POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

EUROX『MEGATREND』23年ぶりのリマスタ復刻版リリース!(3月5日発売→3月20日に変更/ブリッジ)

メガトレンド+2

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 長かった……。最初に復刻の話が持ち上がったのは去年の春だから、半年以上の時間が過ぎてやっと実現にこぎ着けた。昨年お手伝いしたTAO『FAR EAST』に続き、その後継バンドであるEUROXの唯一のアルバム『MEGATREND』が今春復刻される。アナログのオリジナルLP盤を紙ジャケで再現。内容は1曲多いCDエディションを採用し、デビュー・シングル2曲をボーナストラックに追加。今回も拙者がライナーノーツを担当し、1万字の解説文を寄せさせていただいた。
 『銀河漂流バイファム』というSFアニメの主題歌だった「Hello, Vifam」で有名なTAOは、82年デビュー組の珍しいプログレ・バンド。同曲は「アニメ界初の英詞主題歌」ということで話題を呼び、30万枚を売るヒットとなった。『機動戦士ガンダム』に継ぐ人気アニメとして本編も支持されており、今でもカラオケナンバーとして愛唱されているという。ワーナーのカタログの復刻仕事を預かったとき、真っ先にリスト出しして願いが叶ったTAO復刻だったが、過去のテクノ系復刻以上の多大な反響をいただき、個人的に実りある仕事となった。そのTAOが、結成一年後に音楽的理由で2つに分裂。作曲家兼ヴォーカリストがTAOの屋号を持ってレーベルを移籍することになり、ワーナーに残ったメンバー、スタッフが、ゼロから再出発をはかったのが、このEUROXというグループである。まるでピーター・ゲイブリエルが脱退した後の、ジェネシスの再始動のようではあるまいか。
 活動後期、カルチャー・クラブのフロントアクトとして全国ホールツアーも果たしていたTAOにとって、グループ分裂はこれから海外進出というタイミングに起こった事件。EUROXというネーミングは、「その夢よ再び」という一堂の願いを込めたものと思われる(エディ・ジョプソンのUKをもじったものと思われ)。実際、その願いは届けられ、デビュー・シングルはヨーロッパで12インチとして発売。詳しくはライナーノーツで触れているが、TAO時代に渡航修行を過ごしていたこともあった、アメリカからもリリースの誘いがあったというほど。
 結果、ヴォーカリストを失ったことで夢破れて終わることになるが、新メンバーを入れて再始動。その矢先に、ワーナーの筆頭アーティストであった中森明菜のアルバム『不思議』から参加要請を受け、うち7曲にコ・プロデュースで参加することとなる。『MEGATREND』はその完成直後にレコーディングされた唯一のアルバム。アナログ/CDの転換期にリリースされた作品ということもあり、プレス枚数も少なく、CDについては中古市場で5桁の高値で取引されていたというもの。23年ぶりの最新リマスタを施した音は、初CD化のTAO『FAR EAST』と同じくファットなサウンドに生まれ変わっており、オリジナルCDをお持ちの方も買い直して損はない充実した内容になっている。
 EUROX時代の最大のヒットとなったのは、『機動戦士ガンダム』と同じサンライズ制作のアニメ『機甲界ガリアン』の主題歌だったシングル「ガリアン・ワールド」、「星の1秒」。こちらも後にOVAが作られたというほどカルト的人気がある作品で、EUROXの主題歌を収録したサウンドトラック盤が昨年ディスクユニオンで復刻され、2枚ともオリコンチャート50位内にランクイン。ネット通販の大手HMVの年間アニメアルバム部門では、『けいおん!』などの現役アニメに並んで売上9位を記録したほどの人気ぶりなのだ。このヒットには、初CD化だったTAO『FAR EAST』ですら後塵を拝しているほど(笑)。新ヴォーカル、根本博を迎えたEUROXは、ディレクター氏をして「最強のラインナップ」と言える存在であった。2枚のシングルを出して第一期EUROXは終了するが、今回は根本時代のデビュー曲である、初CD化となる「COLD LINE」、「OUT OF CONTROL」をボーナストラックに追加収録。これがまたUKニューウェーヴを思わせるブリリアントな2曲で、このためにCD買ってもよいとオススメしたい良曲に仕上がっている。
 TAO時代はファンを自任していた拙者も、アルバム・リリース未遂に終わった根本加入時のEUROX時代については不勉強で、今回改めて関係者などを訪ねて事実関係を調査。わかった謎の解明を全部まとめたら、1万字近くのボリュームになってしまった(笑)。おかけで肉眼では読めないライナーノーツになってしまったが、こういうフリーキーな再発もインディーの強み。どうかみなさま、コピーかスキャンして拡大してお読みくだされ。