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過去にはてなダイヤリーで連載してた連載コラムのアーカイヴです。

『イエロー・マジック・オーケストラ』(アスペクト)について

イエロー・マジック・オーケストラ(第2版)

イエロー・マジック・オーケストラ(第2版)


 昨年1月に発売された、拙者が執筆参加したYMOのロング・インタビュー集『イエロー・マジック・オーケストラ』(アスペクト)が、メンバーの正式な許諾を得る前に刊行されたことものであることがわかった。本日、1月13日付の読売新聞全国版に謝罪広告が掲載され、同内容が発行元アスペクトのホームページでも告知されている。事実がわかったのは、昨年の発売日直前。メンバー3人の所属事務所、オリジナル本『OMOYDE』の制作元であるソニー・ミュージックダイレクト、原稿を依頼された小生らは、なぜそうなったのかという事情説明を受けることとなり、正式な契約が交わされるまで増刷はなしという判断に。その後、版元と事務所間で話し合いがついて、この度、乱丁、誤植などを修正した「あるべきかたち」として、正式に事務所から許諾を得たヴァージョンが今月16日に刊行されることとなった。発売日に市場に出てしまった初版第一刷はすでに回収が間に合わなかったため、これのみ売り切りの形となり、正式なヴァージョンが刊行できるまで1年を要したために、入手困難な状況がしばらく続いてしまったことを残念に思う。
 オリジナル本『OMOYDE』にはなかった、キーワード解説などの新原稿を依頼された私が、実際に原稿を入稿したのが2004年12月。翌春に発売される予定との説明を受けて作業したものだが、なぜそれが2007年1月まで発売日が延期になったかについては、拙ブログにも書いているとおり発売日まで一切の説明がなかった。版元の不名誉になることは書けない立場ゆえ、その経緯については私からの発言は控えたい。ただ、それ以前にもプレスリリースが、誤って小生の著者名で配信されるという失態があり、ファンから説明を求められても事情がわからない私は混乱するばかりで、そのときは正式に抗議してネットなどの情報をすべて訂正してもらっている。一時、HMVの商品紹介ページに掲載されていた私の署名記事も、雑誌『奇想天外』用に書いたものを無許可で掲載したもの。これも削除してほしいと申請したので、現在はすでにないはずである。
 版元のホームページで正式な告知もないまま発売日が何度も延期したため、読者の混乱を沈静化する意味もあって、発売前から拙ブログで何度か話題に取り上げていた。そのために、あたかも私が編集に関わっているように思われたかもしれないが、本書においては一記録者にすぎない。カバーデザインが変更になったのも、私は後から知ったぐらいだ。多忙な時期だったため2つのエントリをすでに書き上げて準備していた私は、発売直前にその事実を知って、断腸の思いでそれらの原稿をボツにしている。また、amazonなどのユーザーレビューで「誤植が多い」と指摘されているのは、私が指示した赤字入れの修正作業などが一切初版本に反映されていないため。すでに初版本を購入された方も、正式なヴァージョンへの交換を版元で受け付けているので、アスペクトのホームページで確認してみてほしい。
 今回、正式なヴァージョンとして世に出るまでに3年の月日が経ってしまったことには、正直複雑な気分がある。だが、本書の内容がいまでも色褪せるものではないことは、記録係の私にも自信を持って言える。昨年のHASYMOの活発な活動期に、大手CDショップなどのYMOコーナーに、他社のYMO関連本が積み上がっていながら本書だけがないことを悲しく思っていたが、結成30周年のアニバーサリー・イヤーの年初になんとか間に合ったのは有り難い。
 メンバー3人との対面時間がそれぞれ10時間に及ぶ、唯一のロング・インタビュー集。いわゆる音楽専門ライターではない拙者が関われたということで、文化論的な考察にも耐えうる本になっていると思う。YMOファン向けのディープな質問もありながら、80年代という時代を背景にした一ロック・グループの結成から解散までの“普遍のドラマ”としても読めるようになっていると思うので、YMOに興味がない方でも手にとってやっていただけると嬉しく思う。