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過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

『「テクノ歌謡」ディスクガイド』(扶桑社)&11月30日ロフトプラスワン「テクノ歌謡復活祭」続報だど




 来る11月30日、以前から当ブログで告知していた『「テクノ歌謡」ディスクガイド』(扶桑社/1890円)が遂に発売される。カラー多めの200ページ余りのボリュームで、昭和〜平成の歌謡界を彩った名盤400枚以上をジャケット写真、作詞作曲クレジット、レコード番号、発売日などの詳細なデータ付きで紹介。『モーニング娘。バイブル』(宝島社)、『アニソンマガジン』(洋泉社)の編集で知られるプロダクション、ユービックのメンバーが、ハロプロPerfumeを経過した現代の視点から、今年で30周年を迎える「テクノ歌謡」の膨大なカタログを紹介している。まずはこのちまちました文字量を見よ(笑)。




 ま、私も人のことは言えた義理ではないほど量を書く方ではあるが、現在30歳前後という、当時を知らない若手スタッフが国会図書館などで詳細に調べ上げてこの本を作った、その労力には頭が下がる。すでに一部ネット書店で紹介されている先行情報と、若干予定が変更して高価になってしまったのが申し訳ないが、原油高の影響で紙代が10〜15%も値上がりしてしまった昨今ゆえ、どうかご理解いただけるとありがたい。小生の知人である、元『ビックリハウス』編集者で扶桑社では先輩にあたる故・小出裕一氏が編纂した同様のコンセプトのディスクガイドが10年前に刊行されているが、先達に負けてなるものかと、カラー増量、紹介枚数倍以上、価格もそれ以下に抑えて、なんとか発売にこぎ付けた。以下、主な内容を記載しておく。


『「テクノ歌謡」ディスクガイド』
ユービック「テクノ歌謡」研究チーム
(扶桑社刊/11月30日全国発売/1890円)


<主な内容>

テクノ歌謡」宣言
INTERVIEW 近田春夫×掟ポルシェ PART1 〜Perfume編〜
Perfumeパーフェクト・ディスコグラフィ

第1部
chapter 1 テクノ歌謡PART1 イエローマジック歌謡曲
chapter 2 ニュー・ミュージック/フォークのテクノ化
chapter 3 ロックバンド×テクノポップ
chapter 4 ルーツ・オブ・テクノ歌謡
COLUMN 電子音楽をポップスに変えた革命児。冨田勲こそ「テクノ歌謡」のルーツ

第2部
chapter 5 テクノ歌謡PART2 テクノマジック歌謡曲
COLUMN Perfume的ロボット声の誕生譚。「初音ミク」を網羅する合成人声史
chapter 6 アニメ/特撮/ゲーム音楽のテクノ化
chapter 7 コマーシャル・ソングmeetsテクノ
chapter 8 ラップ/ヒップホップ/ハウス歌謡
chapter 9 テクノ歌謡<子供番組部門>
COLUMN 進化、増殖続ける「みんなのうた」。「コンピューターおばあちゃん」祭り
chapter 10 テクノ歌謡<お笑い・文化人部門>
chapter 11 演歌/懐メロのテクノ歌謡
INTERVIEW 鈴木慶一

第3部
chapter 12 レイト80s〜90sのポストテクノ歌謡
COLUMN テクノ歌謡の泡沫的進化?80年代を賑わせた“ハイエナジー歌謡”の世界
COLUMN テクノ歌謡→J-POPを繋ぐ巨人、小室哲哉の影響が00年代を形成した
COLUMN 「テクノ歌謡」を支えたレコーディング変遷史
INTERVIEW 小西康陽
COLUMN 時代を超えて次世代がカヴァーする「ジェニーはご機嫌ななめ」の魅力
INTERVIEW つんく♂
COLUMN モー娘。&関連ユニットに見られる、ハロプロ楽曲のテクノ歌謡度の高さ
chapter 13 プレPerfume/ポストPerfume〜00年代のテクノ歌謡
COLUMN Perfumeに続け。平成テクノ歌謡の注目すべき新グループを紹介
COLUMN 増殖する中田ヤスタカプロデュース。テクノ歌謡の新地平を切り開く才能
COLUMN 中田を輩出した“渋谷系の遺産”、フューチャーポップのポップな実験性
COLUMN 動画共有サービスを創作の場とするアマチュアテクノ歌謡作家に注目せよ
COLUMN アキバ発アングラ文化から生まれた、テクノ歌謡の亜変種「電波ソング
COLUMN 歌謡曲なき今、テクノ歌謡の精神を受け継ぐ<アニソン/ゲーム音楽
COLUMN テクノ歌謡アレンジャー紳士録

INTERVIEW 近田春夫×掟ポルシェ PART2 〜テクノ歌謡編〜
総論 速水健朗テクノ歌謡の未来は?」
テクノ歌謡アルティメット・コレクション』CDシリーズ告知

 ディスクガイドは無論のこと、スタッフががんばったのはそのほかのコラム、インタビューなどの読み物ページ。どこの出版物よりもくわしいと自負する、全編カラー構成によるPerfumeコンプリート・ディスクガイドに始まり、近田春夫×掟ポルシェロマンポルシェ。)氏の2人がとことんPerfumeを語り尽くした長編対談もかなり読み応えあり。80年代「テクノ歌謡」のクリエイター側の代表として、インタビューページにはムーンライダーズ鈴木慶一氏が登場。アグネス・チャンのバッキング時代、お蔵入りになった江利チエミ「ウスクダラ」(後に『イスタンブール・マンボ』でセルフ・カヴァー)のレコーディング秘話などのエピソードが語られ、元々アグネスのツアーのために結成されたムーンライダーズの歴史が、そのまま「テクノ歌謡」変遷史に重なって見える貴重なクロニクルとなった。
 いわゆる80年代現役リスナーではなく、後追い組がスタッフの中心となって作られたことのプラスの作用もあり、彼らの青春期に当たる80年代末〜90年代初頭の、宍戸留美細川ふみえ中谷美紀などの「ポスト・テクノ歌謡」の一群をきちんと考察しているのが本著の特徴。『ミュージック・マガジン』などの音楽プロパー誌では見過ごされがちな、アニソン、ゲーソン、電波系、初音ミク、ポストPerufume、同人音楽系など、全方位に及ぶ「テクノ歌謡」の今日における波及効果をリポートしている各コラムは、自分のようなロートルにはありがたい。この「ポスト・テクノ歌謡」時代のインタビュー枠には、元ピチカード・ファイヴの小西康陽氏、モーニング娘。の生みの親、つんく♂氏の2人が登場している。松浦亜弥「ね〜え?」のアレンジがなぜ小西氏に依頼されたのか、はたまたプッチモニ。に託された「テクノ歌謡」的な裏テーマのことなど、ほとんど聞くのが初めてのコメントも満載。ぜひ、書店で見かけた際には、手にとってやっていただけると嬉しく思う。
 ちなみに、書籍に先駆けて11月26日には、ソニー・ミュージックダイレクトから同コンセプトのコンピレーション盤『テクノ歌謡アルティメット・コレクション1』も発売される。すでに一部のネット販売店で情報公開されているが、当ブログでも改めて、選曲情報を載せておく。


テクノ歌謡アルティメット・コレクション1』
ソニー・ミュージックダイレクト/11月26日発売/2520円)
テクノ歌謡 アルティメット・コレクション1

テクノ歌謡 アルティメット・コレクション1

<収録曲>
1. 宇宙人ワナワナ / アパッチ
2. 憧れのラジオ・ガール/ 南佳孝
3. ROBOT / 榊原郁恵
4. ジェニーはご機嫌ななめ / ジューシィ・フルーツ
5. 浮かびのピーチガール / シーナ&ザ・ロケット
6. ラスト・プリテンダー / ピンク・レディー
7. 咲坂と桃内のごきげんいかが1・2・3/ SNAKEMAN SHOW
8. 恋はルンルン / 伊藤つかさ
9. ハイスクールララバイ / イモ欽トリオ
10. コンピューターおばあちゃん / 酒井司優子
11. 赤道小町ドキッ / 山下久美子
12. ねらわれた少女 / 真鍋ちえみ
13. わがままな片思い / 松田聖子
14. 鏡の中の十月 / 小池玉緒
15. 禁区 / 中森明菜
16. 玉姫様 / 戸川純
17. 風の谷のナウシカ / 安田成美
18. くちびるヌード / 高見知佳
19. HOSHIMARU音頭 / TPO
20. コンビニ天国 / 宍戸留美

 見ていただいてわかる通り、『テクノ歌謡ディスクガイド』との連動企画で、共通するカバー&ジャケットは、写真:常盤響、アート・ディレクション江森丈晃、モデル:天野莉絵というクレジット。コンスタンスタワーズ、スペース・ポンチの常盤氏、元シトラスのメンバーで現在はデザイナーとしても活躍中の江森氏という、音楽に造詣の深い2人がコラボしたユニークなジャケットが完成した。モデルの天野莉絵ちゃんも新進気鋭のグラビア・アイドルで、この奇妙なコンセプトにご理解いただき、今後も同シリーズのミューズとしてパッケージを飾っていただく予定である。

 そして最後に、毎度毎度の告知で恐縮だが、『「テクノ歌謡」ディスクガイド』の発売日と同日、11月30日に新宿ロフトプラスワンで、CDシリーズ&書籍発売記念イベント「テクノ歌謡復活祭」が開催される。イベント内容はまだ鋭意調整中であるが、一足先に当日来客特典として配布する予定の「テクノ歌謡復活祭のしおり」が完成したので、一応イメージ図を載せておく。

 パネラー3人(+小生)に、『「テクノ歌謡」ディスクガイド』執筆陣が寄稿しており、小生が質問内容を作成した「テクノ国勢調査」に各々が答えた、人それぞれで異なる「テクノ歌謡」観の違いを浮き彫りにした貴重な資料になった。基本的に当ブログでは意識的に避けてきた、私の「テクノ歌謡」へのプライベートな思いもちょろっと書いてみたので、ぜひご興味のある方はこの機会に入手されたし。

 「テクノポップ30周年」のアニバーサリー年でありながら、あまりパッとした話題のなかった2008年。その締めくくりに相応しい、貴重な最後のお祭りの一夜になると思うので、近隣の方々は11月30日の新宿ロフトプラスワンに足を運んでいただきたい。当日は、扶桑社およびソニー、ブリッジなど、参加メーカーの現物販売もある予定なので、もしふらっと遊びにきて内容が気に入ったら、これらをまとめて購入するよい機会になるだろう。あなたを「テクノ歌謡」の無間地獄にお誘いしますぞよ。


テクノ歌謡」30周年アニバーサリーイベント

イモ欽トリオPerfumeテクノ歌謡復活祭」


1978年に結成されたYMOも今年で30周年。ということは、「テクノ歌謡」30周年でもある。
80年代初頭、沢田研二TOKIO」、イモ欽トリオハイスクールララバイ」のミリオンヒットで幕を開け、派手なコスチューム、未来的なシンセサウンドで80年代を煌びやかに飾った名曲たち。
最初はノベルティだった「テクノ歌謡」も、松田聖子というスターを輩出するほど後世に影響を与えた。
松田聖子をリスペクトする中川翔子、「平成のスターボー」と呼ばれるPerfumeがともに大ブレイク!
初の武道館、紅白出場(か?)と賑やかな話題のPerfumeに便乗して送る「テクノ歌謡復活イベント」。

(上のイラストは新宿ロフトプラスワンのステージのイメージ。中央に大型のプロジェクターがあって、その下の桟敷で我々がトークするという趣向)


【場所】
ロフトプラスワン
新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2
TEL 03-3205-6864


【日程】
2008年11月30日(日曜日)
OPEN18:30/START19:30
前売¥2000/当日¥2300(ともに飲食別)
チケットはロフトプラスワンhttp://www.loft-prj.co.jp/PLUSONE/)店頭にて発売中!


【パネラー】
常盤響(フォトグラファー)
安田理央(アダルト系ライター)
津田大介(ジャーナリスト)
【司会】
田中雄二(扶桑社)……『テクノ歌謡ディスクガイド』担当編集