POP2*5

過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

DVD『ロックドリルの世界 地底世界の超機械巨神』(ジェネオン・ユニバーサル)

 前身の「POP2*0」時代のエントリで、小生が20数年前、創刊したばかりだった角川書店アニメ雑誌ニュータイプ』から編集者としてのキャリアをスタートさせた話を書いた。その後すぐに音楽業界に身を投じてしまうため、アニメ界との縁はわずか1年ではあったが、今こうして絵にまつわる表現を復活させていることを思えば、あの1年で培ったものは大きかったのかも知れない。その時期に仲良くさせてもらった知人の一人に、現在、邦画界を引っ張っている同い年の映画監督、樋口真嗣氏(『ローレライ』『日本沈没』『隠し砦の三悪人』ほか)がいる。実はなんと数ヶ月前、彼と約20年ぶりに再会する機会があったのだ。たまたまワタシが監修を務めたTPO『TPO1』のCDを店頭で手に取り、クレジットに名前があったことに気付いて、このブログを辿ってコンタクトを取ってきてくれたのだ。ワタシもワタシで、この20年の活躍ぶりを陰ながら応援してきた立場なので、この旧交の復活を喜んだ。それ以上に驚いたのが、樋口氏がかなりディープなTPOのファンだったということ。すでにメンバーの安西史孝氏のブログで公表されているので、書いても許されると思うので書くが(すいません)、当時樋口氏が制作に参加していたガイナックスの第一作劇場映画『王立宇宙軍 オネアミスの翼』も、最初は天野正道氏らTPOのメンバーに音楽を依頼する計画だったというから驚き。で、久々の樋口氏からのメールで、TPO復活へのエールとともに、「ぜひ安西さんとお仕事をしたい」というオファーをいただいて、その後、新宿某所で安西史孝氏と引き合わせ。そこで「ぜひ安西さんに音楽を担当してほしい」と持ちかけられた樋口氏プロデュースの新作が、ついに完成の運びとなり、こうしてここで紹介できることとなったのだ。
 タイトルは『ロックドリルの世界 地底世界の超機械巨神』というDVD作品。樋口氏が制作総指揮を務め、NHK『テレ遊びパフォー!』内で公開された、みうらじゅん原作の特撮モノ『長髪大怪獣ゲハラ』でデビューした新鋭、田口清隆氏が監督を務めている。最近、ムックまで発売されて話題を呼んでいる工業用重機「ドリルジャンボ」のプロモーション映像として企画されたものなのだが、そのフォルムはまるでジェリー・アンダーソンの『サンダーバード』の世界。DVDはこの実在するメカニックを、特撮編集のイディオムとサウンドの様式美で映像化した、異色のムービーとして完成した。音楽はもちろん、元TPOのメンバーで『うる星やつら』の音楽でおなじみ、安西史孝氏。拙著『電子音楽 in JAPAN』のロングインタビューや、昨年出た学研の『大人の科学別冊 シンセサイザー・クロニクル』でも仕事をさせてもらった間柄だが、実はワタシも大好きなバリー・グレイ(というかジェリー・アンダーソン)のファンとしても大大大先輩。なにしろ好きが高じて、日本人でありながら、ジェリー・アンダーソン作品『FireStorm』の音楽を実際に担当しちゃったというんだから天晴れ。実は今回の音楽は、搬入スケジュールの関係で安西氏の既存のライブラリからの選曲となったのだが、一部、サントラも一切発売されていない『FireStorm』からの流用曲もあったりするという本格志向。まだ本編を観てるわけじゃないが、このスタッフの充実ぶりには、いやがおうにも期待値が上がってしまう。
 初回発売の3000セットのみ、イラストレータ開田裕治が挿画を担当したプラモデル箱仕様の外部ケースつき。話題のロボットアニメ『天元突破グレンラガン』の池田成志氏がナレーションを務め、お仲間である『天元突破グレンラガン』の監督、今石洋之氏や安西氏を交えた副音声対談も収録されている。テレビ版『日本沈没』や映画『太陽を盗んだ男』など、副音声職人としても見事な解説ぶりを発揮してきた樋口氏の、今回のトークも楽しみである。
 リリースは1カ月以上先とちょいと間が開いているが、こういうDVDオリジナル商品というのは限定品が多いため、発売日にお店に行っても売り切れなんてことも多い。このスタッフの力のいれ具合を見て、内容にピンと来た人は、ぜひ予約してお求めいただけるとありがたい。

PVが完成したそうなので、YouTubeにアップされたオフィシャル映像を紹介しておく。


 今回はせっかくなのでTPO関連のムービーを。『TPO1』のライナーでメンバーがネタをあかしている、『小山田圭吾の中目黒ラジオ』のエンディング・テーマとして使われているTPOの人気曲「sundog」の元ネタでもある、ムード音楽の古典的名曲「Holiday For Strings」(デヴィッド・ローズ作曲)のオリジナル・ヴァージョン。



 デヴィッド・ローズ楽団のCDは今けっこう入手しづらいのだが、どの曲も美麗でたまりません。いちばん演奏がよいのはステレオ版のリメイクのなんだけど、これのCDってなぜかブラジルのCD-Rサービスからしか出てないんだよね。実はワタシはこの曲を先にスパイク・ジョーンズ&シティ・スリッカーズのほうで聴いて知っていた。こちらはまさにTPOの元祖というか「人力サンプリング」技を披露していてなかなか聴かせます!