POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

新しい来訪者の方々へ。「POP2*5」とは何か?

 現在、「POP2*5」のタイトルで暫定的に更新しているこのブログ。検索エンジン経由でこのブログに辿り着き、最近になって定期購読し始めたという方もおられてありがたいばかり。ところが、トップを見れば謎のコミックが並び、アーカイブを辿ると文字ばっかりという不可解な構成。それで、決まっていただく質問として「ここはコラムなのかマンガなのか?」という問い合わせが頻繁にあるので、一応の説明を書いておく。
 元々ここは、小生が発行人を務めていた週刊誌増刊号のパブリシティのために立ち上げた、「POP2*0」というブログが前身。これは、出版不況で宣伝費ゼロという中で、新創刊誌のプロモーションのために何か手だてはないかと一計を案じていたところ、知人のジャーナリスト津田大介氏の薦めで、編集長のプライベートブログとして始めたのが発端である。わずかあった宣伝費も、当時流行っていた検索エンジンのアド・サービスのほうにほとんど持って行かれ(大半が代理店のマージンに化け、焼け石に水状態)、策尽きた中でゼロからスタートしたものだった。なにしろ小生は、今のTwitterブームを冷ややかに見ているように、当時のブログブームというのを本当にうさんくさく思っていたので、「ぜったいヤダ」「なんで売文家がタダ原稿を書かなければならないのか?」などとブーブー文句言っていたのを、津田氏に諭される形で始めている。
 「POP2*0」というタイトルは、その新創刊誌のカルチャーページのタイトルの流用。ウェブデザイナーにデザインを発注する予算もなかったので、津田氏の薦めで「はてなダイアリー」の汎用ブログ・エンジンで始めることになった。いざ始めるとなったら、拗ねていてもしょうがない。頭を切り換えて、とにかく雑誌のPRになるようなことがあれば、思い付いたことを片っ端からコラム化していた(なにしろその新創刊誌も、特集記事からマンガ原作まで、かなりの部分が小生自身が書いたものだったのだ)。検索エンジンに引っかかるように、当初は意図的に「極楽とんぼ」だの「初音ミク」だのの人気ネタを選んだエントリを書いていたところ、当時出ていた『ユリイカ』の別冊「オタク対サブカル」の特集号を読んで思った所感をまとめた、「渋谷系」にまつわる小生の青春記に反応があり、以降はウケを狙って、コラムテーマが個人に傾いていく。もともと自分を表に出すことは好きではない性分だが、毒をくらわば皿までも。ちまたの自己愛ブログに負けじと、自分のプライバシーまであけすけに語るものへと転じていった。まずここで、「自己嫌悪型人間の自己アピール」という倒錯が生まれている。ええ、Twitterとかでよく批判されている、「サブカル人種はめんどくさい」というヤツですな。いやホント、皺一本もないアナタのピンクの脳みそが羨ましい。たまに長文傾向を「自己愛の所産」と捉える人もいて口アングリだが、それなりに情報を盛り込んだ長文を書くのはプロとしての矜持のつもりで、いわゆる自分の買い物自慢みたいなナルシーなものはほとんど書いてないのが、この手の業界人ブログとしては珍しいと思う。「タダで文章書くなんて……」と言っていたワタシであったが、やがて「こんな文章がネットでタダで読めるなんて」という奇跡のほうが、より生産的だと考えを改めるようになっていく。だって、商業誌で署名原稿書いてる人だって、ほとんど自分の好きなこと書けているわけじゃない。せっかく誌面の字数制限も編集者の干渉もない、ブログというメディアを手に入れたのに、自分の買い物自慢に終始しちゃってるのなんてツマンナイじゃん。
 元々文章を書くのはまったく苦手ではなく、なにしろ出してる著書は全部分厚いというほどの長文書きなので、書き始めると文字制限のある本業の反動でか、どんどん長くなる。Perfumeネタをやり始めたらヴィヴィッドな反応が来るようになって、面白くなってその種のエントリを毎日連発していった。気がつけば新創刊誌のほうは失敗に終わり、すでに存在価値がなくなってしまったこのブログ。以降は、ほとんど惰性とストレス解消の捌け口として続けていたにすぎない。だが、これを見た『ユリイカ』などの評論誌から、やがて原稿依頼をいただくことになるわけだから、この時期の努力も無駄ではなかったのだろう。
 わりと短い時間内で長文を書くのは私の得意技だが、これは週刊誌時代に毎週かなりの文量を書いてトレーニングしていたことに由来している。テーマさえあれば、手元の材料だけで書くのも慣れたもの。いつしか、ブログブームを牽引していたような方々がみな、Twitterなどの新しいオモチャに飛び移ってブログの更新を辞めてしまい、「いまどきブログなんてやってんの?」と冷ややかな反応を受けるようになっても、反骨精神で続けていたという次第だ。しかし、そのころからTumblrというネットサービスが登場。人様のブログの文章を「フェアユース」だのなんだのの借り物の理屈で、バンバンコピペして自分のページに貼り付け、自らのTumblrのページビュー稼ぎに使われるようになったことに頭に来て、「断筆宣言」をして更新をストップ。と言いつつも、ほとんどブログ更新作業が日常業務化していたので、もったいないと思い、当時始めていた自主制作のイベント、予算のない知人のニューリリースの告知などのために、必要なときだけ更新するという形で暫定的に続けていた。これが「POP2*0」の後期にあたる。
 実はそのころ、副業として目を付けていた「漫画原作の仕事をしたい」という思惑を果たすべく、裏でちょろちょろ動いており、紆余曲折があった末、編集者の薦めで「原作者は狭き門なので、自分で絵も描きなはれ」といわれてマンガを描き始めていた。「文章ならコピペされるのヤだけれど、マンガなら別にいいや」と、こうして「POP2*0」の最後期ごろから汚い手書き線画をスキャンしてアップし始め、ウエイトが文章とマンガ半々ぐらいになっていく。なにしろ、普段の小生を知ってる人なら、ワタシがマンガに疎いのは周知のこと。今でも普段マンガはほとんど読まない。「原作者になりたい」と言っても、高校生のころに『少年ビッグコミック』に投稿したマンガまがいの話が佳作入選して以来、マンガなんて描いたこともない。ところがコピーライター修行時代に絵コンテが得意で、けっこう入賞したりもしていたので、それなりに頭に思ったことが描けることに自ら驚いて、40の手習いで本格的に初めて、今日に至るという具合である。ちなみに、このときにも前出の津田大介氏に「そういうこと始めるのに、なんか手段ないのかな?」と相談にいって、発表と修行の場として、当時まだブレイク前夜だった、コミックSNS「Pi●iv」を勧められている。今でも一応アカウントを残してあり、ヒマなときに更新したりして、同じネタをこっちにもアップしているが、とにかくあっちはアニメファンの同好会的な傾向が濃厚。こりゃたまらないと、別のコミックSNSを試してみたりはしたんだが、とにかく「Pi●iv」とかに巣くっているランカーという輩が、信者を引き連れて振興SNSにも手を広げていくもんだから、どこのコミックSNSもランキングの上位に来てるのは、「またお前かよ」というような見慣れた萌え絵ばかり。それですっかり呆れてしまい、結局、当時暫定的に続けていた「POP2*0」のURLをそのまま引き継ぎ、タイトルだけ「POP2*5」と変えて、こちらを主たる発表の場として、コミックブログとしてリニューアルしたというのが顛末である。
 「なぜお前がマンガなのか?」という、このブログを続けていく上での究極的な疑問については、出版界の未来を考えた上での、かなりの苦渋の選択がある。雑誌の使命は広告バブルとともに終わり、書籍も売れ線の実用本しか作れない。それでも続けていくことに出版業の未来はあるのか? そんな中で、利益を生み出しているのはコンテンツ・ホルダー。著書を出している珍しい編集者だけれども、それらは企画主導の「文章はオマケ」みたいなもの。そんな「もっとも作家から遠い男」の作家修業が、このブログ「POP2*5」を続けている唯一の理由である。



ごく初期の「POP2*5」より再放送。半年前なのに、今とはほとんど画風が違ってるのに呆れる……。