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過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

大野松雄イベント(7月14日)の非公開音響実験映像、YouTubeで初公開!


 今回も告知ですいませぬ。以前、当ブログで紹介されていただいた、『鉄腕アトム』の音響効果で有名な音響デザーナー大野松雄氏の初のイベントのメインプログラムである、これまた生涯初のコンサートのリハーサル映像が到着。昨晩YouTubeに公式映像としてアップされたので、当ブログの読者の方に先行して紹介しておく。



 手塚治虫生誕80周年記念ということで、NHKやらニコニコ動画やらを巻き込んで今、『鉄腕アトム』ネタが盛り上がりを見せているのはご存じの通り(手塚の別作品である、ハード社会派サスペンス『MW』も劇場公開間近)。小生もまた、もうすぐ詳細が告知される予定であるフィルムスの未発表曲集の制作のために、赤城忠治氏の事務所の社長さんである子息の手塚眞氏にお会いしたりと、手塚づいている昨今でありまして。ワタシの絵を見てうっすらと手塚治虫の影響を感じ取っていただける方もおられて、嬉し恥ずかしなのだが、そういう意味で音楽の文脈からこうして手塚ファミリー作品に関わらせてもらえるのも、感慨もひとしお。ひとたび海外に目を向ければ、来年ハリウッドで『ASTRO BOY(仮題)』の公開が控えていることもあって、YouTube映像も昨晩アップしたばかりなのに、「ASTRO BOY」のタイトルで検索してきた海外からのカキコまであったりして。手塚ブランドの国際的ネームバリューの高さを知らされる思いである。
 リハーサル映像を観て改めて思ったのは、とにかく大野氏がいつもお元気で精力的であること。78歳(!)というご高齢でありながら、現在でも弟子筋のレイ・ハラカミのリミックスや、昨年の横浜ビエンナーレで公開されたタージ・マハル旅行団の記録映画『〜旅について〜』の改訂版を自ら指揮して作られるなど、現役として最前線で活動されていることに敬服する。なにしろ60年代から前衛芸術に関わってる人だから、その半生はパンク・アーティストそのもの。現在の揺れ動く政局についての辛辣な意見を述べられたりと、会う度にいつもハラハラさせられる刺激的な存在でもある(といっても、普段は至って温厚な方なのであるが)。改めて、コンサートの詳細は以下の通り。


第25回<東京の夏>音楽祭2009 日本の声・日本の音
<アトムの音をつくった伝説の音響クリエイター>
大野松雄〜宇宙の音を創造した男


■ 日時 : 7月14日(火)19:00/18:30開場
■ 会場 : 草月ホール
■ チケット : 全席自由:4000円(4月25日土曜日より予約チケット発売開始)

ーーーー 「鉄腕アトム」「惑星大戦争」から、つくばEXPOパビリオンまで、
ーーーー 音の錬金術師、待望のライヴ!
ーーーー「この世ならざる音」が舞い狂う


 「ピョコッ、ピョコッ」というアトムの足音。アニメ黎明期に、非凡なSFサウンドを生み出した希代の音響デザイナー、大野松雄は、78歳になる今日まで、「この世ならざる音」を探求し続けている。Astro Boyサウンドの生みの親として、日本のアニメーションを愛する海外のファンにも親しまれている。また、勅使河原宏松本俊夫真鍋博監督の映画や、舞踏家土方巽大野一雄のための音響も手掛け、つくばEXPO’85、アジア太平洋博覧会福岡(1989)、など大型パビリオンの空間音響システム・デザイナーとしても知られる。
 
 アトムと共に世界に発信されていった日本アニメーションサウンドの原点。アヴァンギャルドな大野サウンドが光るライヴ・エレクトロニック・ショー。音響を手掛けた代表的な映像作品も併せて上映。

 
大野松雄/プロフィール】


 電子音響デザイナー。1930年東京神田生まれ。府立六中(現・都立新宿高校)を経て、旧制富山高等学校中退。文学座、NHK東京放送効果団を経て独立。 63〜66年TVアニメ『鉄腕アトム』の音響デザイン。小杉武久がアシスタントとして参加。『宇宙戦艦ヤマト』『ドラえもん』の音響で知られる柏原満はレコーディング・ミキサーを務め、大野松雄を師と仰ぐ。
音響を手がけた映像作品に、57年勅使河原宏監督「いけばな」、59年松本俊夫監督「安保条約」、60年桜映画社/中外製薬「自然のしくみ―ノミはなぜはねる―」、64年真鍋博製作アニメ「潜水艦カシオペア」、76年暗黒舞踏土方巽出演映画「風の景色」、77年東宝映画「惑星大戦争」等多数。東京・青山の大野のスタジオは60年代から70年代にかけてアヴァンギャルド周辺芸術家が集う梁山泊となっていた。出入りしていた音楽家に、一柳慧武満徹小杉武久坂本龍一などがいる。
68年以来、滋賀県知的障害者施設で演劇活動に協力し、知的障害者と施設の記録映画を制作。つくばEXPO’85、未来の東北博覧会(1987)、アジア太平洋博覧会福岡(1989)、などパビリオンの空間音響システム・デザイナーとしても知られる。93年から01年京都芸術短期大学(現・京都造形芸術大学)講師。アルバムに「大野松雄の音響世界」3タイトル(キングレコード)ほか。09年3月、「東京国際アニメフェア2009 第5回功労賞」受賞。


【プログラム内容】


■上映 大野松雄の電子音響による短編映画傑作選
・科学映画 『血液−止血とそのしくみ』(1962年/カラー/26分) 
 監督:杉山正美、二口信一 デザイン:粟津潔 解説:川久保潔 制作:桜映画社
・アート・アニメーション『潜水艦カシオペア』(1964年/カラー/6分)
 製作:真鍋博 原作:都筑道夫
・アート・アニメーション『追跡』(1966年/カラー/3分)
 製作:真鍋博 原作:星新一
・ドキュメンタリー『土くれ―木内克の芸術―』(1972年/カラー/17分) 
 文部省芸術祭記録映画部門最優秀賞
 脚本・監督:松川八洲雄 プロデューサー・撮影:楠田浩之・喜屋武隆一郎
 音楽:木下忠司 制作:隆映社


■ライヴ 《a point》 《Yuragi ♯8》
大野松雄(ライヴ・エレクトロニクス)
由良泰人(映像)
金森祥之(音響デザイン)
遠藤正章(オペレーター)


企画協力:堀内宏公(日本伝統文化振興財団
<協力>田中雄二


公演情報HP→http://www.arion-edo.org/tsf/2009/program/m03/


【プレイガイド】


※下記のプレイガイドでもお取り扱いがございます。残席状況につきましては、個別にお問い合わせください。


・チケットぴあ/TEL0570-02-9999 (一部携帯電話と全社PHSのご利用不可)/Pコード321-006
HPアドレス→http://t.pia.jp/
・e+(イープラス)
HPアドレス→http://eplus.jp/
ローソンチケット/TEL: 0570-000-407/(全国ローソン店頭ロッピーで直接購入できます)Lコード 34971
HPアドレス→http://www2.lawsonticket.com/

 普段は関西を中心に活動されているため、東京でこうしてコンサートが見られる機会は今後あるかどうかもわからない。ぜひご興味のある方は足を運んでいただければ幸いである。
 また、大野氏のイベントを含むシリーズ「日本の声・日本の音」(アリオン音楽財団・朝日新聞社発行)のパンフレットも完成。すでに一部の朝日新聞系列のコンサートホールには配布が始まっている。キングレコード大野松雄作品集をいっしょに制作したディレクターの堀内宏公氏とともに、小生も力及ばずながら、大野松雄のヒストリーをテーマにした小論文を寄稿させていただいたので、ぜひお読みいただきたい。また同パンフレットには、別日に予定されている坂本龍一ほか監修の「日本の電子音楽」(7月11日)3プログラムの詳細を7ページにわたって紹介。小沼純一氏による録り下ろしの坂本龍一インタビュー(2ページ)も掲載されているが、教授が日本の電子音楽のお歴々について語っている発言というのはかなり珍しいもの。また、当日初公開される、『千のナイフ』に先駆けて制作された電子音楽の初期の習作「個展」についても、ほとんど初めてといっていいコメントが載っているので、坂本ファンはぜひ入手されたし。



この表紙が目印。アリオン音楽財団・朝日新聞社主催の夏の恒例シリーズ・イベント『日本の声・日本の音』の詳細について書かれた68ページの冊子、「第25回<東京の夏>音楽祭2009フェスティヴァル・マガジン」。



早稲田大学小沼純一氏による、当日のコンサート・プログラムを監修した坂本龍一インタビュー。原初的な音との出会いについて語った「正弦波について」などの回想は、最新作『out of noise』信奉者にも興味深いはず。「若々しい柴田、ポップな松平、コラージュの一柳」なんていう、音楽学者サカモトのワクワクするフレーズも飛び出す。



大野松雄デイの告知記事より。参加スタッフは、先に紹介したムービーでその勇姿が見れる。


大野松雄作品集の詳細と、小生が寄稿したページ。テレビドラマ黎明期から歴史が始まった「音響効果」の世界における、大野氏の独自性についてわかりやすくまとめてみたもの。



じゃーん!初公開。現在、小生もお手伝いで関わって制作中の大野松雄氏の生涯を扱ったドキュメンタリー『サウンドアルケミスト(仮題)』について1ページの紹介記事も掲載。監督はのわんと、青山真治フォロアーの一人として邦画界で注目される、『パビリオン山椒魚』『亀虫』でおなじみの冨永昌敬監督。佐々木敦氏のヘッズが発行している『エク・スポ』読者にはおなじみの俊英。青山真治が撮ったクリス・カトラーの傑作ドキュメンタリーを彷彿とさせる音楽通のスタッフ陣を迎えて、菊地成孔ファンあたりにも目が離せない映像作品になるだろう。詳細はいずれ、当ブログでもお伝えできればと思う。