POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

渋谷系〜「Pi●iv」〜よしもと/オタク女子の研究




 昨日のエントリで「よしもと版エヴァ」のことを書いたら、管理者画面に入って昨晩のアクセス内容を見てみたところ、「稲垣早希」を検索してここに辿り着いた、桜ファンとおぼしき閲覧者がアクセス数トップに来ていて嬉しかった。桜はまだ東京の番組にはほとんど出ておらず、モンスターエンジンが唯一評価されている『あらびき団』ですら彼女たちを起用してないほどで、ずっとネットでネタ番組のダイジェストを観るしかなかったんで、ファンと繋がれるのは単純に嬉しい。美人女性漫才コンビ「桜」は、稲垣早希増田倫子の2人組で、大阪よしもとNSCタレントコースの第一期生出身。ボケ担当の稲垣が『新世紀エヴァンゲリオン』の惣流・アスカ・ラングレーの格好をして舞台に上がり、オタクネタを開陳しては、もうひとりのノンケ役の増田に突っ込まれるというのが、彼女らの基本パターン。片方がノーマル、もう片方がアニメキャラの扮装をして2人で漫才をやるのだが、同じようなスタイルの「レイザーラモン」(初期HGのころ)や、エロ詩吟が売れてる木村と向井の「天津」、ムーディ勝山の「勝山梶」みたいに、片方の稲垣単独でも露出していて、エヴァネタでものまね番組や「R-1」に出たりしている。そのネタが、構成もよくできていてけっこう面白い。小生がアニメ雑誌の編集部にいた20年ぐらい前だと思うが、テレビ東京で月曜8時からやっていた山田邦子と羽賀健二が司会の『面白アニメランド』という番組があって、ガリガリガリクソンみたいにオタクネタを開陳するオモキモ系レギュラー素人を数多く輩出してたんだけど(『ロンドンハーツ』の鈴木ッスとか、あのヘンのはしりでしょうか)、水木一郎をスターにしたフジテレビの『うたえもん』でもいいけど、あんな感じのオタクネタに特化したバラエティ番組がプライムタイムでスタートすれば、レギュラー出演してすぐにブレイクすると思うんだけどな。オセロみたいに2人ともミスコン出身で美人だし、「美形なのにオタク」っていうのが笑える。あのしょこたんこと中川翔子が彼女の「エヴァ芸」を絶賛し、南海キャンディーズ山里亮太に「実はアニメに疎いオレのメッキが剥がされた」と言わしめたほど、稲垣早希の知識はハンパじゃない。2人でラジオに出たのを聴いたことがあるけど、アドリブの受け答えもそこそこできるんで、2人とも女性コメディアンとして将来が楽しみな存在である。
 その昔、週刊誌の編集者時代に、多少アートの心得があったもんで、イラストの持ち込みの応対担当というのを小生がやっていたことがあった。たまたまなのかも知れないが、女性のイラストレーターの持ち込みがあると、かなりの確率で美人が多いってことがあって、それを小生は不思議に思っていたのだ。世間ではどっちかといえばむしろ逆の印象があるだろう。そのころからだろうか、アートスクールや美大行ってる生徒に、お洒落で美人の子が増えているような気もする。よく「グルメやお洒落のセンスは3歳までに差が出る」と言われて、ヨーロッパの富裕層の家庭みたいに、幼少期から高価なブランドものの子供服着せられて、寿司屋で時価ネタ食わせてもらってる子供がいる話を聞いたことあるだろう。それがホントならば、キレイな顔して生まれてきた子が、鏡を見たりする日常生活を通して、美に対する感受性が人より早く発達するってことってのはあるかも知れぬ。
 これまた若かりしころに『momoco』というアイドル雑誌で、おニャン子クラブB組みたいな「モモコクラブ」というアイドル予備軍のページの構成を担当していたことがありまして。各クラスで選抜で選ばれたみたいなカワイコちゃんを束ねて、月一で企画モノをやったりしていたわけだが、10代から芸能界、マスコミという「大人の世界」に片足突っ込んでいる彼女らは、一様にどこか大人びていて、同世代の高校生の男の子がやたら子供っぽく思えるとよくこぼしていた。当時21歳でかなり屈折したギャグを飛ばしていた小生は、それだけでかなりモテててこともあったんだが、本題はそっちのほうじゃなかった……(笑)。「メッシーやアッシーがなんでもしてくれるから、美人は得だねー」とこちらが言うと、「そうでもねえっス」と彼女らは主張するのだ。毎年クラス替えがある学校の生徒だと、1カ月過ぎてクラス全員の顔がわかってくる5月ぐらいになると、きまって口も聞いたことがない同じクラスの男子から「付き合って」と告白されることが、ほぼ毎年繰り返されたりするんだそう。男ってロマンチストだから、柄にもないサムシング・スペシャルなことをこういうときに犯してしまいがちなんだけど、一世一代の「ドーテーの告白」みたいなのも、彼女らにすれば「またか」といった心境で、「ドーテーというのはどーして、どいつもこいつも判を押したように行動が同じなのか?」とステレオタイプの烙印を押されてしまうほど、恋愛に熟達していた彼女たちであった。年に一度の発情期の男の告白を、「だから5月はイヤ」という恐れている子がけっこういたわけだが、上には上がいて、あまりに告白される機会が多いので、「後腐れがないように相手をフル名人になってしまった」と語る、10代にしてベテランの女の子もいた。恐ろしや。前も書いたと思うけど、身勝手な男子生徒の思いつきで「●年×組美人コンテスト」なんてアンケートが行われて、自分の容姿が値踏みされるような残酷な体験を小学校低学年のころから強いられる女子だから、おのずと自意識が芽生えるのも、男子よりずっと早いのかもしれないね。
 最近は写真週刊誌に載ってるコミケのコスプレ写真とか見ても、アイドルばりのカワイイ子がかなりの頻度で登場してくるし、ああいう特殊な空間でいて平気なのだから(小生はまったくダメ)、それ相応の素養もあるってことなんだろう。いまさら「カワイイのにオタク」と言われたって、しょこたんだろうが稲垣だろうが、驚くのに値しないのかもしれない。村上龍だか動物生態学者が昔雑誌で言ってたけど、「なぜ男にはオタクが多いか」という問いかけに対し、もともと子供を産んで育てるという絶対的なアイデンティティを持つ女性に比べ、給料を家に収める以外に子育てに参加できない男性は、自らをアイデンティファイするために、死ぬまで働いたりオタク趣味に埋没するしかないという生態学的な分析があるらしい。女性の社会進出や「オタク化」を、少子化問題と結びつけた話のときに出てきたエピソードだったと思うけど、アイデンティティ・クライシスという言葉まで登場してすっかり定着した現在、「女性のオタク化」はより加速度的に進行してきている気がする。
 その昔、いわゆる「渋谷系」と呼ばれる音楽の流行があって、その中心のかなりに近いところに、小生が出入りしていたことがあった。そんな中で、渡辺満里奈深津絵里みたいに、ソフトロックやネオアコなど音楽に詳しいというアイドルが一目置かれて、音楽コラムやCDのライナーノーツを依頼されるなど、けっこう文化人扱いされるような現象があったのだ。しかし、このころは大抵、付き合っていたオタクな彼氏の受け売りだったりするのがほとんどのパターン。自分の知り合いの文化人、ミュージシャンでも、彼女らにレコードやCD、マイミックステープなどをプレゼントしたって人を数多く知っている。まさに「美人は得だねー」を地で行く存在だったわけだが、それがネオアコやソフトロックなんていうお洒落な記号だったから、彼女らも打算として受け入れたわけであって。稲垣の場合はアニメだから、うすっぺらなカッコつけ意識もなければ、付き合ってた男の入れ知恵ってことでもないだろうし(笑)。まあ、実はそこが「彼氏はいないだろう」とファンにたかをくくられて、オタッキーなファンに最近、桜がつきまとわれているらしい理由にもなってたりするんだろうけど。ほら、男ってのはいくつになっても、女子と違って自分の行動を客体化できない動物だから。
 昨日のエントリで少しだけ臭わせてるように、当ブログの方針をちょっと考え直したとこで、今日まで4ヶ月間毎日更新していたイラスト投稿型SNS「pi●iv」のマイページを、ついさっき開店休業状態にしてきたばかりでして。つまんない美少女アニメポーズ絵の投稿ばかりで、小生にとってなんの知的な刺激もなかった「pi●iv」だったけれど(いい歳した男が、アニメ絵を毎日アップして喜ばれて舞い上がってる構図も、先の「大人にならない男たち」というのと印象がダブって見えちゃうもんで)、ただコミケの最近の動向とか知らないので、女性ユーザーの投稿内容をつぶさに見られたというのは貴重な体験であった。むろん、特定のアニメに熱狂する“腐女子”系のネタが大半を占めてたのは、男女変わらないと思うけど、「美少女」と「憧れの格闘家」と「カッコいいロボ」で大半が占められていた男性ユーザーの投稿よりは、小生が異性だってこともあって、いろいろ発見させてもらうに十分なバラエティ感があった。ギリシャ神話の登場人物みたいな筋骨隆々とした男性の姿態を10代の女の子が描いていたり、『ハチミツとクローバー』の主人公の花本はぐみみたいな、眠れる獅子の才能を感じさせるものもあったし。タッチも、アニメ風、マンガ風、写実系など、ほどよいバランスに見えるのに対し、なんか男の投稿は美少女アニメ絵ばっかりでなあ。更新されたばかりのランキングってのも観てきたけど、本人がちょっと気を利かせたつもりのネタが「ギター持たせるアニメ美少女」って、こればっかり(笑)。ギター持たせればキャラクターの文化的な格が上がるとでも本気で思ってるんだろうか。美少女に不釣り合いな高額なヴィンテージのレスポールを持たせたりしてるのって、『プレーヤーマガジン』『THE楽器』じゃなくて、マンガの『BECK』あたりを孫引きしてるんだろうし。ほかにも、いかにも資料で買ってきました的な『CanCam』最新号のモードを、そのまま着せた頭のでかいアニメ美少女とか……。キャラクターにストーリーを背負わしたりすれば、すぐにでも整合性のおかしさに気付く脆弱なキャラクター設定も、飽きもせず似たようなアニメ1枚絵ばかりを書き続けている、「物語」と無縁な彼らは、永遠に気付くこともないのかもしれないね。
 昨日リンクを貼った「よしもと版エヴァ」のパロディも、企画はおそらく桜の「エヴァ漫才」のネタから連想した部分があったと思うんだけど、舞台裏で「大人の事情」があったとおぼしく、稲垣早希が扮装するアスカのシーンはほんの1カットしか写ってなかった(知名度でアスカを振られた黒沢も、ドイツワイマール期のキャバレーダンサー風だったり、何なのかわからん……笑)。んで、念のためにアスカの格好でネタをしている動画があったので、今回はこっちを貼っておく。



 で、こっち(↓)は2人でやってる「エヴァ漫才」の動画。構成もしっかりしてるし面白いと思うんだけど、収録されてる会場が関西だからなのか、客が乗り切れてないのが残念。つか、付和雷同な日本人って、同じ内容やっても有名人じゃないってだけで冷たいからなー。マニアが味方に付いてくれるかもって期待したところで、会場で率先して爆笑を誘導するよな勇気も甲斐性ないからな、マニアってヘタレだから。しかし、一般ウケとかポピュラリティってことを考えていくと、ここのブログが抱えている問題と同じで。どうすればよいのか困ってしまう、根の深い問題なんだよな。