POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

『大人の科学マガジン×KORG DS-10 PLUS Limited Edition』(AQインタラクティブ)



 今回も宣伝で失礼しまする。
 国産アナログ・シンセサイザーの名機「コルグMS-10」6台分をゲーム機のニンテンドーDSのハード上で再現した、昨年7月にamazon限定で発売されたヴァーチャル・シンセサイザー・ソフト「KORG DS-10」。このブログの読者諸兄ならば、その存在は当然ご存じか。スペックが向上した最新モデルDSiの仕様に合わせた、その上位版としてこの度、9月18日に発売になったのが『KORG DS-10 PLUS』。6トラック仕様だった「DS-10」2台分の12トラックの同時演奏が可能になり、プレイ・モードでのトラック・ミュート機能を新搭載するなど、本格的なシーケンサー用途に耐えうる仕様に生まれ変わった。これと同時発売でもうひとつ、学研の付録付きムック『大人の科学』とのコラボ企画と銘打って、編集部制作のカラー冊子と特典デモ曲のデータを同梱したのが、限定版『大人の科学マガジン×KORG DS-10 PLUS Limited Edition』。こちらは、YMOライディーン」のデモ・ヴァージョンが収められていることもあって、amazonなどでは予約段階から単体版を超える勢いで売れているらしい。昨年『大人の科学』の別冊『シンセサイザー・クロニクル』にも参加した小生は今回も続投。この限定版のブックレットの約半分、40ページ強の編集を担当させていただいた。
 小生が編集している前半パートは、DS-10をこよなく愛するプロのミュージシャンの代表としてスチャダラパーBOSE氏、拙著『電子音楽 in JAPAN』でもその偉業を紹介している、オリジナル機「MS-10」の生みの親コルグの三枝文夫氏、「ライディーン」誕生の舞台裏などについてプログラマー松武秀樹氏が語る、開発者対談などを収録。また「DS-10」シリーズの生みの親であり、かつてYMOのパロディグループ“OMY”のメンバーだった佐野電磁氏、シンセサイザー部の音作りを手掛けたコルグ開発部の俊英、金森与明氏といった、舞台裏の仕掛け人が語る完成までのサイド・ストーリーの取材も、実に面白くタメになるものであった。ちょっと『電子音楽 in JAPAN』の続きのパートみたいな感じで文章をまとめてみたので、拙者の読者の方はぜひお読みいただければ幸いである。実際、まったく普段からゲームというものをやらない小生ゆえ、最初はまごつきながら始めた仕事ではあったが、ゲーム・エンターテインメントの真髄に触れて、改めて感心することばかりであった。
 また、ニコニコ動画などのオーディション環境が整備され、いわゆる従来の専用楽器とは異なるユーザー・ネットワークを形成しているのが「DS-10」の特徴。取材のため、数人のヘヴィ・ユーザーのお宅にお邪魔したのだけれど、同人音楽とか自主レーベルの世界って、思ってた以上に時代の先を行ってるんだよね。5000円を切るという「DS-10」シリーズの価格設定もすごいけれど、やはりその低価格が実現させたライトユーザーの取り込み、次のアクションを喚起させるといった市場の広がりに、従来の電子楽器にはないダイナミズムを感じてしまった。
 コルグシンセサイザーMS-20の実機を持っていたので、ゲームが苦手なワタシでも、「KORG DS-10 PLUS」は触ってすぐに使えるようになったというほど、構成はいたってシンプル。こんなちっさい筐体にMS-20(実際は2VCO仕様なので)が 12台分と、12トラックのシーケンサーが入ってるというのは、やっぱり凄いと思う。DSシリーズのハードウエアのスペックの関係で、シンセサイザー部はハードの完全なエミュレーションではないオリジナルな仕様で、アナログの音作りの醍醐味を再現しつつ、デジタルはデジタルのいいところを残している印象。収録されているデモ曲やプリセットで聴ける、Perfumeあたりに通じるフロア向けのベースライン、TR-909のキックのようなサウンドは、実機のMSシリーズではどうやってもできない音だろうから、これで楽器デビューという遅咲き組にとっては、実にかゆいところに手が届く感じ。まだ商品は小生の手元に来てないけれど、これを機にニンテンドーDSのハードを買って、ゲームデビューを果たしちゃおうかしらん。
 前回はamazon限定販売だったが、今回からamazonのみならず、一般のショップでも販売開始。『大人の科学』と異なって、一般書店ではなく、譜面などを扱う音楽書書店、楽器店の店頭で取扱中。お店にデモ機があったら、ぜひ触って体験してみてほしい。



 AQインタラクティブが配信している「KORG DS-10 PLUS」のプロモーション映像より。ほか『大人の科学マガジン×KORG DS-10 PLUS Limited Edition』では、コルグ金森氏の指導を受けて、「DS-10」をヴォーカロイドのようにしゃべらせるノウハウも紹介。『大人の科学』公式ページには、その実演映像がアップされている(スタイラスペンを操作しているのが小生)。