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過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

ドミニク・スウェイン主演『ロリータ』(ポニーキャニオン)

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 当ブログは日記系ではないので、拙者の日々の買い物や趣味を開陳することはしていない。本業はマスコミだが、役職は黒子なので、できあがった作品ににじみ出ている影響から、モチーフをかぎ取っていただくぐらいが光栄である。しかしながらあまりの不憫さに、エガチャンみたいに一言申したい、というときもある。小生が一時期いれあげていた女優、ドミニク・スウェインについてである。
 allcinemaONLINEのプロフィールの、この近年の主演作の怒濤の<未>マークを見よ! エイドリアン・ラインが『ロリータ』のオーディションで奇跡的に発掘した天才子役としてデビュー。毎度毎度のお騒がせなエイドリアン監督であるが、劇場未公開を巡る騒動で公開前から物議を醸した作品である。スキャンダル騒動は逆に彼女の箔付けになったと思ったほどで、次作はなんとハリウッド大作、ジョン・ウー監督『フェイス/オフ』のジョン・トラヴォルタの娘役。ところが以降、一切名前を見かけることがなくなって、それからはや幾年。ロリータをまるで地の如く演じた彼女であるからして、スカーレット・ヨハンソンもかくやというような、さぞや素行は見事な乱れっぷりかと期待してスキャンダル誌(『この映画を観ろ!』とか)を見てみてもほとんど出てこない。ビリングは年々位置が下がり、最近は定番のホラー落ち。いや、ホラーがダメってわけじゃなく、どん底からの起死回生もあるとは思うんだが、彼女はナオミ・ワッツみたいな怯え顔がハマるタイプではないからな。『レディ・キラー』なんか、共演は素行不良で有名なダリル・ハンナブラッド・レンフロだよ(笑)。悪い影響を受けてないといいが……。
 それでも劇場未公開作がDVDスルーで見れるようになったのはありがたい。だが、『ヴァージン・スーサイズ』路線で売っていた『禁断の蕾』はわざわざ買ってDVDで見たものの、脚本が今十な出来でガックシ。『アメリカン・ビューティー』でブレイク前だった、妹役のソーラ・バーチの怪演が唯一の救いである。これはおそらくエージェントが無能か、彼女に脚本を読む力がないのだろうか。そんな落胆もあって、しばらく放置してあった『インターン』のDVDを、今年の正月になにげに観てみたんだけど、悪くないんだよ、これが。カリスマ・ファッション誌『スカートマガジン』の編集部が舞台で、彼女は編集助手(インターン)の役。冒頭からレポーター役で彼女のカメラ目線で、編集部内のスタッフを一人一人紹介していく長回しが、ちょっとアルトマン『ザ・プレイヤー』の開幕部分を彷彿とさせる。そこからは至って普通ではあるが、年商何十億ドルのあちらの出版界は、産業スパイも暗躍する丁々発止の世界のようで、巻頭特集の盗作騒動を巡って彼女が探偵役で謎解きしていく、後半のミステリーの展開はなかなか悪くなかった。ダウナーで奔放なイメージの強いドミニクだけど、彼女の『働きマン』ぶりもなかなかのもの。
 一昨年、若島正の新訳で出たウラジミール・ナボコフロリータ』原作本はあのごとく盛り上がったのに、キューブリックの映画版の新訳みたいなもんだと思うエイドリアン・ライン版は、そんときも見事に話題にされませんでしたな。禁忌な内容から、キリスト教圏では未公開だったか、公開延期だったかのハンデもあって、聞いたらほとんどの人が観ていないことが判明。いいんだよ、リメイク版『ロリータ』(音楽はなにげにエンニオ・モリコーネ)。ジェレミー・アイアンズの井上順風のコメディー演技も素晴らしいし、メラニー・グリフィスの怪母演技も見物である。そこで皆様にぜひ観ていただきたく、ここにペンをとった次第。「ブスじゃん」って言われるかもだが、ええブス好きでけっこう。小生はジェレミー・アイアンズになったつもりで、ロリータの愛くるしさを堪能した。ロリータが長澤まさみにダブって見えたら、あなたも私と同じドミニク検定一級だ。



インターン』のポスターより、ドミニク・スウェインの模写。似ていないのはご愛敬。