしてきたライバル的存在だった藤井丈司氏を迎えた対談番組をお送りする。藤井氏はヨロシタミュージック時代に『浮気なぼくら』からYMOのプログラミングを担当。あのサザンオールスターズの名作『KAMAKURA』のサウンド・メイキングにも大きく関わった御仁。現在はともにプロデューサーとして制作全体を統括する立場だが、彼らのキャリアはプログラマー時代に培った経験があればこそ。まだMIDI規格が登場してまもないころ、不安定な機材を相手にスタジオで格闘してきた歴史は、プロデューサーやディレクター、アーティスト当人にも語れない重要な証言になるだろう。ゲストの藤井丈司氏のプロフィールは以下の通り。

藤井丈司
(プロデュース/アレンジ/ソングライティング/プログラミング)
 80年代中ごろよりプログラマー活動をスタートさせ、YMOサザンオールスターズなどの作品に参加。プログラマーの視点からアレンジにも関わるようになり、桑田佳祐KEISUKE KUWATA』、布袋寅泰『GUITARHYTHM』、ローザ・ルクセンブルグ「II」で共同プロデューサーを務めた。90年代はプロデューサー/アレンジャーとして、SPIRAL LIFENOKKOTEI TOWA仲井戸麗市など、幅広いジャンルで活躍。玉置浩二「田園」、広末涼子「大スキ!」、ジュディアンドマリー「クラシック」、ウルフルズ明日があるさ」などにも関わった。00年代より、LOST IN TIMEスムルース安藤裕子アナログフィッシュ、シガキマサキ、PhilHarmoUniQue、LITEなどのインディーズのバンドプロデュース、新人発掘も。99〜01年には、宮本亜門演出のミュージカル『ボーイズタイム』『くるみ割り人形』の音楽監督を務めている。
 今回はテーマ別に休憩を挟んだ3部で構成。2人がなぜプログラマーになったのか、プログラマーとはどういう仕事だったのか。拙著『電子音楽 in JAPAN』にフィーチャーできなかったお2人に、進行兼影ナレのワタクシが肉薄する予定。また、今回は初めて、Twitterによる視聴者参加スタイルを採用。番組の最後に「質問コーナー」を用意しますので、プログラマーという仕事についてや80年代の名作誕生の裏話など、聞きたい質問があればぜひお2人にお寄せいただきたい。つぶやきはustream画面横のTLから投稿するか、Twitterクライアントを使っている人は末尾にハッシュタグ「#hammertv」を付けて投稿してくだされ。面白かった質問には、2人からプレゼントも贈呈してもらえるとか。
 興味ある方は「ハンマーTV」をフォローよろしく。

ustream放送局「ハンマーTV」開局! 森達彦vs.藤井丈司の「80年代プログラマー対決」パート2

(下は、出演者説明用のサンプル映像)



 昨晩(4月23日)のustream試験放送第5回にお付き合いいただいた皆様、ありがとうございますた。先に告知していた高画質配信のテストも、ほとんど問題なかったようで一安心。ついつい調子に乗って、3時間の予定が2時間もオーバーして計5時間のロングラン放送に。やってる側は操作にてんやわんやで、あっという間なんだけどねw ところが毎回やり方を変えて、コメント表示方法もさまざまなスタイルを試しているために、昨晩の放送ではTwitterで曲解説したコメントが、ほとんどustream画面横のTL(タイムライン)に反映されてなかったのが後から発覚。視聴者には、ただ黙々と曲をチェンジする不気味な番組にしか見えなかっただろうな……。
 ustreamにもコメント欄があるが、最近はTwitterによるコメント投稿が優勢。Twitterとの連動表示は後から付いた機能なので、ブラウザではなくTwitterクライアントから投稿した場合、ustream画面横のTLにどう反映されるのか、その兼ね合いがわかりにい。調べてみたら、自分の場合なら (@ugtklive live at http://ustre.am/foPp )というふうに、tweetの末尾にustのURLを付けて投稿すれば、ブラウザからでもTwitterクライアントからでも手段を選ばずに、ustream画面横のTLにそれが反映されることがわかった。よくust中継番組で、ハッシュタグ(#)付きのキーワードで、パネラーへの質問を募集してるのを見かけるけど、あれがそのままTLに反映されると便利なのにねえ。(追記:ustreamのadvanced画面にハッシュタグの設定があるが、何度テストしても反映されなかった)
 ところで、こうして延々とustream中継を使ったゲリラ放送を重ねているのにはワケがある。やっと皆様にご報告できるのが嬉しい。ワタシが世話人として、来週、プロデューサーの森達彦氏が主宰するハンマーレーベルの専用チャンネル「ハンマーTV(hammertv)」が開局することになった。音楽関連のレーベルということで、やっぱり音がないとサビシイので、最初は少々ゲリラなノリは残しつつやるだろうが、ustream日本語化の後も、音楽以外のトークなどのプログラムで、充実した内容の番組を続けていければと思っている次第。現在使っているパーソナルの「ugtktv」のアカウントは、あと数回試験放送をした後に閉じるつもりだが、これと入れ替わりにワタシが関わった正規のプログラムを、「ハンマーTV」のほうからお届けできればと思っている。
 して、その開局記念番組(笑)が決定! 来週29日(木曜日)21時スタートの3時間番組(予定)として、レーベルオーナーのプロデューサー森達彦氏と、同じく80年代にプログラマーとして活躍した藤井丈司氏の対談番組をお送りする。2人はプログラマー時代に、片やムーンライダーズ、片や後期YMOのスタッフとして活躍したライバルのような関係。ちょうど松武氏と入れ替わりに、『浮気なぼくら』からYMOのプログラミングを担当しているのが藤井氏という縁もあるので、昨年12月にロフトプラスワンでやった、松武秀樹vs.森達彦の「80年代プログラマー対決」の第2戦のようなノリで、当時の制作現場の話などをクローズアップできればと思っている。ワタシはカメラ操作、進行、影ナレを担当。ホストは森達彦氏が務める。今回のゲスト、藤井氏のプロフィールは以下の通り。


藤井丈司
(プロデュース/アレンジ/ソングライティング/プログラミング)
 80年代中ごろよりプログラマー活動をスタートさせ、YMOサザンオールスターズなどの作品に参加。プログラマーの視点からアレンジにも関わるようになり、桑田佳祐KEISUKE KUWATA』、布袋寅泰『GUITARHYTHM』、ローザ・ルクセンブルグ『II』で共同プロデューサーを務めた。90年代はプロデューサー/アレンジャーとして、SPIRAL LIFENOKKOTEI TOWA仲井戸麗市など、幅広いジャンルで活躍。玉置浩二「田園」、広末涼子「大スキ!」、ジュディアンドマリー「クラシック」、ウルフルズ明日があるさ」などにも関わった。00年代より、LOST IN TIMEスムルース安藤裕子アナログフィッシュ、シガキマサキ、PhilHarmoUniQue、LITEなどのインディーズのバンドプロデュース、新人発掘も。99〜01年には、宮本亜門演出のミュージカル『ボーイズタイム』『くるみ割り人形』の音楽監督を務めている。
 藤井丈司氏は、YMOが所属していたヨロシタミュージック出身。その後、TOPというプログラマー集団を率いて、80年代からプロデューサーとして精力的に活動してきた。エンジニア/プロデューサーの飯尾芳史氏、アレンジャー/プロデューサーの小林武史氏もここの出身。立花ハジメ氏、飯尾芳史氏とのテクノユニット「Techies」も有名。拙者が編集者として在籍していた『Techii』時代には、連載を担当させてもらい、若輩者にいろいろご指導いただいた、24年越しの古〜い関係があったのだ。
 ハードウエアを取り上げる珍しい音楽雑誌だったこともあり、『Techii』時代はよくスタジオ取材をさせてもらったが、当時のレコーディング作業を見学していて思ったのは、サウンド作りの鍵を握っていたのが実はプログラマーであったこと。84年にMIDI規格がスタートし、DTMが一般に普及する前夜の話。ディレクターが指揮し、アレンジャーが譜面を起こすといった作業基盤は従来通りだが、シンセサイザーやサンプリングがサウンドの中核を担うようになった80年代からは、例えばスネアドラムの「音の品質」を決定づけていたのは、彼らプログラマーの存在だった。日本のロックが現在のように「洋楽のようなサウンド」を獲得していく過程で、プログラマーやミキシング・エンジニアら技術者が果たした役割は大きい。ビートルズのエンジニアだったジェフ・エメリックの自伝『ザ・ビートルズ・サウンド 最後の真実』が、ジョージ・マーティンの著述以上に真実を伝えていたように、まだまだ語られていない、テクニカル・スタッフしか知らない、80年代サウンドの秘密はたくさんあるのだ。
 前回のロフトプラスワンの「松武秀樹vs.森達彦」のスタイルを踏襲し、3時間を3部に分けて構成。2人がプログラマーになった経緯、ムーンライダーズ坂本龍一のレコーディング現場のエピソードなどを、対談形式でお届けする。一部、当時の珍しい映像なども交える予定なので、ファンは見逃せない内容になるだろう(アーカイヴ化も考えているが、とりあえずは本放送のみの予定)。
 して、その番組で初めて、視聴者からリアルタイムでtweetしてもらった感想や質問を、パネラーの2人にぶつけるという生放送らしい企画をやる予定。『ケータイ大喜利』に大いに刺激を受けますた(笑)。そこで、冒頭に書いたTwitterとの連動のためのお願いが。PCで観られる方はそのままustreamの画面横のTLから投稿すればOKだが、Twitterクライアントを使う場合は、末尾にハッシュタグ「#hammertv」を付けて投稿よろしく。くわしくは当日、スタート後にも改めて説明する予定。番組の最後には質問コーナーを設ける予定で、2人に直接聞いてみたいという質問があれば、そのタイミングで寄せていただきたい。むろんパネラーに精神的な余裕があれば、TLに表示された視聴者からの感想などを、番組内容に反映してお届けできればと思っている。ustreamにはもちろん、専用のコメント欄があるのだが、TwitterのTLと同時に表示できないのがツライところ。そこで今回は、感想や質問はTwitterに一本化してお寄せいただければ幸いである。
 Twitter内容とustreamの画面のTLとの連動は以下の図の通り。





 とりあえずはやってみなけりゃわからないということで、映像制作の初心者が、このためにウェブカメラを新調して始める素人放送からのスタートなので、どうか優しい目で見届けておくんなまし。
 そらのさんの「ダダ漏れ放送」は、特に何かをしたいという目的はないように見えるので、番組内容への共感はあまりないが、音楽番組局として先行している「dommune」には大いに刺激された。さすが宇川直弘氏! 「自分もdommuneのスタッフ」と自称される音楽ライターがたくさんおられるようだが、宇川氏に多大な影響を受けつつも、自分は自分のスタイルでやれればよいかな。せっかくustreamは、誰もが使える技術を提供してくれてるわけで、群れる必要はないしね。それが刺激を与えてもらった宇川氏に対する誠意だと思っている。といいつつも「dommune」のような専用スタジオがないところからスタートなので、第1回はなんと、MI7のご厚意で、そちらのスタジオの場所をお借りしてお送りする。どうか、「ハンマーTV」をフォローよろしく。

「Flash Media Live Encoder」を使ったustream高画質配信をやってみる。

 先日は、4月16日23:00から行われたustream試験放送第4回「テクノポップ映像祭エクストラ版」にお付き合いいただき、ありがとうございました。各所でRTしてもらったおかげで、過去最高の150人近くの視聴者を得ることができて大喜び。タダでさえ音楽を使うust放送に眉をしかめているウルサ方が多い中で、映像までつかっちゃうんだから、こりゃゲリラ放送の極みだな(笑)。ソフトバンク孫正義会長が、5月のGWあたりをめがけてustream日本語化を調整中とtweet。日本での展開もある程度見えてきた。配信専用ソフト「ustream producer」のpro版(2万円前後でダウンロード購入可)などはすでに日本語化されており、単なるラベル貼り替えならすぐにもできるはず。5月を節目に設定しているのは、YouTubeニコニコ動画と同じように、JASRACなどの権利団体との調整に時間がかかっているのだろう。日本語サービスが始まってしまえば、おそらく音源、映像の無許可使用についてはより睨みを利かせるようになるはずで、今のようなゲリラ放送を謳歌できるのは4月いっぱいになるかもしれない。音楽ならまだ発展の可能性はあるものの、映像を使ったファン主導イベントが今後大っぴらにできるようになるかと言えば、権利処理が複雑すぎて、これは永遠に叶わぬ話。とりあえず自己責任でってことで、前回、前々回と「テレビでも観れない」「YouTubeニコニコ動画にも上がってない」、まさに夢のような映像イベントをお届けしてみた。一応、4月いっぱいまで「ugtktv」の名義は残して、あと数回ゲリラ放送をやってみるつもり。次回は初めての高画質配信に取り組むべく、現在調整中である。今回のエントリはその告知を兼ねて、今度は先にテクニック解説編を用意することにした。
 次回の試験放送は、音楽とテキストジョッキーでお送りするiTunes DJ編。基本ソフトは第1回と同じだが、今回はアドビが無料配布している高画質配信ユーティリティ「Flash Media Live Encoder」を使ってみることにした。ustreamでダウンロードできる有償版の「ustream produser pro」があれば、気軽に高画質、高音質での配信ができるが、「Flash Media Live Encoder」を使えば、より細やかな調整が可能に。このユーティリティをデスクトップに置き、リアルタイムでコンバートしながらustreamに送信するというやり方で、視聴者が特別な設定を必要とせずに、より高密度な映像、音声で鑑賞できるようになる。ustreamは、アドビが配布しているこの技術をサポートしているが、前回使った「ustream producer」との併用はできないので、今回はustreamのマイページにある「Broadcast Now」ボタンから、送信専用ページに入ってやるカタチになる。以下、やり方の手順を書いておこう。


 画面キャプチャには、第1回と同じ「CamTwist」を使用する。キャプチャ画面の取り込みサイズが段階的に変更可能。「CamTwist」を立ち上げたあと、Preferences画面を呼び出して、標準の320×240から、その倍のサイズである640×480に変更する。実はこの状態で「ustream producer」配信しても画質は向上はするはずなのだが、処理系統の問題で、実際の画面を比較するとそれほど大きな差は感じられない。





 さて、いよいよ「Flash Media Live Encoder」を入手してみる。アドビのホームページに行くと、ustreamなどでの実用例を交えた紹介文と、ダウンロード・ボタンがある。ここから「Flash Media Live Encoder」をダウンロードして、さっそく起動しておく。





 次に、ustreamのマイページに入って、「Flash Media Live Encoder」が使えるように設定する必要がある。ログインして「Your Shows」に入り、下の画面のように「Advanced」を選ぶと、「Flash Media Encoder XML File」という書類のダウンロードボタンが表示される。これをクリックしてデスクトップに落とす。ちなみにブラウザはそのままの状態で、ustreamはログインしたまま待機させておく。





 起動した「Flash Media Live Encoder」のメニューバーのfileからOpenを選び、ダウンロードしたXMLファイル(ustream.fme.******.xml)を読み込む。すると、右画面にコンバートのための変換サーバのURLが自動的に割り当てられる。





 今度は「Flash Media Live Encoder」の映像、音声設定を下の画面のように変更する。VideoのInput Size(画面サイズ)は、「CamTwist」で設定した通り640×480に変更。これはustreamの画面サイズと同じものなので、その下にあるBit Rateの選択画面1のOutput Sizeも同じく640×480に設定する。この2つの画面サイズは、「Flash Media Live Encoder」の上の画面に、処理前(左)、処理後(右)それぞれがリアルタイムに表示される。マシンパワーによって、処理後の画面のブロックノイズがヒドイ場合は、Videoの配信スペックを落とせばよい。今回はiTunes DJスタイルなので、音質を上げたいため、AudioはCDクオリティの44100Hzを選択しておく。





 設定が終わったら、「Flash Media Live Encoder」の画面下のStartボタンを押す。すると下の画面のように、エンコードがリアルタイムで開始される。





 待機させておいたブラウザのustreamのマイページから、右上の「broadcast Now」のボタンをクリックすると、下の画面のようなブラウザ上から配信できる専用画面が立ち上がる。通常、赤線で囲ったところが設定画面になっているのだが、「Flash Media Live Encoder」を併用した場合は選択変更できないようグレーで表示される。後は前回同様、「Start Broadcast」で送信、「Start Record」で録画すればよい。





 こうして配信した結果のサンプル映像は以下の通り。今回も音声はなしなのであしからず。





 ちなみに、ustreamのマイページから落としたXMLファイルは、ブラウザを閉じたり、ustreamをログアウトしてしまうと、「Flash Media Live Encoder」が認識しなくなるので注意。ステップとしては、


ustreamのマイページにログイン

XMLファイルを落とす

Flash Media Live Encoder」で読む込む

Flash Media Live Encoder」でコンバート開始

ustreamのマイページの専用ページから送信


 この一連の操作をワンセットとして考えるべし。途中でブラウザが閉じた場合、最初からやり直す必要があるのだ。
 というわけで、「ustream prducer pro」を使うよりは作業は繁雑になるが、無償アプリだけでも十分に画質、音質の向上が実践できるのがわかっただろう。今回は精度の粗いスクリーンキャスト放送だから、せいぜいフォントのアウトラインがくっきり見えるぐらいの変化しかないが、200ピクセルぐらいのウェブカメラで配信すると、動く写真のように高密度な映像配信ができるようになる。サンプル映像がYouTubeにたくさん上がっているので、例えばウェブカメラの機種名などで検索して、ノーマル送信との違いを見比べてみてほしい。


 というわけで技術解説第3弾をお送りしてみたのだが、今回はなぜ先にネタばらしをしたのかというと、自分の使っているMacBookのマシンパワーやネット環境では、果たしてこのクオリティでの放送が維持できるのかはなはだ疑問なため(笑)。とりあえず次回はこれでスタートしてみて、画像が止まったり音声がブチブチ切れるようであれば、とっととノーマル配信に切り替えてやるつもりなので、一応こんなことができるんだよという説明に止めておければと思った次第。
 次回のustream試験放送第5回は今週末を予定。よかったら専用ページ「ugtktv」を予約フォローよろしく。

TAO『FAR EAST』(ブリッジ)紙ジャケ復刻、4月22日発売。どうぞ、よろしく。

FAR EAST [BRIDGE-155]

FAR EAST [BRIDGE-155]

 今回も宣伝で失礼しまする。拙者の監修によるブリッジの最新仕事、TAO『FAR EAST』紙ジャケット復刻盤が4月22日に発売される。83年にデビューしたこのグループは、アニメ『銀河漂流バイファム』の主題歌「HELLO,VIFAM」のスマッシュヒットで有名に。「アニソン界初の英詞主題歌」ということで話題を呼び、同曲は30万枚をセールスするヒット作となった。2曲の挿入歌が収録されたサウンドトラック盤は、アニメ関連盤としては珍しい、アルバムチャートでベストテン入りを記録。富野由悠季の原案によるアニメ本編のほうも成功作として知られ、YouTubeなどでも未だ新しいファンを増やしているという。制作会社の日本サンライズにとっても、再放送で巻き起こったガンダムリバイバル時期に作られた新作。「アニソン界初の英詞」というのも、サンライズ側の理解あって実現した話と言うから、スタッフ一丸となった意欲作だったのだろう。『ガンダム』をネットしてなかった地方在住のワタシも、毎日放送にキー局を移して夕方に放映されたこの作品は、リアルタイムで観ていて面白かった記憶がある。
 今回の復刻に関わったのは偶然の話。加藤和彦のヨーロッパ3部作など、80年代初頭のワーナー・パイオニアには他社にはない個性的なカタログが充実していた。清水信之『エニシング・ゴーズ』、三枝成章『ラジエーション・ミサ』など、拙著『電子音楽 in the (lost)world』でも数多くの作品を取り上げさせてもらっている。いずれも70年代初頭に、フラワー・トラヴェリン・バンド、スピード・グルー&シンキなどをデビューさせたプロデューサー、折田育造チームによるもので、洋楽部のディレクターが邦楽アーティストの制作を手掛けるという、ワーナー独特の体制から生まれた作品。「アニソン界初の英詞曲」をたまたま同社が仕掛けることになったのも、歌謡曲よりロックにくわしい洋楽出身ディレクターが多い、いわばワーナーの伝統なのだ。TAOのナンバーも、『銀河漂流バイファム』のエンディング曲「NEVER GIVE UP」1曲を除いてすべて英詞曲。これは日本コロムビアの洋楽部、サトリルレーベルからデビューしたゴダイゴと同様のケースで、当時のセオリーで考えれば、邦楽アーティストで英詞での活動が黙認されるのはかなり珍しかった。
 作曲家兼ヴォーカルのデヴィッド・マンは、知る人ぞ知る元ナベプロ、ジャニーズのアイドル出身。そういったポップな出自の才能が、TAOのようなプログレッシヴな編成を率いてデビューするという突然変異ぶりもまた、いかにもワーナーらしい。AMORの安部王子のいたボーイズクラブもワーナーの同期組。ところが、現在ワーナーミュージック・ジャパンが原盤管理するそれらの作品は、まとまって再発される機会に恵まれておらず、以前から「何か復刻したい面白いアルバムはない?」と相談を受けるたびに、同社のカタログの復刻話を持ちかけていたのだ。TAOのアルバムはそんな中で挙げていた候補のひとつで、『銀河漂流バイファム』CDシングルがディレクター氏のお気に入りとなり、あれよあれよというまに復刻が実現したというもの。実は復刻オーダーサイト「たのみこむ」で、なぜか洋楽カテゴリで1位になっていながら、ずっと復刻が実現していたなかった話などは後から知ることに。後身バンドにあたるEUROXが参加した『機甲界ガリアン』のサントラをディスクユニオンが今春に復刻し、オリコンのアルバムチャート50位以内に入ったというのもたまたまの偶然で、今回のTAO『FAR EAST』の紙ジャケ復刻も、考えうるベストな環境下で発売日を迎えることになった。ありがたや。
 マーキームーンから出ている『ヒストリー・オブ・ジャップス・プログレッシブ・ロック』にも、実はTAOの項目がある。キング・クリムゾンのデヴィッド・クロスやUKのエディ・ジョプソンのようなヴァイオリン奏者をメンバーに擁する、プログレッシヴ・ロック編成というのは当時の邦楽ロックでも珍しかった。いや、その後ブレイクに恵まれなかったのは、ニュー・ウェーヴ華やかなりし80年代の音楽流行との乖離によるのだろう。ワーナーのカタログにポツンと残された唯一のプログレ・グループだったTAOは、セールス担当者もプロモーションするのに相当苦労したのではあるまいか。とはいえ、デヴィッドの作曲センスはポップの王道を行っており、元アイドルというプロフィールから、元ベイ・シティ・ローラーズのデヴィッド・ペイトンが結成したパイロットを連想させるものがある。唯一のアルバム『FAR EAST』も、クリムゾンやイエスなど、プログレ系グループがニュー・ウェーヴに接近していた当時の時代性を伺わせるところがあり、ラウドなドラムサウンドは、ヒュー・パジャムが制作したジェネシス『アバカブ』のよう。「HELLO,VIFAM」のドラマチックな曲調は、スティーヴ・ハウジョン・ウェットンが結成したエイジアに通じるものがあるし。
 リーダーでヴォーカル兼ギターのデヴィッド・マンが全曲を作曲。アルバム発表後に残り3人と袂を分かち、TAOの看板はデヴィッドが継承して、レーベルを離れることとなる。ワーナーに残ったメンバーはEUROXに改名してデビューするが、こちらは井上大輔ブルーコメッツ井上忠夫)が作曲を担当しているように、インストゥルメンタル・グループとしての性格が強い。言うなればデヴィッドのポップな作曲センスと、EUROXチームの技巧的なアレンジが解け合った結晶が、TAO時代にあったと言っていいだろう。ヴォーカリストとしては、かなりピッチが不安定なところもあるのはご愛敬だが、デヴィッドの少年のような声は、モラトリアム期の少年たちを主役に据えた『銀河漂流バイファム』の世界観にも見事にマッチしている。
 今回の復刻は唯一のアルバム『FAR EAST』のオリジナル盤を忠実に再現した紙ジャケットに、アルバム未収録のシングル3曲を加えたワーナー全曲集。アルバムのCD化はこれが初めて。「HELLO,VIFAM」のシングル・ヴァージョンと『銀河漂流バイファム』副主題歌「NEVER GIVE UP」は一度CDシングル化されたことがあるものの、現在ではamazonマーケットプレイスなどで1万円近くの高額で取引されているので、今回のボーナストラック収録はファンにはありがたい。活動遍歴をまとめた長文のライナーノーツは、小生がまとめた。本来ならアーティスト本人のインタビューを実現させたかったのだが、現在デヴィッドはアメリカに在住。コンタクトを取ったものの反応がもらえず、当時の資料や関係者の証言などを元にまとめたものが収録されている。その後、本人から連絡をいただき、今回の復刻を喜んでいただけたのはありがたい。YouTubeのオフィシャルページマイスペースで、現在デヴィッドのソロ・ユニットとして活動するTAOの勇姿を観ることができるが、最近では「HELLO,VIFAM」のリメイクなどがステージで披露されており、ちょうど日本での活動を視野に入れた準備を進めていたところだったらしい。この復刻CDの売れ行きがよければ、来日が実現してライヴも観れちゃうかも。
 ちなみに、『FAR EAST』の執筆作業の中で過程で、TAOの後身グループにあたるEUROXが手掛けた、日本サンライズのアニメ『機甲界ガリアン』の主題歌「ガリアン・ワールド」を初めて聴いたのだが、これもすごくいい曲なのな。EUROXは最近復活して新作もリリースしているが、再結成が吉と出ないことも多い中で、いずれの新緑も充実した内容になっているのが素晴らしい。こちらもオリジナル期の作品はワーナーミュージック・ジャパンが原盤元で、「ガリアン・ワールド」を除くシングルは未CD化、唯一のアルバムも現在では1万円近くで取引されているというから、にわかファンのワタシには手が出せず……(泣)。TAO『FAR EAST』の復刻盤がすごく売れたら、こっちもリマスター復刻をメーカーに掛け合ってみますんで、どうかご支援いただきたい。
 リリースを間近に控えて、先日ブリッジのサイト内に特設ページを開設。試聴サンプルも置かれているので、ぜひ聴いてみてね。タワーレコードセブン&アイによる買収、HMVのツタヤ傘下入りと、音楽業界不況の影響もあってか、復刻作品のオーダー状況はけっして芳しくないため、今回はネット販売中心になりそう。予約数だけが頼みの綱なのだ。もし店頭で見つからない場合は、ブリッジのホームページ、もしくはamazonHMVのネット通販などでお求めくだされ。

実録! ustream試験放送パート2「80年代テクノポップ映像祭」の技術報告

 昨晩(4月9日)深夜に放送した拙者企画のustream試験放送第2回をご覧になった皆様、お付き合いありがとうございますた。前回は日曜日深夜だったため翌日が平日ということで、甚だ迷惑な日程での放送だったが、今回は週末に切り替え。第1回の最大のライバルだった常盤響氏の「レコ部」に変わって、『タモリ倶楽部』の恒例「空耳アワースペシャル後編と時間帯が重なるというアクシデントに見舞われたが、それでも150人近くの視聴者にアクセスいただいたのはありがたい。同様のイベントはリアル会場でここ5カ月続けてきたわけだが、参加できなかった非関東エリアの方々に観ていただけたのはustreamのおかげ。感謝しておりまする。
 実は1回こっきりで終える予定だった試験放送をもう一回やってみたのは、前回使えなかった中継用アプリを試してみたかったから。動画にアバター(イラスト)を登場させるなど、前回できなかった技術テストのために今度はムービーをフィーチャーしたものをやることとなり、昨年11月11日に新宿ロフトプラスワンでやった「秋のテクノポップ大感謝祭」の使用素材を再編集した、「80年代テクノポップ映像祭」をテーマに選んだ。マンガ家の江口寿史氏とミュージシャンの戸田誠司氏をゲストに迎え、店内の大型プロジェクタに当時の映像を映しながらDVDの副音声みたく、バンド解説や当時の思い出を語っていただくというそのイベントは、珍しい形式だったためたいへん好評をいただいた。そのとき集めた膨大な映像データを使ったのは一回こっきりで、もったいないなと思っていたので、ちょうと新技術のテストにおあつらえの素材になった。ロフトプラスワンでのショーは3時間半に及ぶもので、昨晩流したものはそこから約半分を落としたダイジェスト編。「YouTube、ニコ動でも観れない映像ばかりを集めた」をうたい文句にやったイベントだったから、普段YouTubeをまめにチェックしている人でも、初見の映像が多かったと言っていただけたのは光栄である。
 実は11月11日のイベントも、もともと予定されていた「松武秀樹vs.森達彦プログラマー対決」という企画が開催日2週間前に出演者の都合でNGになり、代替企画として急遽立ち上げたもの。使われた素材は93年にやった渋谷での映像上映イベントのために、各レコード会社から非公式に貸し出してもらったレア映像ばかり。約15年眠っていた素材を復活させたのは、そういうハプニングがあったからというのが本当の理由で、当初からゲリラなイベントという自覚があった。事情があって封印されているPSY・Sの初期PVなどを、当時のディレクター氏の観ておられる前で流してるんだから冷や汗もの(笑)。それらの映像は今日なかなか観られる機会が少ないのだが、ソフト化されていない素晴らしい映像が80年代にはたくさんあることを、昨晩の放送でご覧いただいた方々ならおわかりいただけだろう。このところ「テクノポップvs.テクノ」みたいな議論でTwitterが炎上したこともあって、テクノポップを擁護したい気分もあったし、コスチュームやステージングに見られる過渡期の映像こそ、復刻CDではわからないテクノポップ最大の魅力。90年代に勃興したテクノのドラッグ映像とはまた違った、学芸会的なヴィジュアルの面白さがあの時代のバンドにはあったのだ。昨晩もセレクトした、P-MODEL、アーバン・ダンス、立花ハジメをフィーチャーした「フジAVライヴ」なんて、その1夜のためにブラウン管モニタ何十台も搬入して積み上げて、シンクロなどできない初期の映像装置でオールマニュアルでやってたんだから、舞台裏の苦労はたいへんなもの。小型のノートブック1台あれば映像すべてができてしまう、今の世代が観れば笑うだろうが、失敗が許されない会場のテンションは、記録映像からでもなんとなく伝わってくるんじゃあるまいか。
 ただでさえ著作権や原盤権問題で、曲を使うことだけでもウルサ方を刺激するustreamで、映像まで使ってやるんだから非合法極まりない(笑)。しかし映画『パイレーツ・ロック』じゃないけれど、海賊放送にもユーザーの声に応えた海賊放送なりの精神があるつもり。「法整備が整うまでは何もしないべき」という方々の姿勢も高く評価しているワタシだけれど、こと映像関係については日本の法体系では、たぶん永遠に許可を取って流すことなど無理だろう。そういう意味でustreamの数ある放送の中でも、もっともゲリラチックなプログラムになったのかもしれない。ま、一回こっきりってことでお許しを(笑)。
 さて、映像をつかったのはあくまで技術テストのためで、今回の主たる目的はPC上の画面をそのままustreamで生中継する、スクリーンキャスト用のアプリ「ManyCam」の使用実験。前回使ったMac用の「CamTwist」はプロ機材を技術を移植したシンプルなものだが、こちらはライヴカム中継などアマチュア向けの多彩な機能が盛り込まれている。いずれも無料なので一度試してみてもらうとわかるけど、内蔵カメラで撮影した自分の顔の背景に『巨人の星』みたいな炎メラメラのアニメーションを追随させるなど、ナニコレ的な付加モードがたくさん付いている。このうち、Objectsというムービーに手書きイラストなどをレイヤー合成するモードを試してみたくて、第2回を企画したというわけ。そこで今回も前エントリに引き続き、中継に使った技術を解説しておくことにする。今回も送信用に使ったのはMacBook1台である。





 これは放送時の送信側のMacBookのデスクトップ画面。映像の再生は前回同様iTunesを使っている。画面キャプチャ用の「ManyCam」でムービー画面部分をトリミングして、これを専用の送信アプリ「ustream producer」を通してustreamのサーバに送る。プロセスの処理は以下の通り。


iTunesでデータ化されたムービーを流す

ManyCam」でムービー部分のみを画面トリミング

ManyCam」上で文字、イラストをレイヤー合成

合成画面を「ustream producer」経由でustのサーバに送る


 前回使った「CamTwist」とやれることはほぼ同じだが、「ManyCam」のテキスト入力はチャットのように打ち込んで即反映されるために、日本語環境だと誤変換などがそのままテロップ合成されてしまうのが難点。そこで今回はエディタを別に立ち上げて、そこで打ち込んだネームをコピペして、その都度「ManyCam」のテキストフレームに貼り込むというメンドくさい作業をしている。一度表示させたテロップは、自由にオンオフできる。
 また「CamTwist」と違って、「ManyCam」の画面トリミングは自由に設定できない。一応、ハイヴィジョンなど画面サイズを選択できるWindows版より、さらに機能が限定されているMac版は、画面のアスペクト比は固定になっている。





 ソースモードでトリミングを選ぶと、写真のようにグレーのトリミングパッドが表示される。これをiTunesの再生映像に重ねるだけで完了。





 これはレイヤーで別の静止画(動画プログラムも可)を重ねられるObjectsモード。進行役のうさぎDJのさまざまな表情を描いておき、TBSの『CDTV』みたいに、アバターの表情をリアルタイムに切り替えることができる。Objectsは別フォルダを作ってそこに画像を登録すると、2枚以上の絵を重ねることもできる。
 うさぎDJのイラストは、いつも使ってる「ComicStudio」でちゃっちゃっと描いたもの。背景を透明にするのは、「Photophop」などアルファデータを扱えるグラフィックソフトならどれでも可だが、自分はいちばん簡単なフリーソフトGIMP2」を使っている。読み込んで、マジックハンドで背景を選択→選択部分を透明化、これで一発で終わり。





 これは最終的な映像配信用の「ustream producer」の選択画面。上記フレームに写っているのが送信中の最終画像。下のサムネイルは選択候補画面で、無料版は3つまで登録できる。いちばん左は「ManyCam」からのダイレクト出力。中央のは今回の放送用に作ったオープニングマンガのムービー。いちばん右はトイレ休憩用のアイキャッチ(静止画)で、ザ・バード&ザ・ビーのニューアルバムの音を10分程度にメドレー化した音が貼り付けてある。オープニングマンガは、開始2時間前ぐらいに「iMovie」で即席で作ったもので、あそこで使ってオシマイのしょーもないものなののだが、簡単にできる実例としてYouTubeに上げておく。





 最終的にどんな放送になったか、その雰囲気を伝えるためのサンプルムービーを作ってみた。例によって無音声なのであしからず(生放送で跡形なくゲリラなことができるのは、ustreamだけの世界なので)。





 事前に「iTunes」用のムービーデータを仕込んで臨んだとはいえ、曲飛ばしなどは空気を読みながらリアルタイムで操作。アバターの切り替えやテキストジョッキーを同時にやるのはさすがにたいへんな作業で、テスト受信用のデスクトップPCに立ち上げてあった、Twitterでの視聴者との掛け合いも今回はほとんどできず。トホホ。もう一度やるとしたら、ムービーものをやらない限りは、やっぱシンプルな「CamTwist」のほうが便利だな。打ち込んだ日本語を確認後にエンター→画面表示、これができない「ManyCam」では作業は繁雑になってしまうのだ。
 と言うわけで、「レア映像祭」のインパクトにやられてほとんど話題にもならなかった、イラスト合成、テキストジョッキーのプロセスを技術解説をしてみた。さすがに映像だけを「ダダ漏れ」させるのは、制作の仕事もやってる立場なので心苦しく、画面合成などの処理込みだからできる放送ってことでご理解いただければありがたい。
 7000人近くがアクセスしてもサーバが落ちない、セミプロ仕様の環境が無料で使える「ustream」は本当に素晴らしい。その技術を体験してみたいという好奇心があくまで先で、今後こういうゲリラなものをやるかどうかはムムムなのだけれど、もしこのエントリを読んで興味を持たれた、あまり宣伝予算がないという(笑)ギョーカイ関係者がおられたら、応用術などいくらでもアドバイスできますんで、お声がけいただければ幸いである。


今後のustream活用方針は上記エントリの通りだが、CamTwistを使ったテキストジョッキーの味も忘れられずw DJ形式のやつは近々やると思われ。予告しないと思うのでhttp://www.ustream.tv/channel/ugtktv/をフォローよろ! 深夜番組がつまんない日などに神出鬼没するので、徹夜作業やおやすみのBGMとして使っておくんなはれ。

大野松雄ドキュメンタリー『サウンド・アルケミスト』(仮)公開記念、公式ホームページ開始のお知らせ

鉄腕アトム・音の世界

鉄腕アトム・音の世界



 以前も当ブログで紹介した、音響デザイナーの草分け、大野松雄の生涯を綴った今秋公開のドキュメンタリー映画サウンドアルケミスト』(仮)のプロモーションとして、先日初めての本人の公認ホームページが完成。拙者も一文を寄せさせていただいた。昨年7月14日に岩波ホールで行われた生涯初のコンサート『<アトムの音をつくった伝説の音響クリエイター>大野松雄〜宇宙の音を創造した男』などのリハーサルのムービーなども。本編の監督はなんと『パンドラの匣』でおなじみの冨永昌敬氏(!)。撮影は無事終わったが、音楽に造詣の深い冨永監督が、大野松雄の生涯をどのように取り上げるのか興味津々。ちょろっとだと思いますがワタシも出演しておりまする。
 ホームページはまだ立ち上がったばかりで内容の充実はこれからだが、公開に近づいたらTwitterとの連動や本編関連の追加情報も掲載される予定。映画に興味のある方は、ぜひブクマよろしく。