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過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

一風堂、土屋昌巳ベスト『ESSENCE: THE BEST OF IPPU-DO』『ESSENCE: THE BEST OF MASAMI TSUCHIYA』2タイトル、2月24日リリース!

ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO

ESSENCE:THE BEST OF IPPU-DO

ESSENCE:THE BEST OF MASAMI TSUCHIYA

ESSENCE:THE BEST OF MASAMI TSUCHIYA



 またまた宣伝ですみませぬ。こちらも情報公開になったので告知を。エピック・ソニー(現・エピックレコード)創業時の主要アーティストとして、日本のニュー・ウェーヴ界でも独自の足跡を築いたバンド、一風堂と、そのリーダーだった土屋昌巳の代表作を、それぞれ1枚にコンパイルしたベスト盤『ESSENCE: THE BEST OF IPPU-DO』『ESSENCE: THE BEST OF MASAMI TSUCHIYA』が、2月24日にソニー・ミュージックダイレクトよりリリースされる。リーダーの土屋昌巳は、坂本龍一も在籍したりりィ&バイ・バイ・セッション・バンドのギタリストとしてデビュー。デヴィッド・シルヴィアン率いる英国のバンド、ジャパンのサポートとして82年のワールド・ツアーに参加するなど、国際的にも活躍した。一風堂解散後はソロ・アーティストとして、ロンドン・エアースタジオで作業した数枚のアルバムを発表し、90年代の渡英。ブランキー・ジェット・シティなど、プロデュース作品も多い。キーボードの見岳章は、後に作編曲家に転じ、おニャン子クラブとんねるずから、美空ひばり川の流れのように」などを手掛ける歌謡界の大御所に。近年は『ケイゾク』など、ドラマ、映画のサウンドトラックで良質な仕事を続けている。
 以前雑誌で取材させていただいた縁もあって、実は今回のベスト盤、企画段階からワタシも参加しており、アルバム&曲解説をまとめた土屋昌巳インタビューなど、ライナーノーツを担当させていただいた。選曲は一応、ワタシの名義になっているが、一風堂土屋昌巳ファンの心情を汲みつつ、リスナー代表として選曲担当の任を預かったというもの。一風堂のベスト盤は過去にも存在しているが、メーカー主導のそれらは、必ずしも適正な選曲だったといえない部分があり、それを正した上で、初CD化や現在入手しにくい音源を優先するなどのヴァージョン選びにも配慮した。土屋昌巳のソロ作品だけを集めたベスト・アルバムはこれが初めてになるが、企画段階から土屋氏にも参加してもらっているため、本人の思い入れの強い曲を優先するなど、アーティストの意向がそれなりに反映された上での、ワタシの責任選曲と理解していただければ幸いである。
 『ESSENCE: THE BEST OF IPPU-DO』では、基本として一風堂のシングルA面曲すべてを収録し、各アルバムの主要曲を収めている。SHAZNAがカヴァーした「すみれSemptember Love」がヒットした際に、メーカー企画として一風堂土屋昌巳のシングルを集めたベストCDがリリースされているが、シングル曲を網羅しながら音源はアルバム・ヴァージョンのほうが採用されていたため、「アイ・ニード・ユー」のシングル・ミックスは今回が初CD化。同様に「アフリカン・ナイツ」のシングルにカップリングされた、歌詞ミックス違いの「僕の心に夏の雨」もこれがCD初収録になる。いずれも、一昨年限定版でリリースされたCD BOX『MAGIC VOX 一風堂 ERA1980-1984』には未収録。「ミステリアス・ナイト」のシングルは、サイズをエディットしたヴァージョンであったため、こちらもレア度を優先して、一度CD化されたが現在は廃盤になっている、活動期にリリースされていた変則的なベスト『Lunatic Menu』に収められていたリミックスを収録。同アルバムのリミックス・ヴァージョンはBOXには一切収録されていないため、『REAL』収録の「ジャーマン・ロード」もこちらから採用した。あくまで初心者向けというベスト盤の目的を果たしつつ、BOXを持っているユーザーにも、これを買えばシングル・ヴァージョンがAB面揃ように配慮したものになっている。
 一風堂は途中からメンバー構成も変わっており、デビュー時と解散時では、別バンドのものと言ってもいいほどサウンドの印象が異なる。有名な「すみれSeptember Love」は後期の作品。視聴機対策として、ヒット・シングルが先に来るように曲を並べる考えもあったが(視聴機で聴くリスナーのために、今日では1>2>3曲目という具合に、推薦曲を冒頭に並べるという構成もあるのだ)、資料性を考えて、基本は時系列にそって並べることにした。一風堂を「すみれ」だけで認知している方なら、初期のパンキッシュな曲が次々に耳に飛び込んでくるのを、意外に思うかもしれない。アルバム曲「Panic in The City」を冒頭に持ってきたのは、アルバム『NORMAL』の鮮烈な印象を持って、デビュー時の一風堂を強く記憶している筆者の案。半年前に出ている最初のシングル「もっとリアルに」が、一種“プレ一風堂”的な歌謡ロック的サウンドだったため、こちらを後ろに回して、初期一風堂の象徴的なサウンドで幕をあける構成にした。このベスト盤の話が最初に企画されたのは、実は結成30周年にあたる昨年の春のこと。メーカー側の事情があってリリースは延期になってしまったのだが、その間に残念ながら、オリジナル・メンバーの藤井章司氏が亡くなられた。「日本のジョン・ボーナム」と土屋氏も評価する、藤井氏のパワフルなドラミングで始まる同曲で幕開けする構成には、晩年に取材させてもらった小生の、追悼の思いもある。
 『ESSENCE: THE BEST OF MASAMI TSUCHIYA』は、オリジナル・リリース時からアルバムは一度も復刻されていないため(『Rice Music』を除く)、大半が最新リマスターによるもの。BOX『MAGIC VOX 一風堂 ERA1980-1984』は、一風堂全タイトルに加えて、土屋昌巳見岳章(アキラ)おのおのの1枚目のソロだけを収めたという不思議な産物なのだが、構成上入っているべきソロ・デビュー曲「スターライト・シャワー」のシングル・ヴァージョンが抜けており、こちらを補完。他のシングル4枚のヴァージョンはアルバムと同じため、シングル曲は「東京バレエ」「さよならフォリナー」の2曲にとどめ、ポリドール時代の2枚のアルバムから1曲づつと、ジャパンのトリビュート盤に提供した「Visions Of China」のカヴァーなどを収めて、後年の活動までの視野に入れる構成にした。
 いずれも初出の曲は、土屋昌巳氏が最新リマスターを監修。作業後に、各アルバム&曲が生まれた背景、録音時のエピソードなどを土屋氏にインタビューし、対談形式でそれをライナーノーツに収めた。BOXのブックレットは年表、資料集のような体裁になっており、インタビューも些末な寄せ集めのようなものばかりで、一風堂のグループとしての総論がわかりづらい。そこで触れられていなかった主要なエピソード、アルバム解説はこちらでフォローしているので、ライナーノーツもBOXのブックレットを補完する、ファンにも満足してもらえうような内容になっていると思う。
 加えて、今回2アイテムを購入いただいた方には、応募者全員に特製のブックレットを贈呈することになった。2007年に『ストレンジ・デイズ』誌の取材のために行った、一風堂のオリジナル・メンバー、土屋昌巳見岳章藤井章司の3人が顔を揃えた「一風堂同窓会」の鼎談記事を再録。約20年ぶりに3者が一堂に介したのも、この取材のときが唯一。取材時のオリジナルのテープ起こしを元に、インタビュアーを務めた小生が、ロング・ヴァージョンとして再構成したものを収めた。亡くなったドラマーの藤井氏が一風堂について最後に語った、貴重なものになっている。入手方法などは、商品封入の告知文を参照のこと。ぜひこの機会に2タイトル併せてご購入いただければ幸いである。