POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

坂本龍一コンサートパンフ『Tour 2005』

 昨年、フルバンド公演としては久々となった坂本龍一氏のソロコンサートパンフ。このうち、後半のディスコグラフィーの全原稿を書かせていただいた。「ソロ」「映画音楽」「YMOを含むグループ作品」と3つのカテゴリーに分け、年代順に並べられた作品すべてに解説文を載せている。以前、ワーナーミュージックから『US』『UF』『CM-TV』の3枚のベスト盤が出たときにも、選曲や資料提供などでスタッフとして関わっており、非売品のパンフレット(『よいこの歌謡曲』の後身である、高橋かしこ氏率いるファッシネーションが編集)の制作のために教授の全資料を通読したことはあったものの、全作品をマラソンよろしくぶっ通しで聴いたのはこの時が初めて。坂本龍一全作品解説といえば、昔『月刊カドカワ』で浅田彰氏が書いた素晴らしい内容のものがあり、プレッシャーもあったが、発注から入稿まで時間がほとんどなかったので気の迷う余裕もなく、これが逆に刺激にもなって、楽しみながら仕事できた。映画『星になった少年』のサントラ盤はギリギリで完成したもので、カンパケたばかりのホカホカのディスクをバイク便で届けてもらい、音資料を聴いてその数分後に入稿するという、アクロバットな状況で執筆したもの。ちなみに、突貫作業だったために厳密な文字校正をやっておらず、仕上がったものは一部原稿が間違って掲載されている。お持ちの方もおられると思うので、抜けている『A Day in New york』の原稿を、以下に載せておこう。


Morelenbaum2/Sakamoto
"A Day in New york"
(Warner Music Japan, Sony Classical,Universal Music)

2作目のスタジオ録音。ジョビンの追加曲や『Casa』収録曲の再演に加え、カエターノ・ヴェローゾほかブラジルの作曲家の作品や、自らのソロ「Tango」などを取り上げている。ツアー終盤から録音を開始。ライヴの熱気をそのままに、ルイス・ブラジル、マルセロ・コスタらが参加し、前作よりリズミックに。

 ちなみに、私へのパンフ原稿の依頼は、教授のマネジャーであるS氏から推薦いただいたもの。編集は、20年来の知人である『コンポジット』発行人、菅付雅信氏が務めている。菅付氏は『月刊カドカワ』に教授や浅田彰を初めて起用し、ロッキング・オン編集部に移って『CUT』を創刊した編集者。赤田祐一氏(飛鳥新社)、宅八郎氏(おたく評論家)と菅付氏を併せた3人は、その昔メディアで“新新人類”と呼ばれていた、伝説の人でもある。20年前の『TECHII』編集部時代に、『月刊カドカワ』にいた菅付氏に取材したのが初対面で、私が在籍していたシナジー幾何学からその後『コンポジット』が創刊されたり、入れ違いに編集部入りした『宝島』では先輩にあたるなど、なにかとご縁があったが、意外にもこれが初めての菅付氏との仕事になった。