POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

5月15日(土)ust放送「ハンマーTV」第2回プログラマー鼎談「YMOファーストアルバム大解剖」おしらせ。


 前回(4月26日)の開局プログラムが無事終了した、ustream放送「ハンマーTV」の第2回が早々と決定した。「シンセサイザープログラマー」という職種にスポットを当てた前回は、その代表的存在だったハンマーレーベルの森達彦氏、ライバル的存在だった元ヨロシタミュージック、TOPの藤井丈司氏の対談形式でお送りしたが、今回はそこに御大、松武秀樹氏が初参戦。森氏vs.藤井氏の対戦は、ムーンライダーズYMOという80年代の大物バンドの代理戦争といった趣きだったが、松武氏はこの両バンドに関わった希有なプログラマー。松武氏が最後に参加した『カメラ=万年筆』の後を受けて、『青空百景』から森氏がムーンライダーズと関わることになったのと同様に、YMOも『テクノデリック』まで松武氏が手掛け、次作『浮気なぼくら』から藤井氏がプログラミングを受け持つこととなる。現在、松武氏が会長を務めるJSPA(日本シンセサイザープログラマー協会)も発足当時、森氏、藤井氏が主要メンバーとして関わってきた歴史があるのだ。森氏、藤井氏ともエンジニア、プロデューサーに活動域をシフトした現在、この3方が一堂に揃う機会はほとんどないと言っていいだろう。
 3氏はともに、シンセサイザープログラマーという職業が確立していく黎明期に、編曲家、ディレクターらとともに、スタジオ作業におけるサウンドづくりのイニシアティヴを担ってきた。DAWが発達した現在は、レコーディング環境もすべて1台のPCにオールインワン化され、シンセサイザーの操作も扱いやすいものとなり、打ち込みや音作りといった作業も作曲者当人が行うスタイルが主流化していった。しかしこれは、制作コスト低下などの経済事情から起こった流れ。かつて、高給舶来楽器をスタジオに持ち込み、ミュージシャンや編曲家のアイデアを受けて、見事なリアライズを手掛けていた、プログラマーが独立したスペシャリストだった80年代のサウンドは、今聴いても時代を超えた感動を呼ぶ。ビートルズの歴史だって、ジョージ・マーティンジェフ・エメリックがいなければ、あれだけ充実したものになったかどうかわからない。プログラマーが職業として確立する前夜から、その啓蒙活動を続けてきた3人のバイタリティには、今こそ学ぶべきものが多いはず。
 前回の「ハンマーTV」第1回の噂を聞きつけて、賛同いただいた松武氏のゲスト出演が急遽決定。その第1回としてお送りするのは、YMOのファーストアルバム『イエロー・マジック・オーケストラ』の3者による分析鼎談。松武氏がこのデビューアルバムのレコーディング参加したことから、その後のシンセサイザープログラマー隆盛の歴史が始まったのだ。当事者の一人だった松武氏の証言を核に、後期YMOのプログラミングを手掛けた藤井氏がそこに切り込む。歌謡曲仕事でYMOメンバーとは断片的に関わっていた森氏も、ライバル的存在だったムーンライダーズ・サイドから、同時代のYMOの変遷を捉えてきた一人。この3方が、「YMOの方法論」が確立される初期段階に残された、ファーストアルバムの魅力をプログラマー的視点から徹底検証する。「テレビ、雑誌では観れない」がustreamの最大の魅力とするなら、YMOのファーストアルバム1枚だけをネタに、3時間かけて徹底検証するという企画は「ハンマーTV」ならでは。また、YMOを巡って、松武氏、藤井氏2者が公の場でトークするのは、これがほとんど初めてとなる。
 全体は3パートで構成(予定)。第1部は、「YMOの時代」を支えたプログラマー3人による、YMOアンケートの発表。すでにいただいている回答を肴に、鼎談形式で3者のYMO観を焙り出していく。第2部は「ファーストアルバム楽曲解説」。全曲をひとつつづ聴きながら、当時の思い出話、現在だから語れる分析などを、忌憚なく語っていただく。第3部は前回も好評だった、Twitterによる視聴者の質問タイム。YMOファーストアルバムに話題を限定して、3者に聞いてみたい質問があれば、番組後半の告知のタイミングで、ハッシュタグ「#hammertv」を付けてtweetをお寄せいただきたい。過去の音楽ライターが些細な話題とスルーしてきた、ファーストに関する細かなナゾが3者によって判明するかもしれない。
 そして今回、初めての試みとして、視聴者がYMOのCDを各自持参して参加する「オリエンテーリング方式」を採用する。ustream日本語開始から1カ月経ち、コンプライアンス的な番組運営を考えなければならない岐路にいるため、前回のゲリラ放送のような音楽使用を止め、放送内容はトークのみで構成。その代わりに、画面から「ここで『東風』をプレイ♪」といったキューを出し、視聴者がドライブに入れたCDを再生して、各自PC上でマッシュアップしてテレビ番組のように楽しんでもらえたらというアイデアである。もちろんCDを持ってない人も、脳内再生したりYouTubeから引っ張ってくれば、同じように楽しめるかも。これで3時間やり通せるかは前代未聞だが、ustream放送はそれ自体が実験のようなもの。一つの挑戦として、今回初の試みを、参加者も楽しんでいただければ幸いである。
 なお、内容はヒミツだが、放送の最後に特別なプログラムを用意しているので、最後までお付き合いいただけるとうれしい。「ハンマーTV」をフォローよろしく。


第2部「ファーストアルバム楽曲解説」のイメージ図。メンバー各人はヘッドフォンで音楽を聴いているが、法令遵守のため放送内容はトークのみをお届け。ヘッドフォンに流れている内容は、画面下のスーパーから「×××を再生中」というキュー指示を出す。


PCでご覧になられる方は、下の図のようにドライブにYMOのCDを入れ、画面から出されるキューに併せて曲をPC上でマッシュアップ(ミックス)していただければ、トークとBGMが同時に楽しめるというしくみ。もちろん、根性あるリスナーは脳内再生でお付き合いいただいても無問題。


(執筆後期)


 無事なんとか放送を終えることができました。瞬間最大ページビューが1000を超えたと聞いて驚きますた。放送直後、皆様からの許可が下りましたので、早速アーカイヴ化しました(残念ながら、ラストの松武さんライヴは含まれていません)。URLはこちら>http://www.ustream.tv/channel/hammertv/ 当日、リアルタイムで観れなかった人はぜひ。当日の盛り上がりは、Twitterハッシュタグ「#hammertv」で検索してみるとわかるよ。



 ustreamは時間帯によるのか配信状態にけっこうムラがあって、いつも視聴者の皆様からのtweetのご指摘で状況を聞きながら進めている。アーカイヴで見直すと、今回もエラーが多くて申し訳ない。音声のヴォリューム、テロップ位置など、ありがたいアドヴァイスをせっかくいただきながらも、進行・影ナレ・カメラ・スイッチング・写真出しなど、一人ですべてやってるためになかなか機敏に対応できなくてごめんなさい。さすがにTwitter監視を同時にやるのは物理的に無理で、今回はサブ司会者の藤井丈司さん経由でその都度お教えいただいた。感謝。