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過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

DVD『高橋幸宏ライブ 1983 ボーイズ ウィル ビー ボーイズ』『新青年』(ソニー・ミュージックダイレクト)

 本日発売になった、高橋幸宏が80年代初頭にリリースした名作ビデオのDVD復刻。内容の詳細は秘匿義務があるため今日まで引っ張ってきたのだが、結局、当日までにサンプルが届かなかったので周辺情報だけ印す。
 ご存じ、前者『高橋幸宏ライブ 1983 ボーイズ ウィル ビー ボーイズ』は83年の国内ツアーを収録したもので、高橋幸宏氏名義では初の映像ソフトになる(それ以前に、鈴木慶一氏とのザ・ビートニクス『出口主義』のPV集がある)。複数の場所で収録された映像で構成されており、渋谷公会堂公演をメインに、当時NHKでも全国放映された箱根自然公園でのRCサクセションとの対バン公演の時の映像も使われている。DVD復刻に際し、幸宏氏本人と、ツアーに同行した鈴木慶一氏、立花ハジメ氏の3人の副音声を新規収録。コメンタリーで本人らも証言しているが、本作は実質的には立花ハジメ監督作品で、「若気の至り(男の子なんだからしょうがいない)」という意味のタイトルも氏が命名渋谷公会堂の公演は、かなり寄りの画が使われているが、これはリハーサル時に撮られたものだそうで、本番で撮られた引きの画とステージ衣装やメイクが若干ズレがあったりするのがご愛敬。
 後者『新青年』は、翌84年のツアーを素材にしながら、当時幸宏氏と親交が深かったCFディレクター、川崎徹氏の監督によるコントを挟み込んだもので、クレジットも高橋幸宏+川崎徹の併記になっている。架空のヒストリーによる「高橋幸宏物語」には、細野氏、坂本氏もゲスト出演しており、2人の間が険悪だったという“自虐ギャグ”があるのが笑える(まあそれも、すでに関係が修復していたことの証しだったりする)。こちらのコメンタリーは幸宏氏と川崎氏の2人の対談構成で、コント場面のみに収録。2作とも、叩き台の進行台本は私が書かせていただいたが、こちらのほうがギリギリまでスケジュールが決まらなかったため、収録には立ち会っていない。 
 ちなみに、意外に思われたかもしれないのは、本作がソニー所有の原盤ではないこと。オリジナルリリースは2作ともにアポロン音工なのだが、同社が解散した時に、幸宏氏の事務所オフィス・インテンツィオに権利が譲渡されたため、今回はインテンツィオからの企画持ち込みで復刻が実現した。ファンの皆さんもマネジャーのS氏には感謝すること。
 オリジナルリリース時のアポロン側のプロデューサーは、元バッハ・リヴォリューションのマネジャーで、YMOとはデビューライヴの郵便貯金ホールで共演したこともある浅からぬ縁。また、エンドロールにも登場する当時の幸宏氏のマネジャー、通称“ヤエちゃん”こと金井広美嬢は、YMO「体操」のビデオクリップに登場しているブルーマー姿でおなじみ。元々は奥村靫正氏の事務所でアルバイトをしていたところ、「日本一ブルマーが似合う」ということで先のPVにスカウトされ、その後オフィス・インテンツィオに移籍してマネジャーに。独立後は“フトンアート”をコンセプトにした現代美術家としても活躍しており、某週刊誌の篠山紀信のグラビアにも登場したこともある。
 これは余談だが、当時からのファンならご存じの通り、後者には本編に収録されていない「ウォーキング・トゥ・ザ・ビート」のロスト・フッテージがある。これがソニーレーザーディスクのPRに使われていた関係で、ソニーからの復刻に際しボーナス収録も検討されたが(素材自体は私が提供)、スーパー・インポーズが頻繁に登場するため、元素材が確認できなかったことなどもあって収録は見送られた。
 一応、ファンを代表して、皆さんもよく知ってる同時期に発売された他の2作のビデオも資料として預けてあるので、売れ行きさえよければ再リリースを検討してもらえるかもしれないから、どうぞよろぴく。



(なお、本作に少し関連するコラムを書いたので、ご興味があればこちらへどうぞ)