POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

「Pixiv」を退会しました。

 ちょうど昨年の11月、マンガ原作の仕事ができないかと各所に相談していた折り、メディア・ジャーナリストである知人のT氏より、新しいコミック・メディアとして紹介されたのが「Pixiv」だった。ハンドルネームで登録して、自分の作品をアップし、ギャラリーによる採点やコメントなどがもらえるという「絵描き限定SNS」のようなもので、約1年これに付き合ってさまざまな面白い体験をさせていただいた。ただ、いわゆる過度な「萌えブーム」の折り、世俗の監視から逃れたここでの人気コミックというのが、かなりヲタク向けに自己完結した、ハレンチでいきすぎたものばかり。それにたじろいで「何だこれは?」とまわりに聞くと、「そりゃアンタ、コミケに大人が乗り込んでいくみたいなものじゃん」と、あまりのマンガ界の知識の疎さを諭される始末(笑)。でもまあ、それなりに発表の場として楽しませていただいていたんだが、やっぱり萌え系のいわゆる判子絵と呼ばれる絵ばかりが人気なのも疎ましく、幼女を素材にしたヌーディな投稿に「素晴らしい裸体ですね」などというコメントが溢れている状況はかなりブキミ。それで、特に技術の劣る、組織票で毎回ランキングに入っているような人気絵師に限定して、本人の痴態を鏡で照射するような皮肉っぽいマンガを投稿しはじめたところ、それまでぱったり反応がなかった小生のイラストに、多くのブクマが集まるようになった。なんにせよ、これはありがたい。かつて週刊誌編集者時代にも、小林よしのりゴーマニズム宣言』がブレイクしていくプロセスを間近でみて、「結局、なんだかんだ言って庶民はそういうものにしか目を向けない」ということを、肝に銘じていたので。そんな中で、「Pixiv」の過剰な萌え傾倒を批判的に思っている、賛同者の方が実はけっこういたということを知って驚いた。絵描きの人って大人しい人が多いようで、そういう風刺めいた投稿を見ること自体が珍しいのだという。せっかく絵が描けるんだから、例えば2ちゃんねるで活字で個人を罵倒するなんかよりも、もっとクリエティブな批評ができるんじゃないのと思ってやってたところがあるんで、逆に意外に映ったほど。
 「マンガ表現による批評」というのは、手塚治虫の初期からあるもので、文芸誌名物の投稿欄での評論家の相互批判のように、その丁々発止が部数増につながるような、エキサイティングなドラマを伴うもの。特にディベート慣れしていない日本人にとっては、ケンカも技術論が必要な世界で、個人の押し殺した感情をケンカ師が代弁してくれるような、溜飲を下げるような効果があるらしい。ワタシの「Pixiv」の批評も、一部の相手の挙動不審な行動をつっついたりして、ウケ狙いでやっていたところはあるが、批評の範疇の中で、描かれた作品に対して批評はしても、本人にはせいぜい内省を求めるぐらいのものだった。それがこのところ、「善意の第三者」と称する連中に、マンガによる批評返しならともかく、ハンドルネームではなく小生の個人名をあちらこちらにコピペして、プライバシーをばらすような行動が目立つようになった。書かれている主張を読むと、この手にありがちな被害者意識まるだしで、ワタシの投稿を封印することが“社会正義”のようにのたまっている。やれやれ。それでプライバシー暴露が許されるだなんて、なんて子供じみているんだろう。
 そういうわけで、ちょうど1年たったことだし、マンガ業界の仕事の内実もある程度見えてきたので、このたび「Pixiv」を退会してきた。今後はTwitPicで思い付いたものを投稿し、まとまったらここのブログで紹介するような流れで、なにか「絵による表現」を続けていけたらと思っている。せっかくなので、このところTwitPicのみで発表していた、「Pixiv」最後期のネタを、まとめてアップしておく。いやー、日常がマンガとアニメとゲームで完結した、子供王国の取り違えた正義感にはもうこりごり。


小生のカリカチュアのスタイルは単純で、いつも組織票でランクインしていながら、技術的には誰もが首をかしげるような不快なイラストを、そのまま無下にコピーするスタイル。以前、デッサン崩れの絵に赤ペン添削する批評を見たことがあるのだが、それだとモロ著作人格権に触れる行為になるため、それを自分の絵で置き換えたようなものと言えばよいか。これなんかも、ちょっとデッサンの歪な原作があって、それが140万分の会員を差し置いて1位になったりしているのが、日常的な「Pixiv」ワールド。元絵がないと説明しづらいな(笑)。



これも同じ。茶化した素材は、「萌え系」の世界では有名なプロのマンガ家らしい。デッサンについては素人のワタシでも、この人に技術がないことがすぐわかる。


毎回同じような萌えイラストを投稿しているのを「判子絵」と表現するそうだが、そのもっとも象徴的な人の新作を茶化したもの。オリジナルはもっと頭でっかち。



この人は、かなりハレンチな幼女イラストで有名。著者プロフィールの猫がブキミ。



「萌え系」ばかりを批評してたら、2ちゃんねるのヲチ民から「腐女子ネタも取り上げろ」というので描いてみたもの。元はポケモンのキャラクターらしい。このオリジナル絵が彼らの何を怒らせているのか、さっぱりわからない。




2ちゃんねるヲチ板にいる、特定の個人がモデルで、罵倒だらけの中で唯一、ワタシの絵が好きと誉めてくれたので、勝手にヴィジュアル化してみたもの。エアギターにひっかけてエア美というらしいが、本人が本当に性別が女なのかもよくしらん。



「萌え絵」ばかり批判していたら、その主が本業がメカデザイナーで、そっちも批評しろというので、いやいやだが挑戦してみたもの。メカ絵なんて、ロボットアニメ・マニアでもあるまいし、『タイムボカン』とかを観てチラシに模写していたころ以来じゃないの(笑)。


宮崎アニメが夜やってると、その後の投稿が宮崎ネタ一色になるというのが「Pixiv」でよく観られる光景。これは好きでたまらず描いてみた、というよりも、ランキング入りを当て込んだ計算ずくの行為らしい。昨晩も、ランク入り当選確実みたいな常連ランカーが描いていた『天空の城ラピュタ』の投稿絵があったので、それを茶化そうと描いてたら、テレビの『めちゃイケ』に長澤まさみが出ていて、可愛かったので急遽内容を変更したというもの。なんだ、そりゃ(笑)。



そんな小生の「萌え批判」マンガを観て、「萌え」の仕事の依頼がきちゃった(笑)。んで、研究がてら、「Pixiv」のR-18ページにいつも表示されているバナー広告を見て、それをソフトに模写してみたもの。