POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

『ユリイカ』8月号「特集・菅野よう子」(青土社)

 今回も宣伝で失礼しまする。
 「初音ミク」「臨時増刊号・坂本龍一」に続き、昨日発売された『ユリイカ』(青土社)8月号「菅野よう子」に12ページほどの長い論文「菅野よう子とその時代。」を書かせていただいた。おそらく執筆陣の中で小生は、彼女のメインの仕事として認知されているアニメーション作品を見ていない唯一の書き手。しかしながら、元々アニメーションの世界に「異分野の才能」として登場した彼女。CM音楽や映像、ゲーム音楽でクライアント相手に曲を量産していた「若書きの時代」について、これまでの雑誌の菅野よう子特集ではほとんど読んだことがなかったため、そういう舞台裏の世界を少しは知っている自分なりに、書ける主題があればと引き受けた。菅野よう子と小生はほぼ同い年。アニメ雑誌周縁の世界でうろついていた自身の青春期のことなどを回想しながら、菅野よう子本人や作品を紐解くのではなく、80〜90年代の時代背景を書き込むことで、菅野よう子の特異性/普遍性について浮き彫りにしてみたというもの。本稿でも触れているが、企画立ち上げの早い時期に依頼を一度受けたものの、彼女のアルバムをきちんと聴いてこなかったことが理由で辞退申し上げたのだが、おそらく『ミュージック・マガジン』『コンティニュー』といった先行特集誌が、サウンドトラック側の視点中心に語られていたことが理由となったか、「他視点からの分析」というテーマで、再度アプローチいただいた。締め切り4日前のギリギリのタイミングではあったが、実はそれなりに語る準備もあったりして、結果、依頼を受けたときの2.5倍近くの文量のものになってしまった……(かたじけない)。
 日頃から「女性編曲家好き」を自任している小生。菅野よう子自身については、ルックスが好みだったこともあり、以前からとても気になる存在であった(ワタシには「女性の才能に惚れる」という、ちょっと特殊な性癖がある)。映画のサウンドトラックよりも、『CMようこ』『CMようこ2』で聞けるバラエティ感溢れる仕事ぶりに、以前から敬服していたのだ。「耳が抜群にいい」「器用なタイプ」の彼女のようなミュージシャンは、往々にして「引用」だの何だのという議論を呼び込みやすいものだが、CM音楽作家にとっては、例えば洋楽サウンドのアナライズといった才能は必須なもの。いくらお手本を聞き込んでスコア解析したところで、「洋楽っぽさ」のようなフィーリングを体現できるかどうかは、その人の天賦の才能というところがある(悲しいかな、ダサイ奴は何をやってもダサイいのだ)。青年期にスタジオ取材で、「まるで洋楽のようなサウンド」「洋楽に宿るマジック」を日本にいながらにして体得していた、数少ない優秀なミュージシャンの仕事ぶりを見てきた小生は、例えば「引用」といった方法論一つとっても、スマートにそれを作品化することが実は単純で容易なものではないことを知っている。CM音楽業界、ゲーム音楽を含むライブラリー音楽などの「特殊な世界」で培われた順応性こそが、菅野よう子の作家性を分析するときの鍵となる。そういった視点からの菅野よう子分析は、ある意味で本道だと思うところがあり、彼女が歩んできたジャンルの特殊性を語ることが、菅野作品の評価についてまわる、一面的に書かれがちな「引用論争」に、再考のきっかけを与えることになればよいのだが……。無論、中には「これはちょっと」と思う曲もあったりするが、そのへんは黒澤明早坂文雄の時代から語られていることで、「映像音楽」というジャンルにおいては、むしろ責任は監督にあると言うべきだろうしね。
 先行して発売されていた『ミュージック・マガジン』『コンティニュー』などの特集誌が、7月7日に行われたイベント「超時空七夕ソニック」の告知を目的としたものだったため、「イベントをご覧アレ」ということで内容はぼやかされ、過去の総括がメイン記事となっていたが、ここに収録されているインタビューは、その舞台裏を詳細に綴ったもの。イベントはDVD化される予定がないため、伝説のライヴを克明に記録したいという書き手の情熱ほとばしる、なかなか読み応えがあるものになっている。また、これは余談だが、小生以外に書き手として本誌に参加している、アニメ評論家・藤津亮太氏は実は週刊誌時代の職場の元同僚。インタビューに答えている一人、佐藤大氏とは、週刊誌時代に連載を担当していた関係があったりする。あのころは彼はまだライターで、毎週締め切り間際までヒヤヒヤさせられたもんだが、脚本家として偉くなったと聞いて、隔世の感がありますな。
 ここんところ、濃密な音楽特集を快調に飛ばしているのが心強い『ユリイカ』でありますが、幾人かのギャラリーが指摘しているとおり、『ミュージック・マガジン』とのニアミスが多いのが、読者の一人として興味深い。ところで、最新号のPerfumeの楽曲分析も立ち読みしたけれど、『マガジン』関連書物でPerfumeポリリズム」について触れるとき、決まって「典型的なポリリズムを使用した曲」と書かれるのはなぜだろう。この特集でも冒頭記事を書かれているライターの宗像氏にも昨年電話で話したことがあるのだが、「典型的なポリリズム」というのはライヒキャプテン・ビーフハートのような複合拍子のことじゃないの? リサイクルキャンペーンのタイアップが最初にあって、ポリエステル、ポリエチレンなどの合成樹脂などのイメージから引用された「Poly」と「Rythme」を掛け合わせた言葉遊びで、本来のポリリズムではないと思うのだが。『マガジン』関連の雑誌だけ、そういう記述が繰り返されていたので、ちょっと気になって書いてみた。あと、「ポリループ」なんて音楽用語ないでしょ?


ストレンジデイズ 2009年 09月号 [雑誌]

ストレンジデイズ 2009年 09月号 [雑誌]

 こちらは先週発売された『ストレンジ・デイズ』9月号。この雑誌でも「ZTT特集」のパート3で、アルバムおよびアーティスト解説をたくさん書きますた。


(追記)


 そういえばスペシャルな余談があった。元々マンガネタを発表していたお絵かきSNS「Pi●iv」も、アカウントを一応まだ残してあって、当ブログでマンガを更新するときだけ並行して、継続的にネタをアップしていたのだが、先日、のわんと現役アイドルからマイピクの申請をいただいたのだ(mixiにおけるマイミクみたいなもの)。本人もブログにリンク貼ってたから、やってるのはファンには周知のことらしいので書いても怒られないと思うが、モーニング娘。の事務所、アップ・フロント・エージェンシーの兄弟会社、ハーモニープロダクションに所属している松嶋初音ちゃん。小生が彼女の似顔絵を描いていたのを見てくれたみたい。
 これまたなんという偶然か、その翌日の話。あんなに「Twitter」のことボロクソに書いているくせに、まあ「言うわ易し」といいますもので、一通り体験してから書くべしを肝に銘じている身分ゆえ、実はこっそり「Twitter」アカウントを取ってニュース収集などで一部利用していた小生なのだが、こちらでも先日、Sweet Vacationちゃん(?)にフォローしていただいた。好きだからうれすい。アイドル雑誌『momoco』時代に、momocoクラブ担当していたときのトキメキを思い出す(笑)。つか、投稿0なので申し訳なすぎて、なんか書かねばならぬ強迫観念に駆られている……。
 とまれ、そういう方々に見られていたというのを、このところ立て続けに知ることとなり、改めて顔から火が出る思いである。あんまり不用意なこと書いてちゃダメですな。


今日の猫動画。アホすぎて腹が痛い……。