POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

アニメ・ドラマ主題歌映像アンソロジーLD大特集

 先日、私の刑事ドラマ好きのエピソードを開陳した。オープニング映像で、各刑事のプロフィールが紹介される止め絵のシンクロに、映像の醍醐味を感じていたという話である。私のようなニュー・ウェーヴ世代というのは、思春期のMTV登場時の衝撃的な体験もあり、映像と音楽の融合といったテーマにひとかたならぬ感心を持つ者が多い。最近だと、VJ(ヴィデオ・ジョッキー)なる新職業が現れて、クラブ系のアーティストの映像サポートで活躍しているのを知っているが、私が陶酔しているのは単なるフリッカーとリズムのシンクロではなく、もっと“物語的”なものだ。クロード・ルルーシュ男と女』とか、リチャード・レスターのコメディみたいな、絵コンテできっちり演出されたシンクロ映像。ミーハーで申し訳ないが、デヴィッド・フィンチャーも大好きだし、初期の黎明期のMTV監督として一時代を気付いた、スティーヴ・バロンの監督第一作『エレクトリック・ドリーム』なんて何十回も観ているほどに入れあげている(DVDがなぜか出ないので、LDも2枚持ってる)。
 田舎に住んでいたので、雑誌以外で海外の最新トレンドを知るために、よく“水曜イレブン”(『11PM』の愛川欽也が司会の水曜日)をチェックしていたので、時代の最先端を行っていた実験映像作家については、かなり習熟していたと思う。昨年、イメージフォーラムからDVD BOXが出たズビグ・リプチンスキーなんかが、私らの世代のイコン的存在。自治体から予算をもらって、マサチューセッツ工科大学の高価なコンピュータを使って、ほとんど一発ギャグに違い映像をシコシコと何年もかけて作っているという職人の世界に、ひたすら憧れた。実際に入手するのはずいぶんたってからだが、パイオニアLDC(現・ジェネオンエンタテインメント)がレーザーディスクでビデオアート作品をたくさん出していて、それらを店で見つけると再生機もないのにシコシコ集めていた。ノーマン・マクラレン、ジョン・ウィットニー、オスカー・フィッシンガーなどのフィルム時代の名匠から、ロバート・エイブル、ジョン・サンボーンなんていう、ポスト・ナム・ジュン・パイク的なビデオアーティストの作品集が出ていて、それらを観るたびに、ほとんどYMOサウンドを聞くのと同じような“テクノロジー芸術”の陶酔感を味わっていた。今月号の『スタジオ・ボイス』誌でタイミングよくビデオアート特集をやっているが、宇川直宏氏がさかんに話題にしている「映像の魔術師」「アニメーション・アニメーション」なども同社のシリーズ。海外では教育機関向けにほそぼそとVHSで出されていた作品集を、世界初のビデオディスク・アンソロジーとしてまとめた日本だけの贅沢な企画だった。今でも映像系の専門学校などで、視聴覚室の貴重なコレクションとして大事に扱われているところも多いはず。当時のパイオニアLDCには、そうしたメセナのような売れないソフトに予算がかけられる環境があったようだ。その後、権利は消失してしまったと聞いていたものの、数年前にその路線が復活し、ノーマン・マクラレン久里洋二のDVD BOXを出してファンを狂気させた。「映像の魔術師」のラインナップのDVD復刻としては、別メーカーからだがチェールズ&レイ・イームズ(あの50'sチェアのイームズ夫妻のこと)の再編集版も出ているし、オスカー・フィッシンガーの未発表作品集も先日海外で発売されたばかり。ジャズや電子音楽などのヒップな音楽と映像のコラボレーションはけっして肩の凝らない楽しいものばかりで、興味をお持ちの方はぜひ体験してみていただきたい。そういえば以前、ジェネオンの担当者の方と電話で話す機会があって、ジョン・ホイットニーやオスカー・フィッシンガーもDVD化する予定があるかどうか聞いてみたのだが、現チームはどちらかというとイジートルンカなどのロシアやチェコの文芸アニメ寄りらしく、ビデオアート系作品にはあまり興味はないみたい。うう、悲しい。
 あと、アスミック・エースから出ているPV監督のコンピレーション「Directors Label」も類似企画として捨てがたい。おなじみのPVやCMなどの商業作品だけでなく、学生時代に撮った習作映画や出資者を募って作った個人的な短編作品も入っていて、これらがまた傑作揃い。スパイク・ジョーンズ、クリス・カニンガム、ミッシェル・ゴンドリーの3作家を紹介した第一弾は、元々初回限定のBOXがわずかしか作られていなかったために、発売日に品切れになって洋楽PVファンの間で「どこに行っても売ってない」と発狂させたエピソードもある(現在はバラで入手可能)。アントン・コービン、ステファン・セドゥナウィ、マーク・ロマネック、ジョナサン・グレイザー作品を納めた第2集は、90年代作品中心の若手で構成されているもの。唯一アントン・コービンは古株だが、ボーナストラックにパレ・シャンブルグ「HOCKEY」のPVがこっそり入っていたのには感激した(彼のデビュー作らしい)。
 で、そのへんのコレクションを開陳しようかなとも思ったのだが、ちょっと専門的過ぎてウケないかなと思い、もう一方で私が集めている、テレビアニメ、ドラマのオープニングを集めた映像コンピレーション盤をざっと紹介してみることにした。おそらく、私がMTVやビデオアートにハマった原体験には、幼少期に観た手塚治虫アニメの記憶があるからだ。虫プロの『ジャングル大帝』のオープニングの、今どきのCGのようなモーションカメラ風のダイナミックな動き。リスの大群が樹木を駆け回るシーンの、まるでディズニー・アニメのようなチマチマとしたトレース。本編は原作に比べて大して面白かった記憶はないのだが、このオープニング映像だけは所有したいとずっと思っていたので、レーザーディスクが出たときに発憤して購入したのを思い出す。
 レーザーディスク時代には、こうした主題歌を集めたコンピレーションが各社からリリースされていて、ちょっとしたブームだったと思う。しかし、その中心はアニメや特撮もので、残念ながら私の好きなドラマの主題曲を集めたようなもの(例えば刑事物、時代劇などのアンソロジーとか)は出ていた記憶がない。アニメの主題歌集が出しやすいのには理由があって、ほとんどの制作会社が楽曲の出版権を自社で保有しているからである。楽曲だけなら、日本テレビ音楽出版、フジパシフィック音楽出版など放送局系の出版社があるので、ドラマでもバップの『日本テレビドラマ主題歌集』のようなコンピレーション盤は出せるのだが、映像の権利を、東映、松竹、共同テレビなど別の著作権者が持っているために、ビデオソフト化するのは容易ではない。アニメは、映像の権利を持っている会社が楽曲の出版権も握っているので、映像と音楽をセットにしたパッケージが作りやすいのだ。
 テレビ作品の音楽の出版権については、以前、関係者からいろいろ話を聞いたことがある。例えば、ゴダイゴが主題歌を歌っている堺正章主演の『西遊記』の場合、その実質的なサウンドトラック盤であるゴダイゴMAGIC MONKEY』収録曲のうち、主題歌である「モンキー・マジック」「ガンダーラ」のみ、日本テレビ音楽出版が権利を持っている。これは局側が、番組のヒットとの相乗効果で主題歌が売れた場合に、局側にも収入が入ることを見越して、制作費を負担するするというパターンがあるからだ。だから、昔はそのへんシビアで、ドラマの主題歌がヒットしても、それが他局の作品のものならば、ライバル局の歌番組に出ることはなかったらしい。その曲がかかると番組宣伝になってしまうからというのが理由ではなく、単純に楽曲の使用料がライバル局に入るからである。しかし、このへんは『ちびまるこちゃん』のBBクイーンズや、『ウリナリ』の番組からでたポケット・ビスケッツなどがNHK紅白歌合戦に出たりして、最近はそこまでシリアスな状況ではないらしい。フジテレビの香取慎吾版の『西遊記』も、ずっと一切無視していたゴダイゴ「モンキー・マジック」(日本テレビ音楽出版)を、最後のマチャアキがカメオで登場するシーンにだけ、ちょろっとサービスでかけてたもんね。
 アニメ主題歌の場合は、局ではなく制作会社が持つことが多いため、かなり独立性が高い。東映東宝などの制作会社は、ほとんどが自前の音楽出版社を持っている。これには、手塚治虫が国産テレビアニメ第一号である『鉄腕アトム』を始めた時のスタイルが、いくばくか間接的に影響を及ぼしているといわれている。まだ「週一回放送のテレビアニメなど絶対に作れない」と言われていた時代に、手塚は『鉄腕アトム』でそれを初めて実現させた。その時、本来なら高額な制作費が必要と言われていたのに、相場の1/3と言われている1本あたり200万円を局からもらうだけで、『鉄腕アトム』制作にゴーサインを出した。その代わりに手塚は、残りの2/3を本業のマンガ家収入で得たポケットマネーを当てて、制作を続けたのである(この時、フジテレビからはもっと高額な提示があったという説もあるのだが、それをあえて断ったのは、ライバル会社がテレビアニメに参入できないようにするための牽制だったと言われている)。日本のテレビアニメの制作費が低いと言われているのは、この時の手塚がその額で引き受けてしまったからであると、批判する人が今でも多いらしい(確か、宮崎駿もインタビューでそう言っていた)。だが、実は手塚の中では、『鉄腕アトム』を海外にリセールして元を取るという腹案が最初からあったようで、半年後にNBCから『鉄腕アトム』を「ASTRO BOY」に改題してオンエアし、制作費の不足分を補って余りある収入を得ている。このように、ドラマなどに比べ制作費がかかるアニメの場合は、常に制作費の不足分を権利の二次使用などであてがうのが一般的らしい。例えば、当時アニメ主題歌の制作を一手に引き受けていた日本コロムビアの名物ディレクター、木村英俊氏の自叙伝『THEアニメ・ソングーヒットはこうして作られた』によると、アニメの制作費の不足分の補填としてもっぱら使われる収入のうち、キャラクター商品のマーチャンダイズ料に次いで、主題歌の出版収入が占める割合が大きかったんだとか。よく、アニメや特撮の主題歌の歌詞を、脚本家やプロデューサーが変名で手掛けることが多いのも、その印税を個人が受け取るのではなく、制作費に回すためといわれている。
 ま、そんな自社出版のおかげで、さまざまなスタイルの主題歌オムニバスが登場し、一時期、レーザーディスク市場を賑わせていた。中には、MTVもかくやと言う高度な編集技を聞かせたものもある。一部、DVD化されたものや、レンタルビデオでよく見つかるものもあるので、ぜひチェックしてみていただきたい。



虫プロベストセレクション』(創美企画)
虫プロベストセレクション』(Taxco)
虫プロTVアニメ主題歌大全集』(ビームエンタテインメント)
記念すべき国産テレビアニメ第一号となった『鉄腕アトム』は、原作者の手塚治虫自らが会社を興して制作。『虫プロベストセレクション』は、同社作品のオープニング、エンディングの主題歌を集めている。アトムの誕生は、そのまま国産テレビアニメの誕生と重なる感動の瞬間。本コンピでも主題歌の前に、あの有名なベートーベン「運命」を使ったアトム誕生場面が長めに織り込まれている。『ジャングル大帝』のオープニングは今観てもため息つく。プロデューサーの山本瑛一が書いた『虫プロ興亡史』というセミノンフィクションで知ったが、『ジャングル大帝』はテレビメーカーのサンヨーが提供の国産初のカラーアニメで、まだ渡航自由化以前でアフリカに関する資料がほとんどモノクロ写真しかなく、色彩考証はすべて想像だけで作られたという。よって、かなり原色主体のサイケな映像美になっている。『悟空の大冒険』のスピーディーなアクションは、ギャグの真髄って感じ。『電子音楽 in the (lost)world』にもちょっと書いたが、監督の杉井キサブローがパイロット版の音楽に諸井誠を起用した理由が、「7のバリエーション」などの前衛音楽を聴いてという話らしいから、もともとがヒップでゲバゲバなノリの作品なのだ。『リボンの騎士』は冨田勲の流麗なスコアにうっとりする。『さすらいの太陽』は筆者も夢中になった音楽業界根性もの。音楽はいずみたくで、主題歌の映像もカラオケみたいに文字がアニメで連続して流れる凝った作りに。『W3』は原作は大好きだったが、WOWOWでやってた時に観たら、最終回のあのタイムパラドックスネタが割愛されていたのには驚いた。あれって、やっぱり一般視聴者には難しすぎるってことなのかしら。本盤は全作品ではなくダイジェスト収録で(『ムーミン』などの有名作品が入ってない)、そのぶん主題歌以外に本編からの映像も一部使われており、虫プロ唯一の実写作品である『バンパイア』は、水谷豊の狼の変身シーン(ジョン・ランディス狼男アメリカン』を20年先言っている見事な映像)も併録されている。Taxco版は内容同じのジャケ違いによる再発版。『虫プロTVアニメ主題歌大全集』は、自社が権利所有する15作品のうち、当時存在が確認できたすべての主題歌のバリエーション映像を収めたというもの。『リボンの騎士』は初期のインスト版のほか、サファイヤの男時代版、女時代版両方が、『どろろ』は改題後の『どろろと百鬼丸』も入っている。ただし、現在はさらにバリエーションを追加した再編集版がDVDでリリースされている。

東映TVアニメ主題歌大全集1』『東映TVアニメ主題歌大全集2』(東映ビデオ)
各巻120というボリュームの、東映動画(現・東映アニメーション)ほか、東映系アニメ作品のオープニング、エンディングを集めたもの。『1』は63〜75年で『狼少年ケン』から『一休さん』まで、『2』は『大空魔竜ガイキング』から『わが青春のアルカディア』まで。『1』は、大川興業のネタでもおなじみ『狼少年ケン』や小林亜星作曲の『ハッスルパンチ』など、溌剌とした佳曲が多いのが嬉しくなる。『魔法使いサリー』の主題歌の最後のところで、番組ロゴの下のくるりとした弓の部分に、子供がぶら下がっている描写というのを、昔、山田邦子がコントのネタにしていたのを思い出した。『アパッチ野球軍』のオープニングの、まるでロバート・アルトマンばりのワンカメ移動には手に汗握る。『デビルマン』も回り込みとか使ってるし、けっこう当時のアニメのカメラワークって、現在のCGのセンスを先取りしていたんだな。『ドロロンえん魔くん』は番組は観てなかったけど。中山千夏の歌がかなりいい。『魔女っ子メグちゃん』の絵を描いている荒木伸吾という監督は美形モノで有名で、『あしたのジョー』とか『ベルサイユのばら』とかも手掛けていて、中学時代にクラスに熱心な女子のファンがいた。『2』の目玉は、今では観ることができない『キャンディキャンディ』。同シリーズは、ボーナストラックを追加してDVD化されているのだが、『キャンディ』などいくつかの作品が、現在は権利関係で割愛されているために、これでしか観れないものも多い。

東映TVドラマ主題歌大全集1』『東映TVドラマ主題歌大全集2』(東映ビデオ)
上記のドラマ版で、東映テレビ部の作品を集めたもの。おそらく唯一のドラマものの主題歌コンピレーションで、このほかだと、VHSで出ていた劇伴の大家、 渡辺岳夫の追悼で出た氏の作品集ぐらいしか私は知らない。『1』は59〜69年で『コロちゃんの冒険』から『花と狼』まで、『2』は70〜82年で『ゴールドアイ』から『こども傑作シリーズ』まで。『1』は私もほとんど記憶がない時代のものばかりだが、音声が消失してしまった作品も、資料価値的観点から無音のままで収録されている。増村保造『盲獣』主演の緑魔子の連ドラ『マコ!愛してるゥ』の映像が可愛くて、ピチカート・ファンとかにもウケそう。山下毅雄音楽の『一匹狼(ローン・ウルフ)』はひたすら渋い。『キーハンター』のオープニングのスブリット・スクリーンは、今観てもデ・パルマばりにカッコイイ。『2』は、天知茂『非常のライセンス』、『特捜最前線』のさまざまなヴァージョンに圧倒されるが、改めて思ったのは、私の刑事ドラマの好みって東映系じゃないんだな。小川真由美の『アイフル大作戦』『バーディ大作戦』は、映像がオシャレで実写版ルパンみたい。松田優作の『探偵物語』はなぜかオープニング「バッド・シティ」のみなのだが、その代わりに加山雄三の『探偵同盟』が入っている。これ、主題歌をヴァージンVS(「ロンリー・ローラー」)が歌ってたドラマで、フジテレビ系で局が違うのに、『探偵物語』の服部さん(成田三樹夫!)と松本さんがセミレギュラーで出てたんだよね。先日『青春の証明』『暗黒流砂』がDVDで出た森村誠一シリーズからは、『腐食の構造』『人間の証明』『野生の証明』が入っている。高木彬光シリーズの『白昼の死角』は、映画版もドラマ版も両方好き。有名な「光クラブ事件」がヒントになっているピカレスクロマンなのだが、ライヴドア騒動の際によく引き合い出され、『戦国自衛隊』みたいにリメイクされる話が『週刊新潮』に載ってたけど、あの話は続行しているのだろうか。『大激闘マッドポリス』『プロハンター』あたりになると、記憶もかなり鮮明になってくる。

東映TV特撮主題歌大全集1』(東映ビデオ)

これは子供向けの特撮番組のみをコンパイルしたもので、上記の『ドラマ』編との重複はない。59〜75年で『風小僧』から『アクマイザー3』まで。『テレビ探偵団』で常連のネタだった山城新伍白馬童子』、千葉真一『アラーの使者』などはこちらに収録されている。円谷プロウルトラマン』に替わって東映が制作した『キャプテンウルトラ』(小林稔侍!)の、冨田勲の前衛音楽と時代劇のような演出の組み合わせのキッチュさに酔いしれながら、『ジャイアントロボ』では箱形着ぐるみで重量感を演出するという、東映らしいオルタナな特撮史。『仮面ライダー』の主題歌は、藤岡弘版と藤浩一(子門真人)版の2種類を収録。『好き!すき!!魔女先生』のヒロインの女優って好きだったんだけど、当時、惨殺されたニュースを読んだ時はショックだったなあ。『キカイダー』とか『イナズマン』『がんばれロボコン』の、メカが組み込まれた番組ロゴの動きがロシア構成主義みたいでカッコイイねえ。『ロボット刑事』は、レギュラーに高品格が出ていて、子供向けとはいえ哀愁漂う渋い出来。『コンドールマン』は我が愛する鈴木邦彦作曲。シンセの使い方もかなりアヴァンギャルド

『日本アニメTV主題歌大全集1』(東映ビデオ)
自社シリーズが好調だったので、他社の作品集もということでリリースされた、日本アニメーション作品集。時代は75〜83年。ズイヨー映像『アルプスの少女ハイジ』の終了を受けて始まったカルピス劇場の『フランダースの犬』が第一作と、この中では歴史が浅い。『未来少年コナン』『あらいぐまラスカル』など、高品位な演出と作画で知られる同社だが、『ブロッカー軍団マシンブラスター』なんていう柄にもないロボットアニメなんかも作っていた。内容はかなりダサダサ。『はいからさんが通る』のオープニングのタイトルロゴの止め絵とか、このへんの芸風は『ちびまるこちゃん』あたりまで受け継がれる同社のシンボルみたいだな。極めつけは三善晃作曲『赤毛のアン』で、凄まじいアヴァンギャルドな音楽と映像。これって宮崎駿も関わってたんだよね。

エイケンTVアニメ主題歌大全集』(東映ビデオ)

鉄腕アトム』の虫プロと並んで、黎明期からテレビアニメを量産してきた同社は、拙著『電子音楽 in JAPAN』でも紹介している通り、日本で最初のCM制作会社「TCJ」の子会社「TCJ動画センター」が前身。アルファレコードとは兄弟関係にあたる、ヤナセグループのひとつ。第1作が『仙人部落』という小島功キャラクターデザインの大人のアニメで、そのへんにもモダンなセンスが伺える。『鉄人28号』『エイトマン』など、絵はシンプルだけど画面割りとかは精密で、今見ても全然ダサクないのが凄いな。『宇宙少年ソラン』というのは、『鉄腕アトム』みたいな万能ヒーローものなのだが、手塚ファンの間で有名な『W3』事件の、疑惑の作品としても有名(企画の剽窃に怒った手塚が、『W3』の連載を『少年マガジン』からライバル誌の『少年サンデー』に移してしまった有名な話)。『サスケ』『カムイ外伝』などの白土三平作品でも有名だが、ボーナストラックとして『忍者武芸帖』のパイロット版というのも入っている。『ばくはつ五郎』の牧歌的な味わいもナイス。『おんぶおばけ』の三保敬太郎の音楽って、モーグ使いまくりでかなりサイケだよね。

タツノコ傑作アニメ テーマコレクション』(Taxco)

創美企画の『虫プロベストセレクション』を復刻したTaxcoが、東映ビデオに負けじとコンパイルした、やはり著名な制作会社だったタツノコプロダクションの作品集。ただし、Taxcoのソフトは、オープニングだけ収録したものが多いので、資料として魅力に欠ける。第一作はもろアトムな『宇宙エース』。『マッハGoGoGo』は私の少年時代にクラスで断トツ人気のあったレースもので、マッハ号のプラモデルはガンプラばりにヒットした。象を飛び越えるシーンなど、カメラワークもかなりモダンで素晴らしい。ほか、『ハクション大魔王』『いなかっぺ大将』『科学忍者隊ガッチャマン』『新造人間キャシャーン』など、劇画とギャグという別線の作品が交互に登場。『タイムボカン』『ゴワッパー5ゴーダム』など、『機動戦士ガンダム』に受け継がれるメカ描写は、いまなお古びないのが凄いなあ。

『懐かし〜い TVアニメテーマコレクション』(Taxco)
かなり投げやりなタイトルだが、これは制作会社単位ではなく、ピー・プロ、第一企画、日本テレビ動画、NHKなど作品集の少ない会社のものをミックスしたもの。『黄金バット』『妖怪人間ベム』の第一企画は、当時日韓国交回復のために、いち早く韓国に外注して制作されたものとのことで、独特なエキゾティズムがある。『佐武と市捕物控』は、横溝正史シリーズみたいにローテーションで複数会社が共作していたもので、虫プロ、スタジオゼロ(藤子不二雄石ノ森章太郎らが発足)などが交代に作っていたという、過渡期らしい作品。ほか、大和和紀モンシェリCoCo』、『星の子チョビン』など、記憶の裂け目に入っていたような微妙な作品が大結集。

東京ムービーアニメ主題歌大全集 第1巻』『東京ムービーアニメ主題歌大全集 第2巻』(キョクイチ東京ムービー事業本部)
虫プロだと思われている方も多い、アトムと並ぶ黎明期の手塚アニメ『ビッグX』を制作していたこちらも老舗で、前身は人形劇の会社だったらしい。虫プロとはいろいろ因縁があったようで、虫プロ作品集には入っていない『ムーミン』がこちらには入ってたりする(確か原作者のトーベ・ヤンソンからクレームが付いて、途中から虫プロ制作に交代させられたのではなかったか?)。『パーマン』『オバケのQ太郎』などの初期の藤子アニメでも有名。だが、封印作品として有名な『オバQ』『ジャングル黒べえ』『ドラえもん』はここでも割愛されている。なぜか『新・オバケのQ太郎』だけは入っていて、モダンチョキチョキズもカヴァーしたあのファンキーな主題歌が楽しめるのはありがたい。ほか『第1巻』は、『ルパン三世』『侍ジャイアンツ』『ど根性ガエル』『エースをねらえ!』など私好みの作品が結集。『第2集』は、『はじめ人間ギャートルズ』『ガンバの冒険』『新・エースをねらえ!』『新・ルパン三世』『ベルサイユのばら』など。先日も紹介した『あしたのジョー2』のテレビゲーム風のオープニングって、やっぱりテクノ時代を意識した演出なのかな? 『鉄人28号』のリメイク版で、マライアの清水靖晃の音楽クレジットを観た時は興奮したなあ。

『ピー・プロ テーマ&変身コレクション』(創美企画)

虫プロみたいにアニメだけじゃなく、円谷プロ路線の特撮モノも並行して制作していたピー・プロは、先日別エントリーで書いた通り、『新世紀エヴァンゲリオン』の鷺巣詩朗氏の実父でマンガ家のうしおそうじが興した会社。作品数は多くはないため、このコンピレーション盤では、アニメ、特撮番組両方の主題歌のほかに、『スペクトルマン』『怪傑ライオン丸』『電人ザボーガー』などの変身シーンも巻末に収めていて、資料性が高い。アニメは『ハリスの旋風』(後に虫プロが『国松さまのお通りだい』としてリメイク)、『ちびっこ怪獣ヤダモン』など、マイナー作品が並ぶ。『ヤダモン』の音楽は宇野誠一郎氏で、オンド・マルトーノが使われているムーギーな曲に。あと、『豹マン(ヒョウマン)』『豹マンジャガーマン)』という、『ライオン丸』みたいな特撮モノが入っているのだが、こんなのやってたのかな?

サンダーバードヒストリー 栄光のITCタイトル集』(バンダイ
サンダーバード・ビデオ・リミックス』(創美企画)

こちらはイギリスのジェリー&シルビア・アンダーソン制作の人形劇、SFドラマの主題歌集で、AB面にそれぞれ、オリジナルの主題歌、日本版の主題歌を収録。『ジョー90』や上條恒彦の『スペース1999』など、私らが知っている主題歌が日本のオリジナル曲という作品もあるので、このファン泣かせな配慮がありがたい。但し、日本版オープニングは3作品が欠けるため、広川太一郎のナレーションによる名場面集が入っている。作品は『スーパーカー』『宇宙船XL5』『海底大戦争/スティングレイ』『サンダーバード』『キャプテンスカーレット』などのスーパー・マリオネーション(人形劇)時代から、後期の『プリズナーNo.6』『謎の円盤UFO』『スペース1999』というSFドラマまで。実は私、ITCにはほとんど思い入れがないのだが、バリー・グレイの大ファンで、ファンクラブのみで売られている『スーパーカー』『謎の円盤UFO』のサントラ盤を手に入れるためだけにITCのファンクラブに入ってるのだ。後者は、FABというハウスユニットが『サンダーバード』ほかのリミックスCDを出してヒットした時に、同社からでた映像リミックス盤だが、オリジナルの完成度の足下にも及ばない。